沖縄民泊、予約は早く埋めた方がいい?|年間180日の営業制限から考える収益

多田進吾

多田進吾

テーマ:沖縄民泊


※本稿は、当社が民泊運営についてコンサルティング契約をしているオーナーとの実際の打ち合わせをもとにしています。オーナーおよび物件の特定を避けるため、所在地、物件名、売上金額など一部の情報を伏せ、数値についても趣旨を変えない範囲で比率や概数等に置き換えています。

【オーナーと同じレポートを見ていたのですが、見ていたところは少し違いました】
前回、民泊運営についてコンサルティング契約をしているオーナーと、8月の運営レポートを見ながら打ち合わせをしていました。このオーナーは不動産投資をされている方ですので、毎月の売上や稼働率はもちろん、ADR(1泊あたり単価)、ABV(1予約あたり売上)、予約件数、平均宿泊人数、平均滞在日数なども細かく確認していますし、Airbnbのお気に入り登録数が前月と比べてどうなっているのかというところまで見ていますので、私としても毎月レポートを作りながら、その数字について一緒に確認しています。

その前回の打ち合わせで、オーナーから「11月の予約がなかなか入らないですね」という話がありました。確かに11月だけを見れば、予約が多く入っている状態ではありませんでしたので、オーナーとしてはそこが気になったのだと思います。ただ、私はその話を聞きながら、正直なところ心の中では「11月の予約を、なぜ今そんなに取らないといけないのだろう」と考えていました。

というのも、この物件は旅館業の許可を取得して365日営業している宿泊施設ではなく、住宅宿泊事業として運営していますので、営業できる日数には年間180日という上限があります。その180日のうち、すでに148日は予約が入っていて、残っている営業枠は32日でしたので、私の中では「11月に予約が入っていない」ということよりも、「残された32日を、これから1年のどこで使うのがいいのだろう」ということの方が気になっていました。

しかも、私は11月について、予約を取るために料金を下げているわけではなく、むしろ価格は上げています。もちろん、その価格でも予約が入れば受けるという考えですが、11月を埋めるためにこちらから値下げして取りにいく必要はないと考えていました。予約が入らなくてもいいという意味ではなく、年間180日という限られた営業枠の中で、安くしてまで11月にその1日を使う必要があるのかということです。

オーナーは「11月の予約が入っていない」という現在の数字を見ていて、私は同じ数字を見ながら、その先にある年末年始や春節、春休みまで含めて、まだ使っていない32日の営業枠をどこに残すのかを見ていましたので、振り返ってみると、同じレポートを見ていても少し違うものを見ていたのだと思います。

【残り32日を、どこで使うのか】
私はこの物件の予約を考えるとき、予約管理システムだけを見るのではなく、365日のカレンダーを作り、その中で年間に営業する180日に○を入れています。システムやExcelの数字だけで考えると、月ごとの営業日数は自由に組み合わせられますが、実際の暦に一日ずつ○を入れていくと、その日が平日なのか週末なのか、その前後にどのような需要期があるのかまで見えてきますので、数字の上では成立していた計画でも、実際の暦に落とすと辻褄が合わなくなることがあります。私にとってこの作業は、営業日数を確認するだけではなく、年間の販売計画が現実の暦の中でも成立するのかを確認するためのものです。

そうして365日のカレンダーに○を入れながら考えていった結果、残り32日は、現在の計画では10月に2日、12月に6日、1月に4日、2月に12日、3月に8日という配分になりました。こうして実際の暦に落としてみると、「まだ予約が足りない」という見え方ではなく、「これから高く売れる可能性がある時期のために、営業枠をまだ持っている」という見え方に変わってきます。

この物件の場合、宿泊者の約8割が海外からのお客様ですので、日本の連休だけを見ているわけではなく、年末年始はもちろん、春節や海外の休暇、そこから3月の春休みまで含めて、どの時期にどの市場から予約が動く可能性があるのかを見ています。また、同じ海外のお客様でも台湾、香港、韓国、アメリカでは予約の動き方が違いますので、残された32日を単純に空いている日に割り振ればいいという話でもありません。

今空いている日を少し料金を下げれば予約が入る可能性はありますが、本当に年間の収益を考えたときに、その予約を今取ることがいいのだろうかとは考えます。営業枠を残していても思ったように予約が入るとは限りませんので、実際の予約状況を見ながら価格は調整していきますが、残された営業枠が32日しかない中で、空いているという理由だけで料金を下げて予約を取ることは考えていません。

かなり以前の話になりますが、私はブライダル業界で結婚式の予約を取る責任者をしていた時期があり、その頃も目標とする売上から逆算しながら、限られた日程の中で、いつ、何件、どのくらいの売上で予約を取るのかという計画を作っていました。今回、365日のカレンダーを作り、一日ずつ○を入れながら180日を組み立てていると、やっていることは当時とかなり似ているのかもしれません。

【早く180日を埋めることが、本当にいいことなのだろうか】
そんなことを考えていたとき、別の住宅宿泊事業の物件を確認していて、少し気になることがありました。その物件では8月末を待たずにすでに年間180日の予約枠が埋まっていて、それ以上予約を受けられない状態になっていましたので、予約の入り方だけを見れば非常に順調ですし、年度の途中で年間の営業可能日数がすべて予約で埋まっているわけですから、一般的には「よく売れている民泊」と見えると思います。

ただ、そのカレンダーを見ていると、その先にはまだ年末年始がありますし、春節もありますし、3月の春休みも残っていますので、私は「180日も予約が入っていてすごい」ということよりも、「この先の高く売れる可能性がある日を、もう販売できないのか」という方が気になりました。

宿泊事業では空室を販売できなかったことを機会損失として考えることがありますが、住宅宿泊事業の場合は、早い段階で安い日を予約で埋めたことによって、その1日分の営業枠を使い、後からもっと高く販売できる可能性がある日を営業できなくなるという逆の機会損失もあるのではないかと思っています。予約が入ったという事実だけを見れば売上ですが、年間180日という制限の中では、その予約によって後の販売機会を失っていないかというところまで見ないと、本当の意味で年間収益を見ていることにはならないと思っています。

【稼働率が下がった8月を、どう見るのか】
ここで、もう一度8月の運営レポートに戻ります。8月は台風の影響による直前キャンセルがあったため、結果として稼働率は7月より約3ポイント下がりました。一方で、ADR(1泊あたり単価)は約20%上昇し、月間売上は4月以降で最も高くなっていますので、稼働率だけを見れば前月より下がっていますが、その理由まで含めて見ると、単純に「予約が弱くなった」とは言えませんし、売上から見るとむしろ逆の結果になっています。この数字を見ても、私はやはり一つの指標だけで民泊の状態を判断するのは難しいと思いました。

オーナーが稼働率を見ることは間違っていませんし、ADRやABV(1予約あたり売上)を見ることも必要です。ただ、オーナーの年間収益を最大化することが私の仕事ですので、私の仕事は稼働率を100%に近づけることでも、ADRだけをできるだけ高くすることでもありませんし、稼働率が下がったという数字だけを見て、すぐに料金を下げて予約を増やそうとは考えていません。

この物件については、年間の運営計画を作った段階から、180日の営業制限を前提として複数の売上シナリオを作り、より高い収益になるように180日を組み立てることを考えていました。現時点で、その当時の最も高いシナリオを上回るところまで来ていて、最終的には当初想定の約1.2倍の年間売上を目指しています。

【365日営業の施設と、180日営業の民泊では空室の意味が違う】
ここまで書くと、住宅宿泊事業では閑散期に料金を下げず、空室のまま残しておいた方がいいという話に見えるかもしれませんが、私はそう考えているわけではありません。今回このような販売方法を取っているのは、この物件には現在50件以上のレビューがあり、そのすべてが星5で、施設に対する信頼性や実際に宿泊したお客様の宿泊体験がレビューを通じて、これから予約を検討するお客様にも伝わる状態になっているからです。また、現在は旅慣れたお客様から選ばれる施設になっていることも予約データから確認していますので、今のこの物件の状態を見たうえで、このような販売方法を取っています。

まだレビューがほとんどなく、お客様から見てどのような施設なのか、実際にどのような宿泊体験ができるのかが分からない物件であれば、同じように考えるとは限りません。開業したばかりの時期であれば、まず宿泊していただくことを優先し、その中でレビューを積み上げながら施設に対する信頼を作っていくことも必要だと思いますので、同じ住宅宿泊事業であっても、すべての物件で同じように180日を使えばいいとは考えていません。

旅館業の許可を取得して365日営業できる宿泊施設であれば、空室に対する考え方も違います。直近の空室や需要の弱い時期であっても、料金を下げて予約を取ることで最終的にオーナーの手残りが増えるのであれば、私はその予約は取った方がいいと考えていますし、今日1日を安く販売したからといって、そのことで年末年始や需要期の1日が営業できなくなるわけではありませんので、最終的な収益が増えるのであれば、空室のまま残しておく必要はないと思っています。

住宅宿泊事業の場合は、閑散期の1日も、年末年始の1日も、春節の1日も、営業日数としては同じ180日のうちの1日ですので、今その1日を使えば、年間で使える営業枠は一つ減ります。閑散期だから予約を取らないということではありませんし、その予約を取ることが最終的にオーナーの収益につながるのであれば取りますが、同じ1日でも時期によって販売できる価格は違いますので、目の前の空室を埋めることだけではなく、その1日を今使うのか、それともこれから需要が高くなる時期のために残しておくのかということまで考えています。

今回の11月についても、予約を取らなくていいと考えているわけではありませんし、現在設定している価格で予約が入れば受けます。ただ、残された営業枠が32日しかない中で、11月を埋めるために料金を下げてまで予約を取りにいくことが、本当に年間の収益を考えたときに良いのだろうかということです。オーナーは11月の予約状況を見ていましたが、私は同じ数字を見ながら、これから年末年始や春節、春休みもありますので、残された32日をどこで使えば最終的にオーナーの年間収益を高くできるのかを考えていました。

【まとめ】
今回、オーナーから「11月の予約がなかなか入らないですね」と言われたとき、私はなぜ11月の予約を増やそうとは考えず、残り32日の営業枠をどこで使うのかを考えていたのだろうと、今回このコラムを書きながら改めて振り返っていました。同じ運営レポートを見ていても、オーナーはこれから近づいてくる11月の予約状況を見ていて、私はその先の年末年始や春節、春休みまで含めた年間の売上を見ていましたので、見ている数字は同じでも、その数字から考えていたことは少し違っていたのだと思います。

オーナーから民泊の運営を任されている私の仕事は、予約を早く埋めることでも、稼働率をできるだけ高くすることでもありません。11月の予約を取ることで年間の収益が増えるのであれば取りますし、その1日をこれから先のために残しておいた方が年間の収益が高くなると考えるのであれば、11月が空いているという理由だけで料金を下げて予約を取りにいくことはしません。毎月の稼働率やADR、予約件数を細かく見ているのも、その数字自体を良くするためではなく、最終的にオーナーの収益を最大化するためです。

残された営業枠は32日ですが、これから実際にどこで使い、最終的にどのような結果になるのかはまだ分かりません。私も実際の予約状況を見ながら考えていくことになりますが、年間180日を使い終わったときに、オーナーにどれだけの収益を残すことができたのか、最後はそこを見て今回の運営が良かったのかを判断することになると思います。

【民泊運営・運営代行のご相談について】
沖縄本島で民泊の運営代行や運営改善についてご相談をお受けしています。私自身が物件ごとの予約状況や売上、宿泊単価、年間の販売計画まで確認しながら運営に関わるため、お引き受けできる物件数には限りがあります。

そのため、「とりあえず話を聞いてみたい」というお問い合わせではなく、ご自身の物件の収益を本気で改善したい方、これから民泊を始めるにあたり運営を本気で任せたいと考えているオーナー様からのご相談をお待ちしています。

▼お電話でのご相談
050-5369-5812
受付時間 9:30〜18:00(水曜定休)

▼LINEで相談する
https://lin.ee/wAo0UUx

▼メールでのお問い合わせ
info★okinawa-realestate.co.jp
(送信時は★を@に変更してください)

※営業・勧誘を目的としたお問い合わせはご遠慮ください。

リンクをコピーしました

Mybestpro Members

多田進吾
専門家

多田進吾(不動産仲介)

沖縄リアルエステート株式会社

東京で富裕層向け不動産仲介に従事し交渉力や提案力を磨く。沖縄移住後は宿泊施設を開業し運営ノウハウも取得。迅速かつ丁寧な対応を強みに、空き家活用から収益化の提案までオーナー様に寄り添った不動産取引を支援

多田進吾プロは琉球放送が厳正なる審査をした登録専門家です

関連するコラム

プロのおすすめするコラム

コラムテーマ

コラム一覧に戻る

プロのインタビューを読む

沖縄での新規事業・不動産投資・移住をサポートするプロ

  1. マイベストプロ TOP
  2. マイベストプロ沖縄
  3. 沖縄の住宅・建物
  4. 沖縄の不動産物件・賃貸
  5. 多田進吾
  6. コラム一覧
  7. 沖縄民泊、予約は早く埋めた方がいい?|年間180日の営業制限から考える収益

多田進吾プロへの仕事の相談・依頼

仕事の相談・依頼