日本のコーチングの現状<No.10> セッションでコーチは何をみているのか(1)
今、日本の多くの企業でコーチングが導入されています。今後さらに求められていくと思われます。
日本でのコーチングの歴史は、1997年に日本初のコーチ養成機関として有限会社コーチ・トゥエンティワン(現在の株式会社 コーチ・エィ)が設立されたところから始まります。そこから徐々にコーチングが日本に根付いていきました。私がコーチ・トゥエンティワンでコーチングを学び始めたのは2005年。その前後に多くのコーチ養成機関ができ、多くの人たちがコーチングを学ぶようになりました。企業でも研修が行われ、プロコーチを目指す人も増え、ちょっとしたブームにもなりました。そのなかで、様々なスタイルのコーチングが出てきました。
その後、企業研修も一巡してブームも終焉したようにいう方もいます。しかしコーチングの真価を理解する企業がプロのコーチを雇ったり、社内コーチのシステムを導入したりして着実に成果を出していきました。そして今、改めてコーチングを本格的に導入している企業が着々と増えています。どういう背景と理由があるのでしょうか?
今、企業を取り巻く環境は急速でまったく予測がつきません。かつては先進の欧米の企業をモデルにすることができましたが、どの国の企業も“これが正解”というものが見えず、試行錯誤をしています。外部環境は政治・経済・社会・技術のどれをとってもグローバルに不透明ですから、過去の成功体験が役に立たない場合も多々あります。将来を予測した仮定の環境でどのような企業ポジションを得ているか、そしてそこに向かってどのような手を打っていくかという戦略的思考を備えていかなくてはいけません。
もちろん企業もさることながら、個人個人も自分に与えられた“ミッション(使命)”の果たし方と企業における自分の“ビジョン”を考え、自分で目標を設定し、行動計画を決め、目標達成に向けて自責で行動する。そういう“自律社員”を育成し、環境の変化に柔軟に対応できる体制づくりが必要となります。
人の成長は日々の行動の積み重ねで変わってきます。部下を育成していくのは上司の務めです。部下の日々の行動をみているのは上司です。部下の日々の行動に関わりながら指導・育成していきますが、そのかかわり方が指示命令型かコーチ型かによって、部下の将来の姿は変わってきます。いつも指示命令型で接すると部下は“指示待ち”“上司依存型”になる可能性があるでしょうし、コーチ型で接すると“自律型”に育っていく可能性は高くなっていきます。それで上司にコーチ型になってもらうためにコーチングを導入する企業が増えているのです。