自宅の将来がご心配のシニアの皆さま、「お家のエンディングノート」を使って住まいの終活を始めませんか。
以前のコラムでもご紹介した「住まいの終活に関する意識調査」について、改めてその結果を振り返ってみます。同調査は(株)クラッソーネ(名古屋市中村区)が、住居用不動産を所有する男女536名に対して行った「住まいの終活」に関する意識調査です。そこでは「住まいの終活」を認知している人は全体の3割、「住まいの今後の対応」を決めている人はわずか1割という結果でした。
「なぜ住まいの終活への準備は遅れるのか」という問題意識から、「なぜ住まいの終活の認知度が低いか」と「なぜ住まいの終活の進め方がわからないのか」を考えてみます。
~なぜ住いの終活の認知度が低いか~
いわゆる「終活」と呼ばれるものの認知度が9割と高い一方で、「住まいの終活」の認知度は3割と低い理由の一つに、情報の少なさがあると思います。空き家問題や所有者不明土地問題はしばしばニュースなどで取り上げられますが、そこでは住宅政策や都市政策といった政策論や今ある空き家の活用方法などが議論の中心です。また「相続」や「家じまい」という個別のテーマが話題に上ることはありますが、「住まい」と「終活」を絡めるとか、空き家の発生を未然に防ぐといった予防の議論は少ない気がします。そのため消費者への啓蒙や関連する情報提供が不足していることが認知度の低さにつながっていると考えられます。
~なぜ住まいの終活の進め方がわからないか~
次に住まいの終活の必要性は理解できるものの具体的にどうすれば良いか分からない、という問題です。住まいの終活にはやるべきことが多く、実際の行動になかなか結びついていないというケースが少なくありません。
このような方に対しては、住まいの現状を把握することから始め、住まいの終活の目的を明確にして、やるべき内容とその手順を分かりやすく教示することが有効だと思います。住まいの終活の目的はそれぞれ異なります。目的に応じて必要な項目を絞り、カスタマイズした情報提供や助言は住まいの終活を促進させるはずです。そうなれば重い腰を上げる人も徐々に増えてくると思います。もちろんご自身が学びながら進めていくことも可能です。ただ多くの選択肢から正しい道案内ができる能力がある専門家の存在は、大きな力になり得るはずです。
~専門家に求められる資質とは何か~
その専門家にはどのような資質が求められるのでしょうか。住まいの終活では、住宅という不動産に留まらず、相続問題やファイナンスの知識、相手が高齢者であるため介護や認知症の問題も避けて通れません。その他にも法律や税務問題も関わってきます。また地域や行政との連携が必要な場面も発生します。これらを全て一人で対応するには限界があり、他の専門家等につなぐプラットフォームとしての機能も必要です。そこでは初期対応をした上で、案件ごとに関連する専門家と連携が図れるネットワークと調整力を備えていることです。住まいの終活の普及と円滑な推進には、このようなコーディネーターの存在も一つの要素だと思います。