1938年に1度だけ開催。大騒動の108ホールズ・オープン

谷光高

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テーマ:ゴルフの歴史やエピソード

4日間108ホールズのマラソン競技

1938年9月の第3週に、この年に開催されたPGA主催競技で、総額13,500ドルという最も賞金額の大きな競技が行われました。
ニューヨークのフェンウェイ・ゴルフクラブで開催された、その名も「ウェストチェスター 108ホールズ・オープン」。
当時のゴルフ・スターが参加し、前半の2日間は18ホールずつ、後半の2日間は36ホールずつプレーするという108ホールズの合計スコアでの勝負。
参加者のひとりでPGAツアー11連勝のギネス記録を持つバイロン・ネルソンは「マラソンのようだった」と後日語ったほど過酷な勝負でした。

当時のトッププレーヤーが集まったこの大会で優勝したのは、有名なサム・スニード。
前例のないトータル430ストロークでの優勝でした。
この大会が行われたフェンウェイ・ゴルフクラブは、サム·スニードやバイロン·ネルソンには「最高のグリーン」と賞賛され、トミー·アーマーには「アメリカで最高のコースの一つ」とまで称賛された名ゴルフコースです。

そんな素晴らしいゴルフコースで行われた、このマラソン・ゲームには、事実かどうか定かではありませんが、とんでもない話が付いていました。

前代未聞のゴルフ狂騒曲

競技の主催者側は、この初めて行われるマラソン・ゲームを観戦する物好きなギャラリーはせいぜい2千人程度と踏んでいました。しかし、入場料が安かったこともあり、最終日には1万人以上のファンが押しかけてきました。
想定外の状況にゴルフ場は大混乱。入場ゲートには人波が押し寄せ、フェンスをなぎ倒し、ギャラリーがコースになだれ込む事態となりました。

そんな中、サム・スニードは最終18番ホールで ビリー・バークに1打差をつけてトップに立っていました。
優勝を目前にしたスニードの周りをギャラリーが取り囲みます。
競技関係者や警官たちが、その人波を押し戻そうと懸命になっている中でプレーしなければいけませんでした。
「人に囲まれて、ろくにスイングもできなかったよ」とスニードは語っています。

スニードの第3打は、グリーン手前40ヤード地点。
すでにグリーンの周りには何層にも広がった黒山の人だかり。
「いったいどこに打てというんだ」
スニードは近くにいる警官にたずねましたが、警官はそれどころではありません。一部暴徒化したギャラリーを鎮めるのに大わらわでした。

こんな状況にもかかわらず、スニードの8番アイアンによるアプローチ・ショットはギャラリーの頭上をきれいな弧を描いてグリーンをとらえ、ボールはピンの近くまで寄っていきました。そして、慎重にラインを読んで、6ラウンドのトータル430打目のパットを見事に沈めました。
この直後、スニードは優勝したことをすぐに後悔する羽目に合います。

パットを沈めた瞬間、グリーンへなだれこんできたギャラリーにスニードはもみくちゃにされ、スニードがカップからボールを拾う間もなく、優勝ボールの奪い合いが始まりました。
グリーン上は大混乱!「足を蹴られた!」という怒号や「わたしのバッグがないわ!」などという悲鳴まじりの叫び声が飛び交いました。

そんな惨状を見ていたスニードも群集の餌食に。
「私を見つけた誰かが大声で『チャンピオンだぞ!』とわめくと、いっせいにみんな飛びついてきた。背骨や首の骨が折れそうなほど、ギュウギュウ押さえつけられ、全身を叩かれ、挙句の果てに胴上げされて肩にかつぎあげられたよ」

救いを求めるスニードの叫び声は喧噪にかき消されました。餓えた狼の集団のようにファンはスニードのシャツや靴までも脱がして奪い取ろうとしました。かつぎあげられた状態ではとうてい逃げ出すことができない。必死で周囲を見渡すと、すぐそばに石垣があり、その向こう側は安全圏に思えました。そこで彼は人の上を這うようにして乗り越え、必死の思いで脱出しました。
「あのときばかりは、負けた方が良かったんじゃないかと思ったよ」と後日、スニードは語ったそうです。

そして、この「108ホールズ・オープン」は1938年の1回限りとなりました。

■参考文献
「生きがいはゴルフだけ」ブルース・ナッシュ&アラン・ズーロ著、山崎雄介訳:二見書房
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谷光高
専門家

谷光高(ゴルフ場経営者)

新有馬開発株式会社(有馬カンツリー倶楽部)

一部の人が楽しむゴルフから、誰もが気軽に楽しめるゴルフへ。日本のゴルフ文化を変えるため、ゴルフ初心者へのサポートや子どもたちへのレッスン、学校の授業などを行い、初心者にゴルフを楽しむ機会を提供している

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