書籍紹介シリーズ②「どうする親の家 空き家問題」
令和3年6月7日、賃貸住宅入居者の死後残置物を円滑に処理する方法が国土交通省から公表されました。これにより高齢者が民間賃貸住宅へ入居するハードルが低くなる可能性が出てきました。
それによると、単身高齢者の居住の安定確保を図る為、賃借人の死亡後に契約関係および居室内に残された家財(残置物)を円滑に処理できるように、契約解除と残置物処理に関するモデル契約条項のひな型が示されました。いわゆる死後事務委任契約と呼ばれるものです。原則として、賃借人は60歳以上の単身高齢者、受任者には賃借人の推定相続人が想定されており、それが困難な場合は居住支援法人や管理会社等の第三者が考えられます。
賃借人が死亡すれば、賃借権と居室内の残置物の所有権は相続人に承継されます。そのため相続人の不在や所在が不明の場合には、賃貸借契約の解除や残置物処理が困難になることがあります。そのため特に単身高齢者への賃貸が躊躇される問題がこれまで生じてきました。「平成30年度家賃債務保証業者の登録制度等に関する実態報告書((公社)日本賃貸住宅管理協会)」にある住宅確保要配慮者に対する入居制限の状況をみると、60歳以上の単身高齢者に対して10.9%、高齢者夫婦のみ世帯では11.4%の管理会社が入居制限をしていました。その理由には、家賃の支払い不安が24%、居室内の死亡等への不安が19%あり、まさに死亡事故に伴う契約解除や残置物の処理が懸念材料になっていました。
昨今の家族関係からは推定相続人がいないとか、協力が得られないケースは十分想定されます。その際、鍵となるのが居住支援法人です。今回の死後事務委任契約を可能とする契約書に関する情報は、当然ながら関係機関にしっかりと周知・共有する必要があります。使えるツールを積極的に活用しながら、高齢者向け住宅の確保と提供につなげなければなりません。
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