ゴルフのプレー中に”〇〇”が始まった際の暫定ルール

谷光高

谷光高

テーマ:ゴルフの歴史やエピソード

1891年に創立された英国ロンドン近郊にある老舗リッチモンド・ゴルフクラブ。昔から英国王室が後援をしている名門クラブです。

このゴルフクラブにはユニークなローカルルールが定められています。そのローカルルールとは、ある事態に陥った場合を想定した暫定処置ルールとして1940年の晩秋に採択されました。

ある事態を想定したルールとは、  

「空襲の際の暫定ルール」

当時は第二次世界大戦の真っただ中、ナチス・ドイツによるイギリス本土への空襲が激化していました。ナチス・ドイツ総統 アドルフ・ヒトラーの狙いは、空軍によるイギリス各地の都市への大規模空爆によって、イギリス人と政府の士気を砕き、降伏させることでした。

とくに首都ロンドンにおいては、連続57日間に及ぶ夜間空襲が行われ、1940年9月から1941年5月末までに20,000名以上のロンドン市民が爆撃で亡くなりました。
セントラル・ロンドンから15kmしか離れていないリッチモンド・ゴルフクラブでもゴルフコースに爆弾が落ちる被害を受けました。

普通なら営業を中止して、ゴルフ場閉鎖となってしまうところですが、そこはイギリス紳士、「爆撃の際の暫定ルール」と題し、以下の≪7つの特別ルール≫の採択を促したのです。

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1.  芝刈り機の破損を防ぐため、爆弾や榴散弾の破片を回収すること。

2.  競技中において、銃撃または爆撃の間、プレーヤーはプレー中断のためにペナルティなしで隠れることができる。

3.  遅延作動式の爆弾の落下した場所は、保証された安全な距離ではないが、理にかなったところに赤旗でマークされる。

4.  フェアウェイやバンカーに落ちている榴散弾の破片が、ボールから1クラブレングス以内の距離にある場合、それをペナルティなしで取り除くことができる。その際にボールが偶然に動いてもペナルティはない。

5.  敵の攻撃によりボールが動いたときにはリプレースできる。もしくはボールが紛失・破壊されてしまったときは、ペナルティなしでホールに近づかないところにドロップできる。

6.  爆撃によるクレーターにボールが落ちた場合、ボールとホールを結んだ直線のホールに近づかない後方線上にドロップできる。

7.  ストロークが爆弾の爆発と同時になって影響を受けたプレーヤーは、同じ場所から別のボールでプレーできる。その場合、1打のペナルティが加算される。

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暫定ルールが採択されるやいなや、イギリス中の新聞にこのルールが取り上げられ、世界中に知れ渡ることとなりました。そしてナチス・ドイツを批判するとともに、激しい空襲にさらされていた英国の人々を勇気づけました。

このルールについては、リッチモンド・ゴルフクラブのオフィシャルサイトの歴史ページにすべて記載されています。→https://www.therichmondgolfclub.com/wartime-rules/

そこには話の続きが書かれています。

ドイツにもこのルールの情報が流れました。

「これらのばかげたルールの改変によって、英国の俗物たちは、人々にある種の偽りのヒロイズムを植え付けようとしている。誰もが知っているように、ドイツ空軍は軍事的に重要な目標の破壊に専念している。だから彼らゴルファーは危険を伴わずにゴルフをすることができている」

ヒトラーの宣伝大臣であるジョセフ・ゲッベルスは、ドイツの対英宣伝放送で、このように暫定ルールを罵倒しました。


リッチモンドGCのサイトでは、最後にこう書かれています。

『クラブの洗濯小屋が、その後の爆撃で破壊されました』と。

この暫定ルールは21世紀になった現在も有効となっています。

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※アドルフ・ヒトラー(ドイツ語: Adolf Hitler, 1889年4月20日 - 1945年4月30日):ドイツの政治家。ドイツ国首相、および国家元首であり、国家と一体であるとされた国家社会主義ドイツ労働者党(ナチス)の指導者。1933年に首相に指名され、1年程度で指導者原理に基づく党と指導者による一極集中独裁指導体制を築いたため、独裁者の典型とされる。その冒険的な外交政策は全世界を第二次世界大戦へと導くことになった。また、ユダヤ人などに対する組織的な大虐殺「ホロコースト」を主導したことでも知られる。敗戦を目の前にした1945年4月30日、自ら命を絶った。(参考:Wikipedia)

※パウル・ヨーゼフ・ゲッベルス(Paul Joseph Goebbels 、1897年10月29日 - 1945年5月1日):ドイツの政治家。「プロパガンダの天才」「小さなドクトル」と称され、アドルフ・ヒトラー率いる国家社会主義ドイツ労働者党(ナチス)の政権掌握と、政権下のドイツの体制維持に辣腕を発揮した。政権下では第3代宣伝全国指導者、初代国民啓蒙・宣伝大臣を務めた。第二次世界大戦の敗戦の直前、ヒトラーの遺言によってドイツ国首相に任命されるが、自らの意志でそれに背き、ヒトラーの後を追って家族とともに自殺した。(参考:Wikipedia)

■参考サイト:リッチモンド・ゴルフクラブのオフィシャルサイトの歴史ページ

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谷光高(ゴルフ場経営者)

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