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部下のキャリアをマネジメントする事例(Ⅱ)

原島敏郎

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 2015年6月4日に投稿した『部下のキャリアをマネジメントする事例(Ⅰ)』で、「自分が掲げた立場になりたいのであるならば、まず、自分の今の成果を上げるために真剣に仕事に取り組むこと、そしていつでもその立場になれるように準備しておくことが大切です」と書きましたが、もう少し詳しく事例で紹介します。

今の仕事で成果をあげる

 実際、今の仕事で成果をあげる努力をしていないと誰もその人の仕事に対する“意欲”を認めません。成果を上げて周囲から認められる必要があります。私のクライアントのマネジャーさんの例です。彼は製薬会社の営業部門の人事担当部署にいました。その会社では、営業に配属された新入社員は4年目に入る前に自己申告に基づく面談があり、その後の異動の参考にしています。
 同期同士のA君とB君の話です。自己申告で、A君は国際事業部への希望。B君は開発部への希望を出していました。ともに、英語の能力が求められる部署です。A君は、成績も上げ、時間を見つけて英会話の勉強を一生懸命取り組んでいたようです。B君も英会話の勉強を一生懸命やって、TOEICの点もA君よりもズーと、高かったのですが、業績がついてこない。英語の勉強が面白くて、チョット仕事がおろそかになる傾向があったようです。それはB君の上司からも指摘されたことがあるようですが、「自分は営業より、開発部に向いている」と勝手に思い込んでいました。
 結果、A君は国際事業部へ異動できましたが、B君は開発部に空きがあったのですが、彼には、「もう少し実績を十分あげてから」ということで異動はお預けになりました。B君は、そのマネジャーに「自分はA君より英語能力は高いのに、英語の能力を認めてもらっていない」と言ってきたので、「それは違うよ」と言って説明したそうです。「今の仕事にどれだけ真剣に取り組んでいるか、その取り組み姿勢や取り組みの工夫をみる。希望先の部署が、今の部署での取り組み姿勢を見て、その人が自分の部署に来てもらって頑張ってもらえるかどうかも見ている。英語能力だけではないよ。今の成績を上げる努力を最大限にしていない社員は、どの部署にとってもほしい人材とはならないよ」と伝えると素直に「わかりました」といって、1年間英語の勉強は封印し、奮起して営業実績をあげて翌年異動したという例があります。

将来の目標を明確にし、実現に向けた準備をする

 これも先ほどとは別の会社の私のクライアントさんの話しです。彼の会社も3年に1度「自己申告制度」があり、自己申告によって異動がかなった例です。彼が営業で代理店担当者をしているときに「全国の代理店対策を企画することで、全社の営業実績向上に貢献したい」ので“営業企画部”に異動したいという自己申告をしていました。
 私は彼とのコーチングで、「営業企画部で何がしたいのか?」「どんな対策を立案したいのか?」「そのために、能力として何が足らないのか?」などを整理していきました。その中で彼は、“債権管理”の知識がもっと必要だとわかり、財務管理や会計の勉強をすることにしました。それは、彼の当時の担当先の債権管理にも随分役に立ちました。
 ある時、営業企画部の人と雑談していたら、たまたま債権管理の話になって、色々質問されたので、自分の考えを伝えたそうです。その時はその人は「ふむふむ」とか言って聞いていただけでしたが、次の定期異動のときに彼の営業企画部の異動が決まり、全国代理店対策の企画担当になってしまいました。
 異動後に、その営業企画の人が、言っていたことなのですが、その人が彼にした債権管理に関する質問に対し、彼が的確に即答していたので彼を営業企画部に推薦したらしいのです。希望する部署に異動することを想定して準備しておくと、意外なところでチャンスがあります。その時には気づきませんが、後からあれがなければ実現しなかったろうな、ということがあります。

 もちろん必ず異動が実現するとは言えませんが、自分の将来像を仮設定して、そこに向かって「現状の仕事で成果をあげる」「将来の目標を定め、実現に向けた準備をする」ことで、今の仕事に対するモチベーションを高めていくことが出来ます。
 これからのマネジャーは、このような企業におけるキャリア形成の考え方を日頃から部下に伝えて、部下のキャリアをマネジメントしていく関わりも必要になってきます。

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専門家

原島敏郎

有限会社ソリスナビタス

大手企業での長年のマネジャー経験を生かし、マネジャーが陥りやすい考え方や立場上の苦しさなどを十分に理解。マネジャーの上司や部下との関係を調整しつつ、実績を上げられる組織作りをサポートします

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