退職金を受け取ったら、すぐ運用してはいけない? ― まとまったお金を「使う・備える・育てる」に分ける老後資金の考え方

三重野徹

三重野徹

テーマ:老後

大分で活動しているファイナンシャルプランナーの三重野徹です。

「退職金が入ったら、NISAで運用した方がいいでしょうか?」

「住宅ローンを全部返してしまった方が安心ですよね?」

定年が近づくと、このような相談が増えてきます。

長年働いて受け取る退職金。

人によって金額は違いますが、人生で初めて大きなまとまったお金を手にする方もいらっしゃるでしょう。

最近は物価の上昇も気になります。

「銀行に預けておくだけでは、もったいないのでは?」

そんな気持ちになるのも自然なことです。

でも、私は退職金の相談を受けたとき、最初から運用商品を選ぶことはおすすめしていません。

なぜなら、退職金は「増やすためのお金」である前に、「これからの生活を支えるお金」だからです。

今回は、退職金を受け取る前に考えておきたい3つのポイントをご紹介します。

退職金2,000万円。あなたならどうする?



例えば、60歳で退職金2,000万円を受け取るAさん(仮名)。

住宅ローンは残り300万円。

預貯金は500万円。

65歳から夫婦で受け取る年金は、月23万円の見込みです。

Aさんはこう考えていました。

「住宅ローンを300万円返して、残り1,700万円を運用すればいいかな?」

一見すると、合理的な考え方にも見えます。

しかし、ここで一つ確認したいことがあります。

「退職後、毎月いくらで生活する予定ですか?」

Aさんに聞いてみると、夫婦の生活費は月28万円ほど必要とのことでした。

年金が月23万円なら、単純計算で毎月5万円の不足です。

年間では60万円。

20年間なら1,200万円になります。

もちろん、これは物価上昇や医療・介護費用などを考慮しない単純計算です。

それでも、退職金をどう使うか考えるための大切な目安になります。

退職金2,000万円は、決してすべてが自由に使えるお金とは限らないのです。

退職金は3つに分けて考える



私がおすすめしたいのは、退職金を次の3つに分けて考える方法です。

① 使うお金

退職後、比較的早い時期に使う予定のお金です。

例えば、

住宅ローンの返済

車の買い替え

自宅のリフォーム

夫婦での旅行

家電製品の買い替え

などです。

退職後は、意外と大きな支出が重なることがあります。

特に住宅の修繕や車の買い替えは、数百万円単位になることもあります。

まずは、今後5年程度で使う予定のお金を書き出してみましょう。

使う予定が決まっているお金は、無理に運用しないことが基本です。

② 備えるお金

次に、予想外の支出に備えるお金です。

例えば、

病気や入院。

親や自分たちの介護。

住宅設備の故障。

生活費の不足。

こうした支出は、いつ発生するか分かりません。

だからこそ、必要なときに使えるお金を確保しておくことが大切です。

退職後は、現役時代のように収入を増やすことが難しくなる場合もあります。

「何かあっても、すぐに使えるお金がある」

という安心感は、老後生活を支える大切な要素です。

③ 育てるお金

最後に、当面使う予定のないお金です。

例えば、10年以上使わない見込みのお金であれば、NISAなどを利用した資産運用を検討する選択肢があります。

物価が上昇する時代には、現金だけで資産を持つことにも注意が必要です。

ただし、投資には価格変動があります。

退職金を一度にすべて投資してしまうと、相場が下がったときに不安になり、必要な生活費のために損失を抱えたまま売却することになるかもしれません。

大切なのは、

「いくら増やせるか」よりも、「いくらなら値下がりしても生活に困らないか」


という視点です。

退職金2,000万円を分けてみると?

例えば、先ほどのAさんが退職金を次のように分けたとしましょう。

お金の役割  金額  主な目的  

使うお金  500万円  住宅ローン返済・車・旅行

備えるお金 900万円  生活費の不足・医療・介護

育てるお金 600万円  長期的な資産形成

合計    2,000万円



これは、あくまでも考え方を説明するための一例です。

実際には、もともとの預貯金や年金額、生活費、退職後の収入によって適切な配分は変わります。

特に、年金を受け取る65歳までの生活費をどう確保するかは重要です。

Aさんが60歳で完全に退職する場合には、その5年間の収入と支出も確認しなければなりません。

「使う・備える・育てる」の割合に、全員共通の正解はありません。

住宅ローンは退職金で完済した方がいい?



退職金の相談で、よく出てくるのが住宅ローンです。

「借金が残っているのは嫌だから、全部返してしまいたい」

というお気持ちはよく分かります。

ただし、一括返済には注意点もあります。

例えば、住宅ローン残高が500万円で、手元の預貯金も500万円だった場合。

預貯金をすべて使って完済すると、住宅ローンはなくなりますが、手元のお金もなくなってしまいます。

その後、病気や住宅修繕などで大きな支出が必要になったらどうでしょう。

安心のために完済したはずが、かえって家計に余裕がなくなる可能性もあります。

住宅ローンの一括返済は、

金利・残りの返済期間・毎月の返済額・手元資金

を総合的に考えて判断しましょう。

退職金を受け取った直後は、大きな決断を急がない

もう一つ、お伝えしたいことがあります。

それは、

退職金を受け取った直後に、すべての使い道を決めなくてもよい


ということです。

まとまったお金が口座に入ると、

「何かしなければ」

という気持ちになるかもしれません。

しかし、退職後は生活スタイルも大きく変わります。

実際に毎月いくら使うのか。

旅行や趣味にどれくらいお金を使いたいのか。

働き続けるのか、完全に退職するのか。

こうしたことを整理してからでも遅くありません。

焦って金融商品を選ぶのではなく、まず生活の見通しを立てることが大切です。

退職金は「使わないこと」が正解ではない



ここまで、退職金を慎重に管理することの大切さをお伝えしてきました。

でも、もう一つ忘れてほしくないことがあります。

それは、退職金は人生を楽しむためにも使ってよいお金だということです。

長年頑張って働いてきたからこそ、

夫婦で旅行をする。

趣味を楽しむ。

家族との時間を大切にする。

そんな使い方も、素敵な選択だと思います。

老後資金を減らすことが怖くて、何も楽しめない。

それでは少し寂しいですよね。

大切なのは、必要なお金を確保したうえで、安心して使える金額を知ることです。

退職金は「使わないこと」が正解ではない



今回は、紙を3つに区切ってみましょう。

「使う」「備える」「育てる」

そして、それぞれに当てはまるお金を書き出してみてください。

例えば、

使う: 車の買い替え、住宅修繕、旅行

備える: 生活費の不足、医療・介護、予備資金

育てる: 10年以上使わない予定の老後資金

金額まで決められなくても構いません。

まずは、退職金にどんな役割を持たせたいかを考えることが第一歩です。

FPからのワンポイントアドバイス



退職金の運用相談では、

「どの商品が一番増えますか?」

と聞かれることがあります。

もちろん、資産を効率よく育てることも大切です。

しかし、退職後は現役時代と違い、資産を「貯める時期」から「使いながら管理する時期」へ移っていきます。

そのため、運用利回りだけで商品を選ぶのではなく、必要なときに引き出せるか、どのくらい値下がりする可能性があるか、手数料はどのくらいかなども確認したいところです。

また、退職金には税金の問題もあります。

企業の退職金やiDeCoの一時金を受け取る場合には、受け取る時期や方法によって税負担が変わることがあります。

退職金は、受け取ってから考えるのではなく、受け取る前から計画する。

これが、老後のお金を上手に管理するための大切なポイントです。

まとめ



退職金を受け取ったとき、最初に考えたいのは、

「どうすれば一番増えるか?」

ではありません。

「このお金で、これからの生活をどう支えていくか?」

ということです。

退職金を、

①使うお金
②備えるお金
③育てるお金

の3つに分けて考えてみましょう。

使う予定のお金は安全性を重視する。

万一に備えるお金は、必要なときに使えるようにしておく。

そして、当面使わないお金について、無理のない範囲で資産運用を考える。

退職金は、長年働いてきた自分への大切な贈り物でもあります。

増やすことだけにとらわれず、安心して使い、安心して暮らすために。

50代の今から、退職金の使い道を考え始めてみませんか?

今回のテーマついて質問や相談がある方はみらいマネープランニングにご相談ください。 初回無料相談にてサポートいたします。


新NISA制度や資産形成について基礎から学びたい方は、お金の小学校大分校で一緒に学びませんか?

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三重野徹
専門家

三重野徹(ファイナンシャルプランナー)

みらいマネープランニング

ファイナンシャルプランナーとしてだけでなく公的保険アドバイザーとしても年金や健康保険、介護保険等といった公的な保障をアドバイスし、将来を見据えた「未来設計図」をお客様と一緒に作るお手伝いをしています。

三重野徹プロは大分朝日放送が厳正なる審査をした登録専門家です

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