高齢者住宅を情報収集する者は、なぜ製品判断力が低いのか?
空き家の存在は、その数の多少にもよりますが、何かしらの負の影響(外部不経済)を地域に与える可能性が高いと言えます。特に管理不全の空き家が多くなり、衛生面、治安面、景観面などの問題が多発すれば、転出者が増加して転入者が減少するという事態も予想されます。
そうなると、その地域の住宅需要は減退して地価下落を招き、その結果、自治体に税収減をもたらし行政サービスが低下することもあり得る話です。また、老朽化した家屋の破損や飛散などが原因で、通行人や隣地などに損害を与えれば賠償責任に発展することも考えられます。
このような状況に至らなくとも空き家を所有していれば、その維持管理コストは発生します。ざっと挙げれば、①公租公課(固定資産税や都市計画税)は空き家であっても納税義務は免れません。また②定期的(あるいは時々)に自宅の点検や換気、修繕などをするには電気や水道が必要です。よって解約することができず、少なくとも基本料金は毎月発生します。
他にも、③万一の損害発生に備えるための火災保険料、④空き家になれば建物は傷みやすくなるため修繕の費用、⑤建物管理を業者に委託すれば管理委託料、⑥今の居住地と離れた場所に空き家があれば移動のための交通費なども必要になります。
どのくらいの費用負担額になるのでしょうか。もちろん住んでいる地域や物件、修繕や管理をどこまでするかにより負担金額は異なってきます。
例えば、土地面積200㎡、固定資産税評価額が土地2,000万円、建物500万円のケースでは、公租公課はざっと15万円前後になります。それに電気代と水道代の基本料金約4万円(条件により異なります)を加えると、年間20万円前後は①と②だけで必要となります。更に火災保険に加入すれば、空き家は入居中の建物に比べ割高なため、年間6万円くらい負担しなければならないこともあります。
④から⑥はケースバイケースです。特に専門業者に管理を委託する場合は、業者や業務内容によって差はかなり大きくなるので、慎重に見極めなければなりません。そして忘れがちなのが建物解体費です。空き家の状態で持ち続けても、多くの場合いつか解体が必要になります。床面積が120㎡くらいだと少なくとも200万円程度は新たに必要になります。
言うまでもなく、空き家でも所有者には土地と建物の管理責任があります。所有する空き家が空き家対策特別措置法の「特定空き家」の指定を受けるとか、建物を解体して更地になると固定資産税の住宅用地の特例が解除され、最大で固定資産税が6倍、都市計画税は3倍に増税になります。そして時間の経過とともに建物の劣化は確実に進行して維持管理費は嵩んできます。
損失を金額に置き換えることで、空き家リスクを実感しやすくなります。それが「住まいの終活」への一歩にも繋がると言えるでしょう。