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菊池浩史

「住まい×消費者×教育」のハイブリッドを目指す専門家

菊池浩史(きくちひろし)

住まいの消費者教育研究所

コラム

高齢期の地方移住を考える

2020年10月23日 公開 / 2021年2月18日更新

コラムカテゴリ:スクール・習い事

ここ数年、地方創生や地方活性化なる言葉を目にしない日はないくらい地方への関心が高まってきています。今や地方創生の担当大臣がいる時代です。書店に並ぶ雑誌などには田舎暮らしなど、地方への移住をテーマとした特集も度々掲載されています。今回のコロナ禍ではリモートワークが広まり、パソナの事例(本社を東京から淡路島へ移転)に見られるように、都市部に拘らないワークスタイルへの動きも出てきました。

このような背景を踏まえて、高齢者が地方にUターンやIターンして暮らす地方移住について考えてみます。そもそも高齢者は移住することについて、どのように捉えているのでしょうか。ここに「老後に向けた移住の意識調査」があります(図1)。それによると、高齢になるほど現在の場所から移りたくない、移住したくないという意向が強まることが読み取れます。70歳以上では、「どちからと言えば現在の地域に住み続けたい」を含めると、9割以上が移住には否定的な結果になっています。このことから移住を望む高齢者は多くないことがわかります。
(図1)
https://mbp-japan.com/elements/osaka/profiles/kikuchi/images/cache/image_5098267_630_630.png
地方移住のメリットには、豊かな自然、都会に比べて安い住宅費、きれいな空気と水に囲まれた健康的な生活、引っ越しや住宅改修に対する自治体の補助等の経済的支援などがあります。一方のデメリットは、買い物や病院への移動手段の確保(モビリティ)、病気や介護が必要になったときに十分なサービスが受けられるかという不安などが挙げられます。

これから人口や世帯数が減少する縮小社会へ加速度的に進行します。医療・介護体制とモビリティの重要性を勘案すれば、高齢期の住まい選びにあたり高齢者の人口密度と働き手の数(生産年齢人口/高齢者人口)を考慮した候補地選びが大切になってきます。なぜならば高齢者の居住地が広域に拡散することなく一定程度集積しており、かつサービスの担い手が確保されていなければ、サービス事業の継続性の点から必要なサービスが効率的・継続的に受けることが難しくなるからです。その意味で地方は高齢者の数も担い手の数を減少しており、サービス供給が難しくなる可能性が高まります。医療・介護施設や住まいがコンパクトに集約されているか、それらの間の移動が容易かをしっかり判断しなければなりません。
 
賃貸アパートから賃貸マンション、そして分譲マンション、最後は郊外の1戸建てで上がり、といった昭和時代の住宅すごろくはもはや過去の話です。令和の時代は高齢期の住まい方は多様化しています。今回は「地方移住」を取り上げましたが、医療・介護体制とモビリティの課題は都市部では相対的に緩和されることを艱難すれば、「都市移住」という選択肢があっても不思議ではありません。

その上で地方移住を検討するとしたら、以下の点に留意する必要があります。
 ・移住の目的
 ・資金計画(意外と高い生活費)
 ・価値観やライフスタイルにあった暮らしの実現
 ・家族の理解、医療・介護サービス
 ・一人になった時の生活
また夫婦での移住を検討する場合、特に男性が配偶者に先立たれて一人になったときの生活も想定しておくべきでしょう。

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