65歳からは、お金を貯めるより使うことが大切? ― 老後資金を上手に取り崩して、人生を楽しむための考え方

三重野徹

三重野徹

テーマ:老後 年金 

大分で活動しているファイナンシャルプランナーの三重野徹です。

「老後のために、できるだけ貯金しておかないと……」

そう考えて、長年コツコツとお金を貯めてきた方は多いと思います。

住宅ローンを返しながら、子どもの教育費を払い、家計をやりくりして、ようやく迎えた定年。

ところが、いざ年金生活が始まると、こんな悩みが出てくることがあります。

「貯金はあるけれど、減らすのが怖い」

「旅行に行きたいけれど、老後資金を使っても大丈夫?」

「何歳まで生きるか分からないから、できるだけ残しておきたい」

これまで一生懸命貯めてきたからこそ、使うことに不安を感じるのかもしれません。

でも、私はこう考えています。

老後資金は、ただ残すためのお金ではありません。これからの人生を安心して楽しむためのお金です。

今回はシリーズ最終回として、65歳からのお金との付き合い方を考えてみましょう。


「貯める人生」から「使う人生」への切り替え



現役時代は、毎月の給与から生活費を払い、残ったお金を貯蓄や投資に回してきた方が多いでしょう。

つまり、お金を「増やしていく時期」です。

一方、退職後は年金を中心とした生活に変わり、必要に応じて預貯金などを取り崩すことになります。

これは、決して悪いことではありません。

むしろ、老後資金は、取り崩して使うことを想定して準備してきたお金なのです。

ただし、無計画に使ってよいという意味ではありません。

大切なのは、どのくらいなら安心して使えるのかを知ることです。


老後資金2,000万円。毎月いくら使える?



例えば、65歳時点で老後資金が2,000万円あるご夫婦を考えてみましょう。

年金収入は夫婦で月23万円。

毎月の生活費は27万円。

この場合、毎月4万円の不足が生じます。

年間では48万円です。

仮に、この不足額を預貯金から補うとすると、次のようになります。

期間  取り崩す金額  2,000万円からの残額

5年間   240万円    1,760万円

10年間  480万円    1,520万円

20年間  960万円    1,040万円

30年間  1,440万円   560万円

※運用益、物価上昇、税金、医療・介護費用、大きな臨時支出などは考慮しない単純計算です。

いかがでしょうか。

毎月4万円を取り崩しても、単純計算では30年後に560万円が残ります。

もちろん、実際には物価が上がったり、住宅修繕や介護などで大きな支出が必要になったりする可能性があります。

それでも、こうして数字にしてみると、

「貯金を減らすのが怖い」

という漠然とした不安が、少し具体的になりませんか?

お金を使うことが怖いのは、あとどれくらい残るのか分からないから。

だからこそ、老後の家計も見える化することが大切なのです。

老後のお金は「毎月の生活費」と「特別な支出」に分ける



老後資金を考えるとき、私は支出を2つに分けることをおすすめしています。

① 毎月の生活費

食費、光熱費、通信費、日用品、住居費などです。

これらは年金でどのくらい賄えるのかを確認します。

不足する場合は、毎月いくら取り崩す必要があるかを計算します。

② 特別な支出

こちらは毎月ではなく、時々発生する大きな支出です。

例えば、

車の買い替え

自宅のリフォーム

家電製品の買い替え

医療・介護費用

旅行や趣味

などです。

毎月の生活費だけで計算していると、こうした支出を見落としてしまいます。

特に持ち家の方は、住宅ローンが終わっても修繕費用が必要になることを忘れないようにしましょう。

「元気なうちに使う」という考え方



もう一つ、ぜひ考えていただきたいことがあります。

それは、お金には、使うのに適したタイミングがあるということです。

例えば、旅行。

70歳のときに行きたい場所と、85歳になってから行ける場所は、必ずしも同じではありません。

登山や海外旅行、長距離の移動など、体力が必要な楽しみもあります。

「老後が心配だから、もう少し貯金が増えてから」

と思っているうちに、時間が過ぎてしまうこともあります。

もちろん、将来の生活費を確保することは大切です。

でも、将来の安心のために、今の楽しみをすべて我慢する必要はありません。

元気なうちにしかできないことにも、ぜひお金を使っていただきたいと思います。

「使っていいお金」を決めておく



では、どうすれば安心してお金を使えるのでしょうか。

おすすめなのは、老後資金を3つに分けることです。

① 生活を支えるお金

年金で不足する生活費を補うためのお金です。

② 将来に備えるお金

医療・介護、住宅修繕など、予想外の支出に備えるお金です。

③ 人生を楽しむお金

旅行、趣味、家族との時間などに使うお金です。

例えば、年間30万円を「楽しむお金」として確保できれば、

「今年は温泉旅行に行こう」

「夫婦で少し贅沢な食事をしよう」

と、安心して計画を立てやすくなります。

大切なのは、生活に必要なお金と、楽しむためのお金を区別することです。

お金を使うことに罪悪感を持たなくていい



FP相談でも、

「こんなことにお金を使っていいのでしょうか?」

と聞かれることがあります。

でも、お金の使い道に全員共通の正解はありません。

旅行が好きな人。

趣味を楽しみたい人。

家族や孫との時間を大切にしたい人。

地域の活動に参加したい人。

人によって、幸せを感じることは違います。

私は、家計に無理がない範囲であれば、自分が幸せだと感じることにお金を使うことも、大切な老後準備の一つだと思っています。

老後資金は定期的に見直しましょう



ただし、一度計画を立てたら終わりではありません。

老後は、年齢とともに生活が変わります。

65歳では旅行を楽しんでいても、80歳になると医療や介護への支出が増えるかもしれません。

物価や金利、年金額なども変わる可能性があります。

そのため、年に一度は、

「今の資産はいくら?」

「今年はいくら使った?」

「来年、大きな支出はある?」

と確認してみましょう。

必要に応じて取り崩す金額を調整することが、老後資金を長持ちさせるポイントです。

今週やることは、これ1つ



今回は、次の質問について考えてみてください。

「65歳から75歳までの10年間で、やってみたいことは何ですか?」

例えば、

「夫婦で北海道旅行に行きたい」

「友人と温泉巡りをしたい」

「趣味の教室に通いたい」

「孫と旅行したい」

など、どんなことでも構いません。

そして、できれば必要な予算も書いてみましょう。

老後資金の計画は、やりたいことを考えるところから始めてもよいのです。

FPからのワンポイントアドバイス



これまで老後資金の相談では、

「いくら貯めれば安心ですか?」

という質問を多くいただいてきました。

でも、65歳以降は少し視点を変えてみてください。

「いくら残すか」だけでなく、「いくらなら安心して使えるか」

を考えるのです。

そのためには、年金収入、毎月の生活費、預貯金、今後の大きな支出を整理し、将来の資産残高を試算してみることが役立ちます。

ただし、資産の取り崩しには、物価上昇や長生きによる資金不足のリスクもあります。

一つの試算結果だけで安心せず、長生きした場合や支出が増えた場合も考えておきましょう。

老後のお金は、守ることと使うことのバランスが大切です。

まとめ



老後資金は、人生を楽しむために準備してきたお金

今回で「50代から始める 老後準備10年計画」シリーズは最終回です。

これまで、

第1回では、わが家のお金の見える化。

第2回では、55歳からのお金の総点検。

第3回では、60歳以降の働き方。

第4回では、年金の受け取り方。

第5回では、退職金の使い方。

そして今回は、65歳からの老後資金の取り崩し方について考えてきました。

このシリーズを通して、お伝えしたかったことがあります。

それは、老後準備の目的は、お金をたくさん貯めることだけではないということです。

老後に安心して暮らすこと。

自分の好きなことを楽しむこと。

家族や友人との時間を大切にすること。

そして、もしものときにも困らないこと。

そのために、お金の計画を立てるのです。

50代は、まだまだこれからの人生を変えられる時期です。

「貯める・備える・育てる・使う」

この4つのバランスを考えながら、自分らしい老後を準備していきましょう。

老後は、ただ不安に備える時間ではありません。

これまで頑張ってきた自分が、これからの人生を楽しむ時間でもあるのです。

今回のテーマついて質問や相談がある方はみらいマネープランニングにご相談ください。 初回無料相談にてサポートいたします。


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三重野徹
専門家

三重野徹(ファイナンシャルプランナー)

みらいマネープランニング

ファイナンシャルプランナーとしてだけでなく公的保険アドバイザーとしても年金や健康保険、介護保険等といった公的な保障をアドバイスし、将来を見据えた「未来設計図」をお客様と一緒に作るお手伝いをしています。

三重野徹プロは大分朝日放送が厳正なる審査をした登録専門家です

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