入れ歯の安定しない要因とその対策
~「耐用年数」~
先日、御年80歳になるご婦人I様が一年四ヶ月ぶりに定期健診にお見えになりました。
今から11年前、I様とは、私が以前勤務していた歯科医院の院長先生からの紹介でご縁を頂きました。
I様は、当時、義歯の調子が悪いのもさることながら、その半年前にご主人を亡くされて失意の状態にあり、元気のないご様子でした。
元の院長先生からの紹介ということからもわかるように、保険診療の範囲内の通常のやり方では太刀打ちできないくらい、顎の骨がやせて、咬み合わせのズレの大きい、いわゆる難症例でした。
「まずは、お口の中の状態を改善して、元気になりましょう!」とお声掛けし、それから1年かけて、総義歯(総入れ歯)を製作いたしました。
そのプロセスで段々と咬めるようになり、元気を取り戻していかれたのです。
以来、一年に1~2回、定期健診にお越しくださり、今年で10年の節目を迎えました。
以下、I様との当日の会話です。
I様:「先生、質問があるんですけど?」
私:「何でしょう?」
I様:「入れ歯の耐用年数ってどの位なんですか?」
私:「本当に人によってまちまちなんですが、1~2年で合わなくなって作り変える方も多いと聞きますし、酷い場合は半年に一回であれば、健康保険で作り変えが認められるので、その度に製作している人がいるという話も聞くことがあります。」
I様:「はぁ~~~、私のは10年経ちましたけど、あと何年くらい大丈夫ですか?」
(これまで咬み合わせの調整しかしたことがなく、I様のお手入れも行き届いているので、ほとんど新品同様な総義歯)
私:「・・・・・、壊れない限り、ずっと持ちます。」
I様:「ずっとって、どの位ですか?」
私:「う~ん、あと10年くらい大丈夫かもしれませんね。10年経過して、顎の骨の形も殆ど変わってませんし、咬み合わせも良好、義歯のくっつき方も以前より良いくらいですから」
I様:「はぁ~~~、これから10年ですか!」
「私の寿命の方が持ちませんわ(笑)」
私:「・・・・・・(^_^;)」
スタッフ:「・・・・・(^_^;)」
10年前に比べると、すっかり温和な表情になられ、この間に社交ダンスを習い始めて、継続中。動きも機敏で、とても80歳には見えません。通院手段はバスと徒歩です。
難しい症例でしたが、
これまでの10年間、ストレスフリーのお口を実現できて、
これからの10年間、ストレスフリーのお口であり続ける可能性を感じ、
まさに、歯医者冥利につきる一日でした(*^^*)
I様、10年と言わず、いつまでもお元気にお過ごしください!
諌山 正典 拝