住まいの終活、いつから始めればいいの?
今回紹介するのは、三井不動産から現在はオラガHSC株式会社代表取締役としてホテルや不動産のアドバイザリーのほか、市場調査や講演活動を展開している、牧野知弘さんが書いたこちらの書籍です。
「空き家問題―1000万戸の衝撃」祥伝社(2014年)
今後20年の間に多くの方が直面する空き家問題。この問題は深刻になりこそすれ、解決への道が容易ならざるものと言えます。不動産は資産、財産の礎と古来ずっと考えられてきましたが、その法則がどうも日本では揺らいできています。そして今こそ、この問題の解決に知恵を絞るべきだと考え、執筆されたのが本書です。
本書は以下の5章から構成されています。
第1章増加し続ける日本の空き家
第2章空き家がもたらす社会問題
第3章日本の不動産の構造変革
第4章空き家問題解決への処方箋
第5章日本の骨組みを変える
第1章では、空き家の現状を分析しつつ、その背景にはもっと深刻な「日本国の実情」が隠されており、今後この空き家問題は日本の構造的な問題に深く関連し、私たちの生活にも一定の影響を及ぼしていくものと指摘しています。同時に不動産に対する価値観にも大きな影響を及ぼす可能性にも言及しています。
第2章では、空き家問題を今後多くの日本人に共通に起こる「社会問題」として考え、この結果として引き起こされる不動産の価値に対する考え方の劇的な変革について論じています。財政難に陥る自治体やコンパクトシティ構想など、治安や防災、景観だけの問題ではないことを指摘しています。みんなが一斉に不動産を手放す「不動産パニック」が生じるリスクにまで言及しています。
第3章では、戸建住宅ばかりに目が行きがちな空き家問題のなかで、建替えができない築古マンション、オフィスビルにも触れています。そして急速に価値観が変化し、今まで通りに価値を維持発展できる不動産がある一方で、まったく役に立たなくなる」不動産が多数を占めるという事態の到来を予測しています。
第4章では、今後どういったアプローチを行うことで問題解決への糸口が見つかっていくのか、つぎのような方法を提案しています。
・市街地再開発手法の応用
・減築という考え方
第5章では、空き家問題は空き家から空き自治体へ、そして自治体が消滅していく構造にあり、手をこまねいている暇はないと強い危機感を抱いています。日本の危機に対して、国土の再編、都市計画の常識の大転換、「廃県置州」の必要性、そして私権への挑戦と、日本の骨組みを変える必要性を強く訴えています。
空き家問題をミクロの視点から始まり、日本の構造問題といったマクロの視点で原因と処方箋を考察しています。広い視点から空き家問題が捉えている書です。一度、手に取って下さい。