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谷光高

ゴルフの楽しさを多くの人に伝えるゴルフ場経営者

谷光高(たにみつたか) / ゴルフ場経営者

新有馬開発株式会社(有馬カンツリー倶楽部)

コラム

「ディボット・スティック」誕生ストーリー  第ニ話

2015年3月10日 公開 / 2019年1月2日更新

テーマ:ゴルファーとしての心得とマナー

コラムカテゴリ:趣味

2013年10月、弊社が推進するゴルフマナー啓蒙活動の一つとして、ディボットツール&ティー「ディボット・スティック」を開発し、販売を始めました。
2015年1月現在で累計25万本、42のゴルフコース、4つのゴルフ団体、そして10社の企業に利用されるに至っています。

弊社有馬カンツリー倶楽部は、昭和35年(1960年)の開場から今日まで、レストラン、コース管理、キャディーに至るまで人材派遣や業務委託に頼ることなく、ひたすら生真面目にゴルフ場運営だけを続けてきました。
そんな有馬カンツリー倶楽部が、なぜ「ディボット・スティック」をつくったのか、そして、なぜうるさいまでにゴルフマナー、ゴルフマナーと言っているかを少しお話したいと思います。

前回 第一話のつづき

ゴルフマナー啓蒙のきっかけは『コースの巡回VS コンペのお客様』

一般論ですが、セルフプレーが多くなるとスローペースになります。
トップスタートの組が2時間でハーフプレーを終えても、7、8分の間隔を維持することができず、「前の組と9分空いた」、「10分空いた」、「15分空いた」ということになり、あっという間に後続の組では、9ホールのラウンド時間が2時間30分になり、2時間45分になり、そして3時間にまで到達することがよくある話です。
スローペースに怒るお客様
とくに7時台や8時台前半など朝早いスタート時間のセルフプレー・コンペが、プレーペースを遅らすと影響は後々まで尾を引き、コース内での各ホール2組、3組待ちや昼休憩2時間待ちなどの要因となってしまいます。
秋から冬にかけて日没時間の早い時期にこのような状況になると、「真っ暗でボールが見えない。もう無理!」と最後までプレーできない組がでてくるという事態に陥りかねません。

2012年11月の日曜日、事件は起きました。

その日はお日柄も良く、秋の紅葉シーズンということもあり、おかげさまで50組のほぼ満杯状態でした。
アウトコースは月例競技のためにほぼメンバー様で埋め尽くされ、そしてインコースにコンペ等がいくつかエントリーされていました。

この時期の気がかりは、もちろん「日没」。
その日のスタート室は、インコーススタートの3番目から5組続くセルフプレー・コンペのプレーペースが、気がかりでした。

コンペのトップ組が3ホールまで進んだ時点で、前の組とは、すでに1ホール空いてしまいました。そこでスタート室では、すぐさまコース巡回スタッフを派遣し、ペースアップのためにプレーのお手伝いをしながら、3ホール目のパッティンググリーンからお客様について行くように指示しました。
コース巡回スタッフ
結局、巡回スタッフは9ホール終了まで離れずにいました。その甲斐もあって、何とか前の組に最終ホールで追いつき、2時間30分以内で9ホールをプレーすることができました。
コース巡回でお手伝い
これに対して怒ったのが、なぜか後ろの2組目の50代男性。

スタート室やフロント前で、すごい剣幕・・・
「なんでそこまでされな、あかんのや!」
「最後まで一緒について来ることはないやろ!」
「こっちがカネ払ってんねんぞ!好きに楽しくプレーして何が悪いんや!」
という怒号がクラブハウスに響き渡りました。
怒るお客様
確かにこれに応対した弊社社員の対応も悪く、同伴した理由を正当化し、その説明を繰り返すばかりだったため、相手方の怒りを収めるどころか火を点ける一方でした。

怒号があまりにも大きく、上の階のレストランにまで響き渡っていたため、他のお客様への配慮もあり、社長の私が出て、とにかく何度も頭を下げて謝りました。社員教育云々も言われましたが、もちろん一切反論することなく、ひたすら謝り、クリームソーダ1杯で怒りの鉾を収めていただきました。

その後、応対したスタート室員と話をしました。
その社員は、「他のお客様に迷惑を掛けないよう、プレーペースを守るために最大限の努力をした。それなのに、なぜ怒られなければいけないのか分からない。仕事を全うしただけ。理不尽なのはお客様でしょ!」という強い想いが、体中からあふれ出ていました。

「そりゃ、これじゃあ、お客様も怒るわ」と思いながら、諭すように話しました。

「ゴルフ場は接客サービス業。お客様がお怒りになった時点で、絶対にこちらに何らかの不手際があったはず。だから、まずは心からお詫びをすることが大切。」と言い、さらに「コース内においても、後ろから見て、何か気分を害することがあったのだろう。それをよく検証して、今後に活かすように。」と話しました。

担当者は自分の感情を一生懸命に抑えながら、一応は納得した様子を見せました。

何年も前からセルフプレーが多くなり、スロープレーは有馬カンツリー倶楽部にとって大きな問題でした。
「適切なペースを守ってプレーをしてもらうことは、ゴルフ場の責任である」という考えのもとで、これまで頻繁にコース巡回をして、プレーのお手伝いをしながら、必死でプレーペースを速くする努力をしてきて起こった出来事でした。

恥ずかしながら、その時初めて知ったゴルフ規則第1章「エチケット」と「ピーターたちのゴルフマナー」

その日の晩。
ゴルフ場運営の代表であるにもかかわらず、恥ずかしながら、それまで一度も開けたことがなかったゴルフ規則の第1章「エチケット」を初めて読みました。そして何度も何度も繰り返し読みながら考えました。

そこには、「適切なプレーペース」のことや「他のプレーヤーに対する心くばりが最も大切なコース上での心得」だということ、「コースの保護のために自分が作った跡は、自分で修復する」ということ、そして「礼儀正しさとスポーツマンシップを示しながら洗練されたマナーで立ち振る舞うことがゴルフの精神である」ということが明快に書かれてありました。

これを読んで、「ゴルファーたるものゴルフ規則の一番最初に書かれてあるエチケットマナーの遵守は必須のはず。これを守る努力を怠るゴルファーにも責任がある。」という思いが強くなりました。

しかし、こういった無作法行為の横行については、不景気を理由にゴルフ場側が集客のため、忘れ去られていくゴルフマナーについて、意図的に何の発信もせず、放置してきたことが一番大きな要因ではないかという考えに至りました。
「ゴルフマナーを守らない、知らない、教えてもらう機会がないという現状をつくってしまったのはゴルフ場自身ではないか」と思うようになりました。

「でも、まず自分自身がゴルフマナーを詳細まで理解するために、どうやって学んでいけばいいのだろう?」と考えながら調べていると、すぐにピッタリの本に出会いました。

ゴルダイジェスト社発行のゴルフマナー研究家 鈴木康之氏著書「ピーターたちのゴルフマナー」という本です。初版が1999年、現在まですでに第16刷も増刷されているスゴい本です。この本を読んで目がパッチリ覚めました。
「これはわかりやすい。マナーがぎっしりと細かく詰まっている。バイブル(聖書)に決定!」
ピーターたちのゴルフマナー
内容に若干納得いかない部分もありますが、この「ピーターたちのゴルフマナー」をゴルフマナーのバイブルとし、ゴルフ場社員みんなに読んでもらうために、すぐさま古書も含めて20冊購入し、すべての部署に配りました。
それが2012年12月。

ここからがスタートです。

まだ具体的に何をするかは決まっていませんでしたが、「有馬カンツリー倶楽部として、ゴルフマナーについて積極的にゴルファーに発信していこう。そしてゴルフ規則をもっと身近に感じてもらい、ひとりでも多くの人にマナーやルールに精通するゴルファーになってもらおう」という方針を明確にしました。

この事件が、のちの「ディボット・スティック」の開発へとつながる「ゴルフマナー啓蒙活動」への大きなきっかけとなりました。

こういった出来事は、日本全国津々浦々のゴルフ場で起こっていることではないでしょうか。
それも日常的に。

日本のゴルフ場では「お客様サービス」と「ゴルフの精神」とを選り分けて考えることが必要です。

「お客様だから何をしても許される」=「他のゴルファーに迷惑を掛けても良い」
ということにはなりません。

それに気づいていないゴルファーが多いのです。
ゴルフマナーに関する情報を丁寧に発信することによって、このことに気付いてもらえるように努力するのもゴルフ場の務めだと考えるようになりました。

つづく
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