沖縄の不動産は本当にまだ売れているのか|REINSのデータから見る市場の変化

多田進吾

多田進吾

テーマ:沖縄不動産市況


※本稿は、当社が実際に売却のお手伝いをしている物件や売却相談で感じていることをもとにしています。オーナーおよび物件の特定を避けるため、所在地、物件の詳細、売出価格など一部の情報を伏せています。また、市場データについては西日本不動産流通機構(西日本REINS)が公表している資料をもとにしています。

【相場から大きく外れていないのに、なぜ売れないのか】
当社で売却のお手伝いをしている土地の中に、現在のマーケットから著しく高い価格を設定しているわけではないのですが、なかなか成約まで至らない物件があります。一つは沖縄本島の中部エリア、もう一つは北部エリアにありますが、どちらも最近になって売り始めた物件ではなく、しばらく市場を見ながら売却活動を続けています。

一つ目の土地は約300坪あり、約200㎡の建物を建築できる規模で、海を望める立地ですので、宿泊施設やプール付きのヴィラ、別荘などの利用が考えられます。ただ、土地を購入した後に建物を建て、上下水道などのインフラを整備するところまで考えると、土地代と建築費などを合わせた総額は1億円を超える規模になります。ここ数年は、資材価格や輸送費、人件費の上昇に加え、世界情勢の不安定化による原材料価格や物流コストへの影響もあり、建築費そのものが大きく上がっていますので、立地や利用用途に魅力があっても、この総額を負担できる買主は限られます。

もう一つの土地は、海まで徒歩10分程度で、大通りにも面していない静かな住宅地にあり、沖縄へ移住する方の住居や宿泊施設などの利用が考えられます。ただ、現在は敷地内に大きな木が何本も生えており、場所によっては草木も繁茂しているため、買主からすると、購入した後にどのような建物を建て、どのような暮らしや利用ができるのかをイメージしにくい状態です。整地するだけでも200万円程度の費用がかかると見込んでいます。

私もこれまで、先に整地を行ったうえで売り出した方が、買主にとって土地の利用イメージを持ちやすいのではないかと、オーナーには何度か提案してきました。ただ、売却前の段階で先行投資は避けたいという意向もあり、現状では整地を行わず、その費用負担も踏まえて土地価格を抑えた形で売却を続けています。

こうして2つの土地を具体的に見てみると、売出価格が現在の相場から著しく高くなくても、買主が考えているのは土地の価格だけではありません。購入後に何に利用するのか、そのために建物や整備にいくら必要なのか、最終的な総投資額はいくらになるのかまで考えますので、物件そのものには魅力があっても、購入できる層は限られます。

この2つだけを見れば、それぞれの物件固有の事情で売れにくいとも考えられますので、これだけで沖縄の不動産市場全体が変わってきたとは言えません。ただ、最近の売却相談や購入希望者の反応を見ていると、以前より売れにくくなっているという印象はありました。

少し前に、東京の不動産市場では、売主が考えている価格と実際に成約する価格の差が広がってきているという話を知りました。それを見た時に、沖縄で最近感じていたことと重なる部分があり、沖縄でも同じような変化が少しずつ出始めている可能性があると考えました。ただ、それだけで判断するのも違いますので、実際に沖縄ではどうなっているのか、西日本REINSのデータを見て確認してみることにしました。REINSは、不動産会社が物件情報や成約情報を共有するための仕組みで、市場の動きを確認する時に参考にしているデータの一つです。

【価格だけを見ていると、市場の変化を見落とす】
不動産のマーケットを見る時、私は価格だけではなく、成約件数、新規登録件数、在庫件数などを一緒に見るようにしています。現場で売主や買主と話をしていれば、市場の動きはある程度見えてきます。ただ、それだけで市場が変わったと判断するのも違いますので、現場で起きていることと実際の数字が合っているのかを確認します。

今回、2025年7月と2026年7月のデータを比較していて、まず気になったのは西日本全体の土地の動きでした。西日本REINSの土地データは面積50㎡以上500㎡未満を対象としていますが、2025年7月の成約件数は519件、それが2026年7月には468件となっており、前年同月比で9.8%減少しています。さらに成約㎡単価は8.37万円から7.64万円へ約8.7%下落し、平均成約価格も1,927万円から1,723万円へ約10.6%下落しています。

中古戸建は少し違う動きをしています。西日本全体では2025年7月の成約件数579件に対し、2026年7月は588件で1.6%増、平均成約価格も1,935万円から1,941万円で0.3%増ですので、こちらはほぼ横ばいです。土地が件数、㎡単価、成約価格とも前年を下回っている一方、中古戸建は件数も価格も大きく崩れていません。


これを見ると、「不動産価格が下がっている」「まだ上がっている」と一つの言葉でまとめるのは少し違います。同じ時期でも土地と中古戸建では動きが違いますし、当然エリアによっても違います。まして沖縄の場合は、那覇市内のマンションと北部の数百坪の土地を同じ不動産市場として一括りにしても、実際にその物件を買う人も、購入目的も、必要になる資金もかなり違います。

【在庫が増えると、買主の見方が変わる】
もう一つ私が気になっているのが、売りに出されている物件の多さです。西日本REINS全体の売物件と賃貸物件を合わせた在庫を見ると、2025年7月は100,487件でしたが、2026年7月には108,980件となっており、単純比較では約8.5%増えています。一方、同じ7月の成約件数は3,711件から3,478件へ約6.3%減っています。これは売買だけの数字ではなく賃貸物件も含んだREINS全体の物件情報ですので、沖縄の売買市場そのものを示す数字として扱うことはできません。ただ、西日本REINS全体では、登録されている物件が増える一方で、成約件数は減っているという動きが出ています。

私には今の市場が、陳列棚に同じような価格帯の物件が数多く並んでいるだけではなく、買主側も「この価格は高いのか、妥当なのか」を以前より判断しやすくなっているように見えます。売主からすれば、周辺に同じような価格で売りに出されている土地があれば、「自分の土地もこのくらいで売れるのではないか」と考えるのは自然です。ただ、買主が見ているのは、その売出価格だけではありません。

以前であれば、買主が価格の妥当性を判断するために得られる情報には限りがあり、周辺の売出価格を参考にしたり、不動産会社に相談したりしながら判断する部分が大きかったと思います。それが今は、インターネットを使えば周辺でどのような物件がいくらで売りに出されているのかを簡単に確認できますし、同じ物件が長期間掲載されていることも分かります。さらに、地域の相場や周辺環境、購入後に必要になる費用についても自分で調べやすくなり、最近ではAIを使って情報を整理することもできますので、専門知識がない買主でも、ある程度は自分なりの判断基準を持てるようになっています。

もちろん、インターネットやAIだけで不動産の適正価格を正確に判断できるわけではありません。ただ、以前と比べると、買主と不動産会社の間にあった情報量の差は小さくなっています。その結果、周辺に同じような売出価格の物件が並んでいるからといって、買主がその価格をそのまま妥当だと受け取るとは限りません。選択肢が多いうえに、価格を比較する材料も増えていますので、「この物件を今、この価格で買う理由があるのか」を以前より慎重に見るようになります。

同じ不動産を見ていても、売主と買主では見ているものが違います。売主は周辺の売出価格やこれまでの地価上昇を見ながら自分の物件の価値を考えますが、買主は数多くある物件を比較しながら、その価格が妥当なのか、購入後にどれだけの費用が必要なのかまで含めて判断します。市場に物件が増えていることに加えて、買主自身が価格を比較し、判断できる材料が増えていることも、今の不動産市場を見るうえでは無視できない変化だと考えています。

【売出価格と「買いたい価格」の間にあるもの】
最近の現場では、売主側の売出価格と、買主側が「この価格なら買いたい」と考えている価格に、実際の相談で1.2倍から1.5倍程度の開きがあるケースもあります。もちろん、すべての物件がそうだという話ではありません。ただ、買主が妥当だと考える価格より高い価格帯で、似たような物件が数多く並んでいる状態が続けば、価格の高い物件から順番に売れていくというより、買主は様子を見るようになります。その結果、市場全体が動きにくくなります。

こうして買主側にも価格を判断する材料が増えている中で、売主が希望する価格と買主が妥当だと考える価格に大きな開きがあれば、仲介会社が間に入っていたとしても、取引を成立させるのは難しくなります。

実際に、以前売却のお手伝いをしたオーナーで、売主の立場だった時には「少しでも高く売りたい」と話していた方がいました。その取引が終わり、今度は別の物件を購入する側になった時には、「できるだけ安く買いたい」と話していました。立場が変われば、同じ人でも見ている価格は変わります。売主の時には少しでも高く評価してほしいと考え、買主になれば少しでも条件よく購入したいと考えるのは、ごく自然なことです。

私は、このやり取りが売主と買主の認識の違いをよく表していると感じました。不動産の価格は一つですが、その価格を見る立場によって「高い」「安い」の基準は変わります。売主と買主の間に価格差が生まれるのは、単にどちらかが相場を分かっていないからではなく、それぞれが自分の立場から物件を見ていることも大きいのだと思います。

土地の場合は、さらに売出価格だけでは判断できません。最初に書いた当社の物件でもそうですが、土地を購入した後には、整地や造成、上下水道などのライフライン整備、設計、建築といった費用が必要になります。ここ数年は、資材価格や輸送費、人件費の上昇に加え、戦争など世界情勢の不安定化による原材料価格や物流コストへの影響もあり、建築費そのものが大きく上がっています。仮に土地価格が以前とそれほど変わっていなくても、買主が最終的に必要とする総投資額はかなり変わっています。

もう一つ、買主側の予算を考えるうえで無視できないのが金利です。土地や建築費が上がっているだけでなく、住宅ローンや事業融資の金利が上がれば、同じ年収や同じ自己資金であっても、買主が無理なく借りられる金額や毎月の返済負担は変わります。売主から見れば、自分の土地そのものの価値が下がったわけではありませんので、これまでの相場を基準に価格を考えたくなりますが、買主からすると、土地価格に加えて建築費も上がり、さらに借入コストまで増えていることになります。物件の価値が変わっていなくても、買主が出せる金額の方が変わるということは十分にあり得ます。


さらに土地の場合、売主と買主の見ているものの違いは、購入後に必要となる費用にも表れます。売主はこれまでの地価上昇や、周辺でいくらで売りに出されているのかを見ていますが、買主は土地を購入した後に、建物を建てて実際に使える状態にするまで最終的にいくら必要になるのかを見ています。同じ土地でも、売主はこれまでの土地の価値や周辺相場を見ていて、買主はこれから必要になる総額を見ています。私は、この差が以前より大きくなっていると見ています。

私が価格だけではなく、成約件数や在庫、新規登録件数まで確認するのは、こうした市場の変化をできるだけ早く捉えるためです。価格は市場の結果として最後に動く数字ですが、その前に買主の動きが鈍くなり、成約件数が変わり、売れなかった物件が在庫として残るのであれば、価格だけを見ていると市場の変化に気づくのが遅れます。現場で起きていることと実際のデータを照らし合わせながら、今の沖縄の不動産市場がどちらに向かっているのかを見ていく必要があります。

【沖縄にも市場変化の波は来るのか】
東京などの市場で変化が起きているという話を知った時、それまで沖縄の現場で感じていたことが、私の中で少し腑に落ちました。不動産市場の変化は、東京、大阪、名古屋などの大都市圏で先に表れ、それが時間をかけて地方へ波及することがありますので、今回もその入り口に来ている可能性はあると見ています。

ただ、ここはまだ慎重に見ています。西日本の2026年7月の土地は、成約件数が前年同月比9.8%減、㎡単価が8.7%下落、成約価格も10.6%下落していますが、九州だけを見ると土地の成約件数は305件から275件へ9.8%減、㎡単価は8.70万円から8.30万円へ4.7%下落、平均成約価格は2,070万円から1,882万円へ9.1%下落しています。方向としては似ていますが、沖縄を含め各県の取引件数は大都市圏より少ないため、単月の数字だけで市場転換を断定するのは早いです。

それでも、私がオーナーであれば「沖縄の地価は上がっているから、もう少し待てばもっと高く売れる」と価格だけを見て判断することはしません。成約件数がどうなっているのか、新しい売物件がどれだけ市場へ出てきているのか、在庫が積み上がっていないか、実際にはどの価格で成約しているのか、その物件を買う人が土地代以外にどれだけの資金を必要としているのかまで見ます。

現場で起きていることも大事ですが、数字で確認することも必要です。そしてデータだけを見ても、その数字の裏側で売主と買主が何を見て判断しているのかまでは分かりません。私は、現場と数字の両方を見ながら市場を判断しています。

【まとめ】
今回あらためてREINSの数字を確認して、私が一番気になったのは「沖縄の不動産価格がこれから上がるのか、下がるのか」ということではありません。価格がはっきり下がってから市場の変化に気づくのではなく、その前に成約件数や在庫、買主の反応に変化が出ている可能性があるということです。

売却を考えているオーナーであれば、周辺の売出価格だけを見て自分の物件価格を決めるのではなく、実際の成約価格や成約件数、在庫の状況まで確認したうえで、今の価格で売却活動を続けるのか、価格を調整するのかを考える必要があります。また、不動産を購入して事業を始めたい方にとっては、売出価格だけではなく、土地取得後の整地、造成、ライフライン、建築費などを含めた総投資額で判断することが重要です。

さらに今は、建築費の上昇だけではなく、金利の上昇によって買主側の借入条件や返済負担も変わっています。売主から見れば物件そのものの価値が下がったわけではなくても、買主からすれば、土地価格、建築費、借入コストまで含めた総額で判断することになります。売主が考える価格と、買主が実際に出せる価格の差が広がるのであれば、物件価格だけを見ていても今の市場は捉えきれません。

沖縄の不動産市場が大きく変わったと、今の段階で断定するつもりはありません。ただ、現場で感じていた違和感と今回確認した数字を重ねてみると、売却や購入を判断するうえで、これまで以上に市場の動きを確認しておく必要がある時期には入っていると見ています。

この記事を読んで、ご自身の不動産を今売るべきか、もう少し待つべきか、現在の売出価格が市場に合っているのか判断に迷っている方は、売却相談としてお問い合わせください。周辺の売出価格だけではなく、成約価格、成約件数、在庫の状況なども確認しながら、その物件を今の市場でどのように考えるべきか一緒に整理します。

また、これから沖縄で宿泊事業を計画していて、「この物件をこの価格で購入して事業として成り立つのか」「そもそもこの物件を買うべきなのか」と迷っている方もご相談ください。物件価格だけではなく、事業開始までに必要となる費用や現在の市場環境まで含めて確認しながら、一緒に考えます。

―ご質問・ご相談も募集しています―

▼お電話でのご相談
050-5369-5812
受付時間 9:30〜18:00(水曜定休)

▼LINEで相談する
https://lin.ee/wAo0UUx

▼メールでのお問い合わせ
info★okinawa-realestate.co.jp
(送信時は★を@に変更してください)

※営業・勧誘を目的としたお問い合わせはご遠慮ください。

リンクをコピーしました

Mybestpro Members

多田進吾
専門家

多田進吾(不動産仲介)

沖縄リアルエステート株式会社

東京で富裕層向け不動産仲介に従事し交渉力や提案力を磨く。沖縄移住後は宿泊施設を開業し運営ノウハウも取得。迅速かつ丁寧な対応を強みに、空き家活用から収益化の提案までオーナー様に寄り添った不動産取引を支援

多田進吾プロは琉球放送が厳正なる審査をした登録専門家です

関連するコラム

プロのおすすめするコラム

コラムテーマ

コラム一覧に戻る

プロのインタビューを読む

沖縄での新規事業・不動産投資・移住をサポートするプロ

  1. マイベストプロ TOP
  2. マイベストプロ沖縄
  3. 沖縄の住宅・建物
  4. 沖縄の不動産物件・賃貸
  5. 多田進吾
  6. コラム一覧
  7. 沖縄の不動産は本当にまだ売れているのか|REINSのデータから見る市場の変化

多田進吾プロへの仕事の相談・依頼

仕事の相談・依頼