『Keep Green Project』ディボット・スティックでゴルフマナー啓蒙
2013年10月、弊社が推進するゴルフマナー啓蒙活動の一つとして、ディボットツール&ティー「ディボット・スティック」を開発し、販売を始めました。
2015年1月現在で累計25万本、42のゴルフコース、4つのゴルフ団体、そして10社の企業に利用されるに至っています。
弊社有馬カンツリー倶楽部は、昭和35年(1960年)の開場から今日まで、レストラン、コース管理、キャディーに至るまで人材派遣や業務委託に頼ることなく、ひたすら生真面目にゴルフ場運営だけを続けてきました。
そんな有馬カンツリー倶楽部が、なぜ「ディボット・スティック」をつくったのか、そして、なぜうるさいまでにゴルフマナー、ゴルフマナーと言っているかを少しお話したいと思います。
前回 第三話のつづき
「グリーンフォーク」によるマナー啓蒙の限界
日本の多くのゴルフ場では、お客様が自由にコースに持って行けるように、グリーンフォークを無料提供していることは皆様ご存じのことでしょう。
有馬カンツリー倶楽部でも昔からステンレス製のグリーンフォークをスタート室前にマーカーやペグシルと一緒に置いていました。
しかし近年では、年間約4万人の来場者に対し、グリーンフォークの減る数が年間約1万個。無料でも4人に1人しか持っていかれません。
この状況は当然のことで、長年に渡り、至るところのゴルフ場が無料で提供し続けているので、いくらでも手に入れることができます。ボールマークを直すツールをたくさん持っていても仕方がないということでしょう。
キャディバッグやボストンバッグのポケットの中に、ゴルフ場のロゴマークが入ったプラスチック製やステンレス製のグリーンフォークがたくさん入っていませんか?
おそらくほとんどのゴルファーの方がグリーンフォークを持っていることでしょう。
しかし、その割にグリーン上のボールマークは直されていません。
なぜでしょうか?
原因としては、
「グリーンフォークが「バッグの肥やし」となっている」
「バッグには入っているけど、グリーン上まで持ち歩いていない」
ということが考えられます。
このような状況だけを見ると、グリーンフォークの存在が、ゴルフ場運営における経費削減の対象となってもおかしくありません。弊社でもそういう考えをするようになっていました。
また「グリーンフォーク」は、プラスチック製やステンレス製など素材による若干の形状の違いはあっても、性能は何十年と変わっていません。
この間に日本のゴルフ場のグリーンの芝は「コウライシバ」から「ベントグラス」へと大きく変化しました。
その変化に対応したのは、「グリーンフォーク」の使い方のみ。形状は一切変わることはありませんでした。
コウライシバのグリーンでは、ボールマーク中心部(患部)の周りに「グリーンフォーク」を斜めに突き刺して、テコの要領で患部を持ち上げるようにして平らになるように修復していました。
しかし、この方法でベントグリーンにできたボールマークの修復をすると、一旦持ち上げても、すぐに沈んでしまいパッティングクオリティーに問題があるということで、患部を覆うように周辺から寄せる修復方法が良いだろうという専門家が多くなりました。
全く違う芝質になっても、「グリーンフォーク」そのものの形状は変わらず、使い方がなんとなく変わっただけ。
メーカーから「この方法で修復するように」という取扱いについての説明は一切なし。
新しく始めたゴルファーにとっては、どうやって使ったらいいよいのか戸惑うことも多いのではないかと思います。
このような状況では、
「自分のパットライン上のボールマークだけを平らに、それ以外はほったらかし」
という時代が来てしまうかもしれないと危惧しています。
すでに当倶楽部も含めて多くのゴルフ場では、管理作業のひとつとして、お客様のラウンド終了後に、ボールマークを修復しながら、全グリーンの点検をしています。
将来、この作業がゴルフ場の管理責任において必須となり、ボールマークだらけのグリーンを修復してまわるのが当然という時代がすぐそこまで来ているように感じていました。
新しいディボットツールでマナー啓蒙をしたいという想い
そんな時に見つけたのが、「ピッチプロ・ゴルフ(PitchPro Golf)」の“1本足のディボットツール”でした。
グリーンフォークと違う新たなツールを置くことによって、「ボールマークを修復する」というマナー啓蒙を推進していきたい。
なんとしても「ピッチプロ・ゴルフ」の“1本足のディボットツール”を、有馬カンツリー倶楽部でゴルファーに無料提供したいと考えるようになりました。
まずは「ピッチプロ・ゴルフ」のサイトにある価格から、輸入した場合の総仕入れ価格を考えてみました。ジェトロ(日本貿易振興機構)の大阪事務所にも行っていろいろ聞いてみました。小物商品なので関税はかかりませんが、それでも輸送コストなどを考えると、あまりにも高額となってしまうので、お客様への無料提供では扱えないということが分かりました。
そこで、日本のグリーンフォークのメーカーに、一本足のディボットツールを開発する可能性を聞いてみたところ、「今は(グリーンフォーク)市場が年々縮小しているので、とてもリスクを冒してまで新商品の開発は考えられない」と即答されました。
また、別の業者さんにも話を聞くと、「この商品と同じものを中国で作らせたらいいじゃないですか。簡単に安く、そして大量に仕入れられますよ」と言われました。
私たちには商品開発の知識がないので、現実的なのか非現実的なのか、本気なのかジョークなのか分かりません。
「この後に及んで、新しいグリーンフォークなんて」とバカにされているような気分になりました。
それでも
「何とかして一本足の新しいボールマーク修復ツールが欲しい!」
「新しいツールで、プレーヤー自身で自分の作ったボールマークを修復して欲しい」
という想いは強くなるばかり。
当倶楽部支配人やキャディーマスターと何度も何度も相談しました。
× 輸入 × メーカーによる新商品
? 中国での類似商品製作
そうして出た結論が、
「自分たちでつくってみるか!」
しかし「自分たちでつくる」=「製品を開発し、販売していく」ということになります。
そこまでの自信も勝算も何もありません。
「とにかくサンプルをつくっている間に最終的に決めればいいか。」
と、とりあえず後回しにすることにしました。
2013年3月のことでした。
つづく
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