50代になったら、老後準備は何から始める? ― 貯金を増やす前にやっておきたい「わが家のお金の見える化」
大分で活動しているファイナンシャルプランナーの三重野徹です。
「年金は早くもらった方が得なの?」
「70歳まで待てば、年金が増えるって本当?」
50代後半になると、こんな疑問を持つ方が増えてきます。
公的年金は原則65歳から受け取りますが、実は受け取り始める年齢を自分で選ぶことができます。
早く受け取る「繰上げ受給」。
遅く受け取る「繰下げ受給」。
どちらにもメリットと注意点があります。
では、何歳から受け取るのが一番よいのでしょうか。
私は、年金の受け取り方は、単純な損得だけで決めるものではないと考えています。
今回は、具体的な金額を比較しながら、自分に合った年金の受け取り方を考えてみましょう。
年金は何歳から受け取れる?
まず、基本的な仕組みを整理しましょう。
老齢年金の受給開始は原則65歳です。
ただし、希望すれば60歳から繰上げ受給ができ、66歳から75歳までの間で繰下げ受給を選ぶこともできます。
2026年時点の制度では、昭和37年4月2日以降生まれの方について、繰上げ受給は1か月早めるごとに0.4%減額されます。
一方、繰下げ受給は1か月遅らせるごとに0.7%増額されます。
この増減率は、原則として生涯続きます。
では、実際にどのくらい違うのでしょうか。
65歳から月15万円もらえる人の場合
例えば、65歳からの年金見込額が月15万円の方で比較してみましょう。
受給開始年齢 増減率 月額年金(概算)
60歳 24%減額 11万4,000円
65歳 増減なし 15万円
70歳 42%増額 21万3,000円
75歳 84%増額 27万6,000円
※2026年時点の制度に基づく単純計算。昭和37年4月2日以降生まれの方を想定。加給年金などの加算、税金・社会保険料、将来の年金額改定などは考慮していません。
いかがでしょうか。
60歳と70歳では、毎月受け取る年金に大きな差が生まれます。
70歳まで待てば月額は増えますが、その間の年金収入はありません。
ここが、受給開始年齢を考えるうえで大切なポイントです。
「何歳まで生きれば得?」だけで考えていい?
年金の話になると、よく話題になるのが「損益分岐点」です。
例えば65歳受給と70歳受給を比較すると、単純な累計受給額が逆転するのは、おおむね82歳前後です。
つまり、82歳前後より長生きすれば、70歳から受け取る方が累計額は多くなる計算です。
ただし、これは税金や社会保険料、年金額の改定などを考慮しない単純比較です。
そして何より、私たちは自分が何歳まで生きるかを知ることができません。
だからこそ、私はこう考えています。
「何歳まで生きれば得か」よりも、「何歳から、いくら必要なのか」を先に考える。
これが大切なのです。
60歳から早く受け取るメリットと注意点
例えば、60歳で仕事を辞めたい方。
65歳までの生活費を預貯金だけで賄うのは、少し心配かもしれません。
そんな場合、繰上げ受給によって早く年金を受け取ることが、一つの選択肢になります。
メリットは、早い時期から収入を確保できることです。
一方で、注意したいのは、減額された年金額が原則として一生続くこと。
また、繰上げ請求は原則として取り消せず、障害年金などの受給に影響する場合もあります。
「早くもらえるから安心」と、十分に確認せず決めることは避けたいところです。
70歳まで待つメリットと注意点
一方、70歳まで繰下げる場合はどうでしょう。
65歳からの年金額が月15万円なら、70歳からは月21万3,000円という計算になります。
長生きしたときに、毎月の年金収入が多いことは大きな安心につながります。
ただし、65歳から70歳までの5年間は、繰り下げる年金を受け取らずに生活する必要があります。
例えば月25万円の生活費が必要なら、5年間で1,500万円。
この期間を給与収入や預貯金などで賄えるかどうかが重要です。
また、年金額が増えることで税金や医療・介護保険料などが増える可能性もあります。
年金の額面が増えることと、手取りが同じ割合で増えることは別なのです。
夫婦なら「二人とも同じ年齢」でなくてもいい
夫婦の場合は、さらに考え方が広がります。
例えば、
夫は65歳から年金を受け取る。
妻は70歳まで繰り下げる。
あるいは、その逆も考えられます。
老齢基礎年金と老齢厚生年金を別々に繰り下げることも、制度上は可能です。
ただし、配偶者などの条件によって支給される加給年金や振替加算は、繰下げによる増額の対象にならず、待機期間中は受け取れない場合があります。
また、遺族年金などとの関係も個別に確認が必要です。
夫婦の年金は、二人分を合わせた家計全体で考えること。
これが大切です。
年金の受け取り方を決める5つのポイント
私がFP相談で確認したいのは、次の5つです。
① 何歳まで働く予定か
65歳以降も働く予定なら、年金を急いで受け取る必要がない場合もあります。ただし、給与と年金の関係による支給調整にも注意が必要です。
② 預貯金はいくらあるか
繰下げ期間中の生活費を賄えるだけの資金があるかを確認します。
③ 毎月の生活費はいくらか
年金だけで生活費を賄いたいのか、預貯金も計画的に使うのかによって選択肢は変わります。
④ 健康状態とこれからの希望
健康への不安や、元気なうちに旅行を楽しみたいという希望も、大切な判断材料です。
⑤ 配偶者の年金や家族の状況
夫婦の年齢差や年金額、加給年金などの条件も確認します。
今週やることは、これ1つ
今回は、「ねんきんネット」で年金見込額を確認してみましょう。
確認したいのは、次の3つです。
65歳から受け取る場合の年金額
60歳から受け取る場合の年金額
70歳から受け取る場合の年金額
そして、それぞれについて「その年齢から受け取ったら、わが家の生活費は足りるかな?」と考えてみてください。
数字を並べるだけでも、自分に合った受給開始年齢を考えるきっかけになります。
FPからのワンポイントアドバイス
年金の受け取り方について、
「結局、何歳からもらうのが一番得ですか?」
と聞かれることがあります。
しかし、私は年金を単なる損得計算だけで考えてほしくありません。
年金は、長生きしたときの生活を支える大切な収入です。
一方で、元気な60代に使えるお金を確保することも重要です。
「長生きしたときの安心」と「元気なうちに楽しむ時間」。
その両方を大切にしながら、受給開始年齢を考えていただきたいと思います。
まとめ
年金は、早く受け取れば毎月の金額が減り、遅く受け取れば増える仕組みです。
しかし、増減率だけで正解が決まるわけではありません。
大切なのは、
「わが家は何歳から、毎月いくら必要なのか」
を知ることです。
預貯金、働き方、配偶者の年金、健康状態、これからやりたいこと。
それらを整理して、自分に合った受け取り方を考えましょう。
年金は、できるだけ多くもらうことだけが目的ではありません。
これからの人生を安心して、自分らしく暮らすためのお金です。
今回のテーマついて質問や相談がある方はみらいマネープランニングにご相談ください。 初回無料相談にてサポートいたします。
新NISA制度や資産形成について基礎から学びたい方は、お金の小学校大分校で一緒に学びませんか?


