住まいの終活と認知症
自ら高齢者住宅の情報収集をする時や、関連する調査をするたびに、情報提供サイドにもう少しマーケットインの意識が欲しいと感じることがあります。以前のコラムでも書いたように、利用料金やサービス内容などが複雑なうえに、情報収集する者の多くは高齢者住宅の利用経験がありません。いわゆる経験財と呼ばれるものです。そのため過去に購入や利用経験のある財やサービスと異なり、高齢者住宅に対する予備知識や判断基準が十分でありません。例えば、認知症ケアの良し悪しなどを事前に確認することは簡単ではありません。
改めて、高齢者住宅に纏わる情報を以下に整理しました。
①基本情報
交通アクセス、生活利便施設、住宅環境、行政サービス(特に医療や福祉)、契約内容、入居時及び入居後の費用負担など
②住宅の仕様や性能に関する情報
部屋の広さ、間取り、部屋数、設備仕様、セキュリティー、バリアフリーなど
③コミュニティに関する情報
近隣地域や住宅内のコミュニティ活動、防犯・安全性など
④提供サービスに関する情報
医療、介護、食事、入浴、事故対応、移り住み、その他生活支援サービスなど
⑤運営に関する情報
運営会社の経営状態、スタッフのホスピタリティなど
以前、筆者は高齢者住宅への入居を検討している高齢者や家族に対し、情報収集する上での課題をヒアリングしたことがあります。そこでは次のことが分かりました。
自分自身にカスタマイズされた情報へのニーズが強いことが確認できました。ところが自治体の窓口で得られる情報は個別性や具体性に欠け、一方でネット情報は大量かつ標準化されているため、カスタマイズされた情報が得にくく、同時に情報過多に陥りやすい傾向があります。
それでは、情報提供サイドはどのような点に注意すれば良いでしょうか。
最も重要なことは、「情報を求めている者は何に関心があるか」というマーケットインの発想を持つことです。何に困っているか、何を解決したいか、何を知りたいか、をしっかりと考えることです。つまり情報収集者や入居を検討している者の立場に立つことです。そして情報提供の方法も工夫が求められます。高齢者住宅の解説本などを見ると、その多くは類型ごとに構成されており、まさにプロダクトアウトの切り口に見えます。課題を類型化しその一つ一つに回答する構成になっている書籍がありますが、その方が難解な内容もスムーズに読めて理解が進んだという思いがあります。高齢者住宅の情報提供のあり方を検討する時に参考になるかもしれません。
以上