日本のゴルフ場で「1ホール2グリーン」が必要だった理由
玉音放送をプロデュースした下村海南
国立国会図書館デジタルコレクションで、昔のゴルフ本を見つけました。
1936年(昭和11年)目黒書店発行、下村海南著書の「ゴルフバッグ」という本です。
下村海南[1875~1957]さんの本名を調べてびっくりしました!
本名を下村宏(1875年 - 1957年)といい、明治・大正・昭和の官僚であり、新聞経営者であり、さらには政治家、歌人でもあるという人でした。
下村さんは、戦争終結である玉音放送の際の内閣情報局総裁であり、「玉音放送をプロディースした人」として有名です。事前にレコードに録音した昭和天皇のお言葉を8月15日の正午まで守り抜き、ポツダム宣言受諾の実現に尽力したことでも知られています。
このように日本の歴史に欠かすことができない下村宏さんもゴルフは大好きだったようです。歌人として使われていたペンネームを使ってゴルフエッセイ「ゴルフバッグ」を書かれました。
この「ゴルフバッグ」では、中国(本書内「支那」)と朝鮮のキャディーさんの違いなどが書かれており、このようなゴルフ本を通じても、戦前当時の複雑な国情が伝わってきます。
この本の中で、「ゴルフエチケット15条」が書かれています。
現在同様に、当時のゴルフ規則内にも「ゴルフ競技に関する道義」としてエチケットについて10項目が記述されています。
この本の中では15条となっています。これは朝鮮京城で発行されていた「月刊ゴルファー」という本に記載されていたものを下村さんが「ゴルフバッグ」の中で紹介されています。
朝鮮京城とは、現在の韓国の首都ソウルのことで、日本統治時代においては、ソウルのことを京城府としていました。
まずは、この「ゴルフエチケット15条」をご紹介します。
ゴルフエチケット15条
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1、「プレイヤー」が「ストロ-ク」を為さんとする際は、それに接近して又は球の直後に立ちて、動き或いは談話等をなすべからず。
2、「オナー」を有する「プレイヤー」がプレイする前に、相手方は「チーアップ」すべからず。
3、「チー・グラウンド」にある「チーマーク」に注意し其の後方より打出すべし。
4、「チー・グラウンド」に於て打ち損じたる時、再び「チーアップ」して打直すべからず。
5、前進の組が二回目のストロークを為し、且つ球の到着距離外に出る迄はチーよりプレイすべからず。
6、接近せるコースに於ては其の相対せるコースより来るプレイヤー並びにキャディーに注意し、球の到着距離内にありと認めたる時は、予め「フォア」と声を掛けたる後プレイすべし。
7、コースの前方に土手又は其の他の障害物ありて観測不可能なる場合に於ては、隣接コースを前方より進み来る者、又は同一コースを前方に進む者に注意し、キャディーの合図を待ちて後プレイすべし。
8、競技中「ホール」に近き所にある球は常に相手方の後にプレイすべし。相手方を残し独り先ず「ホールアウト」すべからず。
9、後方より他の組が来る場合は「パッチンググリーン」にて「ホールアウト」したる時は直ちにそこを立ち去るべし。みだりに立ち止まり又は再び「パッチング」を試みるべからず。
10、見失ひたる球を捜索する間に、後方より他の組が来る場合は合図を為して其の組を通過せしむべし。しかして一旦通過の合図を為したる時は、其の組が通過して球の到着距離外に出づる迄はプレーすべからず。
11、芝を切り取り又は飛ばしたる際は、直ちに元の場所に置き直し足にて押し置くべし。
12、「バンカー」中にて自ら造れる総ての穴は注意して埋め置くべし。
13、地面の柔き時は、キャディーが「ホール」の近くに立ちて「ホール」を傷つけることなき様に注意すべし。
14、「ペナルティ」を科せられるべき「ストローク」を為したるときは、直ちに其の事っを相手方に告ぐべし。
15、三人一組となり各自の球によりプレイすること(スリーボール)は差支えなきも、五人以上一組となり各自の球によりプレイすることは遠慮すべし。
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この内容には、いろいろ「んっ?」という疑問点がいくつかありますが、その前に著者である下村さんが、気になっている点を書かれているので、そちらを紹介したいと思います。
80年前のエチケット違反はどんなこと?
まず「パッチンググリーン」での話。
当時、「パッチング」でアドレス中でも委細構わず、そそくさと自分のボールのところへ出かけていく人が多かったようです。はなはだしいのは、自分さえ「ホールアウト」すればもうよろしいと、相手がアドレスしてる、その時の「ピン」を持っているキャディーの傍で行き、肩に担いでいるバッグへ自分のパターを入れて、さらに次の「チーショット」に使うクラブをガサガサと引抜く人までいるとあります。このような心無い所業にあっけにとられることが多々あったそうです。
下村さんは
「皮肉な言い分だがボールは逃げませんから、まあゆっくりお待ちください」
とゴルファーに進言されています。
耳の痛い現代のゴルファーも大勢いらっしゃるのではないですか?
また、9番目で書かれているように、後ろの組が続いているにもかかわらず、一番多い愚行はグリーン上でスコアをつけることと、パターをバッグに返してガサガサと次のコースの「チーショット」に使うクラブを抜き取ることだそうです。
「スコアはグリーン上で書かねばならぬというルールは無い」
「クラブはグリーン上で抜き替えなければならぬというルールも無い」
と下村さんは強く語られています。
現代では、バッグはゴルフカートに積んであったりしているので、グリーン上でクラブを抜きかえるような光景は、プロの競技ぐらいしか見られません。
しかし、スコア記入については昔も今も変わらないエチケット違反のようです。
気を付けましょうね。
「フォアー!」の声を出すタイミングが・・・?
個人的に気になったのは、6番目の「フォア」の声を出すタイミング。隣接コースのプレイヤーが見えたら打つ前に「フォア」と叫んで「今から打つよ!気を付けてください!」と知らせていたように書かれています。
たしかに戦前につくられた古いコースでは、大きな木々でセパレートされていない隣のホールが丸見えのコースが数多くあります。当時は打つ前に「フォア!」と知らせていたのかもしれませんね。
■参考文献
「ゴルフバッグ」目黒書店:下村海南著
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