チームにおけるミッションとビジョンの重要性について②
企業内の一つのチームのミッションとビジョンの重要性について、3回に分けてコラムを書きます。
1.企業にミッション、ビジョンはなぜ必要か?
2.チームで策定する「3つのミッション」とは何か?
3.チームで策定する「2つのビジョン」とは何か?
1.企業にミッション、ビジョンはなぜ必要か?
もともとミッションやビジョンはアメリカから入ってきた考え方です。アメリカの企業には、世界中から人種、宗教、言語が違う様々な価値観を持つ人たちが集まり、一緒に仕事をしています。人それぞれ価値観は様々です。互いに価値観が違うので、普段のちょっとした生活様式などに差異があることは認めたうえで、「こういう目的で、この目標に向かって、こういう成果を出すことに関しては、ここでは皆協力し合おう」ということを約束します。この約束をすることで、価値観の違う人たちを成果に向かって一つにまとめていきます。この約束がミッションやビジョンにつながる考え方です。企業はミッションやビジョンを掲げて、優秀でかつミッションやビジョンに賛同する人たちを集めて企業経営していきます。賛同できなければ、組織として一丸となれないので、いくら優秀でも去って行ってもらっても構わないという考え方です。
この考え方が入ってきた1980年代の日本の企業では、終身雇用制度、年功序列賃金制度が浸透しており、ミッションやビジョンで社員をまとめるという考え方には、様々な理由で違和感をもつ人がかなり多かったようです。「我が社には創立以来の社是がある」「うち会社はカリスマ社長のもとで、一丸となっている」「ミッションやビジョンを掲げてもその通りになるとは限らない。できない約束をすると批判を受ける」などなど。またその頃は、日本全国のどの企業もほとんど同じ価値観をもって、会社の中で昇格や昇進していくことが「偉くなる」こととなり、人事制度でもそれを誘導していました。
しかし今、雇用環境が変わり、仕事に対する価値観も多様化しています。「企業内で上昇志向をもって昇級していきたい」、「それよりも専門的な能力を高めていきたい」、「他の地域に転勤をするぐらいなら昇級は二の次で地元での勤務のほうがいい」など様々です。それを一律に「もうチョット頑張れば課長になれるぞ」と励まされても、皆同じように動機づけにつながりません。さらにこれから、外国人の社員が増えてくると、更に仕事に対する価値観はバラバラです。そういう時代に「創立以来の社是」「カリスマ社長」の存在だけで、会社は一丸となり続けることが出来るでしょうか?現場の社員一人ひとりにまで会社の方針を徹底していくことが出来るでしょうか?社員全員が協力し合って一つの方向に向かって行動していけるでしょうか?
そこで昨今、日本の多くの企業で、様々な価値観を持った人たちが目標に向かって一丸となるためにミッションとビジョンを明確にしていくことの重要性がクローズアップされるようになっています。