ここだけの話ですが、我が家は原発電力たくさん使ってました
いつも断熱職人・塩原真貴の当コラムをご覧いただき、誠にありがとうございます。
今年は長野県内の方にとどまらず、県外の方からも断熱のことや耐震のことについてご相談のお電話やメールを頂戴し、お話しをさせていただいてまいりました。
新築したばかりなのに、お風呂の湯船のお湯が、すごい勢いで冷める、とか窓ガラスの結露がひどくて困っているが何とかならないのか、といったご相談など、そのご相談内容は多岐に渡るのですが、総じてみなさん寒い家に住んでいることへの不満であり、不安でもあり。また老朽化した自宅や実家の住み心地がまったく良くなくて、どうしようか、困ったなぁ。といった事柄です。
私は現場経験が長かったので、施工不良の可能性や、経年劣化といったようなことも含めて「そんなものです」、といった回答をしてしまうときもあります。
もちろん設計上の問題点を指摘する場合もありますし、少しでも程度が柔らくような対策をアドバイスさせていただくこともあります。単なる世間話に終わらせることなく、できるだけ机上の論理にならないような実践的なお話をさせていただいているつもりです。そして長野県内であればできるだけ直接お会いして現地を拝見したり、お悩みを直接聞いていっしょに対策を考えたりしております。
どうぞ来年も本コラムをお読みいただき、皆様のお役に立てていただくことができれば幸いです。
さて、世の流れなのか、たまたまなのか、ここ半年ほどの間、
親との同居あるいは、はなれの増築など、2世帯住宅の新築やリフォームに関するご相談が多く寄せられております。
「両親の家があまりに寒く、使い勝手が悪いので、建て替えるべきかどうか迷っている。水回り+断熱リフォームが妻の同居条件なのだが、アドバイスがほしい」
「親の住む家のとなりにはなれを建てて住むか、はたまたその親の住む家を断熱・耐震リフォームして一緒に暮らした方がいいのか?」
「来年退職するが、まだ元気なうちに今の家を建て替えて、息子夫婦、孫と一緒に住みたいと考えているが、全面的なリフォームだと新築に比べて安くできるのか?その場合だいたいいくらくらいになるのか?」
などなど、老いてゆく親世帯の思惑と、息子(娘)夫婦・子供世帯の思惑が、いい意味で利害が一致したり、代々の土地をやっぱり守ってゆきたいと考える風潮が出てきているのではないか?
1970年代、団塊世代と呼ばれる企業戦士(?)が次々と持家を建て、そこで育った昭和40年代生まれの団塊ジュニア、そしてその子供たち。
この日本の高度成長期を支えた戦争前後で生まれた方々が建てた家が次々に老朽化を迎えているのは確かです。
空き家問題もすでに社会問題になりつつあるのは皆さんもご承知かと思います。
そんなわけで、昭和40年代に建てられた家の現況調査(インスペクション)をする機会がとても多い。
みなさんが嫌がる室内の繊維壁がぽろぽろはがれ、床下や屋根裏に入って状況を確認すると断熱材は入っていないか入っていてもぜんぜん効いていない。
基礎は無筋(鉄筋が入っていない)で、床下は全域潜れないため確認できない。
冬場床は氷のように冷たく、お風呂に入るのにおっくうだし心筋梗塞がこわいので寒い日は絶対に入らない。
サッシにはこの時期拭いても拭いても結露水がつき、朝起きると冷蔵庫のなかのようにびっしり凍って霜柱状態。
そんな苦労話がコタツを挟んだヒアリングのお決まり文句になっています(>_<)
年末年始のこの時期はもうそれはそれは忙しい。
200リットル入る灯油タンクをバッチリ満タンにして、ファンヒーターを5台も6台もフル回転。
おせち料理に布団の準備、大きな炬燵布団やホットカーペット、そしてお年玉をいくらにするか。
孫の受け入れにおじいさんとおばあさんは躍起です。
そして今年も無事家族全員が顔をそろえることができ、ようやく乾杯!
でも、これって、日本の正しい年末年始の姿なのかもしれませんね(笑)
「俺たちが死んだら、お前、この家、どうするんだ?」
酔いが進むとそんな胸の内を子供にぽろり。
「しらない」、「わからない」
最近はそんなわけにもなかなかいかなくなってきている。
親と同居すれば子供たちを見ていてもらえるから、妻ももっと働きに出られる。
土地+建物で新築の場合、いったいいくらかかるんだ?
オヤジはまだ元気だけど、もし死んじまったらオフクロはどうするんだろう?
いっそ新築したらオフクロと一緒に住むか?いやまて、奥さんなんて言うかな?
でもこの家寒くていやだな。でもアパート代払ってるのバカらしいな。
酔った頭で今年もそんなこと考えてる。
そんな団塊ジュニアちゃんがたくさんいるのではないでしょうか?
そんなことで迷っている方、今年は賑やかな宴会のあと、ひっそり兄弟を集めて、
「おい、この家将来どうする?」なんて話をしてみてください。
そうですね、行く年くる年をちらちら見ながらがいいですね(笑)
そしてもしも同居ができる可能性があるんだとしたら、家全体をくまなく探検してみてください。
使っていない部屋、物置になっている、ほらあなたが使っていた学習机がある2階の部屋もくまなく。
余裕があれば畳が何枚分が数えながら。
その家が一体どのくらいの面積なのか?
まずは畳何枚分あるか数えてみてください(*_*)
多分80枚とか100枚なんてこともあるかも。
その畳の数の半分がツボ(坪)数です。
ざっくりですが、そこに暮らす人数×8=必要な面積(坪)という公式があります。
もっと細かく言えば、「人数×7.5=最低必要面積(坪)」ということもできます。
4人家族なら、4×7.5=30坪が必要、という風です。
両親、自分たち夫婦、子供が2人いるなら6人×7.5=45坪=畳90枚
酔っぱらっていては90枚数えるのは無理か・・・?(笑)
そして寒い家、地震に弱い家を、今のその間取りを尊重しての間取り変更、そして風呂、台所なんかの水周りもリフォームしたいならば、おおむねツボ40万円かけて再生できる場合もあるんです。向こう耐用年数は30~40年。つまり自分たちが老いて死ねるだけの耐久性をもつことができて、今の新築並みに暖かく、耐震性も現行建築基準法に合致する程度、お風呂やキッチンはぴヵぴかに、そんなふうにできるかもしれません。いずれにせよしっかりとした事前の調査が必要です!
先ほどの例で45坪あったとすると、45×40=1800万!
これを安いと感じるか高いと感じるかはそれぞれでしょうが、
新築で暖かく地震に強い家をつくろうとすれば坪70万前後が相場だと認識しています。
45×70万=3150万。
そのかわり100年近い耐用年数。
どちらを選ぶかはけっこう私たちの間でも議論がありますが、40歳代になると住宅ローンもけっこうしんどいですから、アパートの家賃並みにしたいところ。月6~8万程度の返済ならば、そんな性能向上リフォームも十分検討に値すると思うのですが( ^)o(^ )
ちなみにこうした大規模なリフォーム工事はたいてい住宅ローンが組めますから、低金利、住宅ローン減税の利用もできることでしょう。ですから両親にお金を出させないで、団塊ジュニアちゃん自らが住宅ローンを組むべきかと思います。親には現金を残してもらった方がいい場合が多いようです。(このあたりは専門家=ファイナンシャルプランナーに相談すべき)
そして政府もそんな風潮を後押しする施策を打ち出してきました。
まずは過日(12/21)発表された業界向けの報道を。
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国土交通省は12月21日、2015年度補正予算案に盛り込まれた第2回「地域型住宅グリーン化事業」の実施にあたり、補助対象グループの追加募集を行うと発表した。募集期間は12月21日から来年1月18日まで。採択結果の通知は予算成立後。既に今年度の事業で採択を受けているグループは新規応募の必要はない。
補正予算分の事業は、第1回「地域型住宅グリーン化事業」を拡充し、地域の住宅供給グループによる長期優良住宅などの整備とそれと同時に行う三世代同居対応工事を支援する。
三世代同居対応住宅の条件は、キッチン、浴室、トイレ、玄関のうち、いずれか2つ以上を住宅内に複数個所設置すること。
国土交通省HPへ
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三世代とは親、子供とその子供(孫)。
いっこうに減らない住宅部門での消費エネルギーも関係しているものと推測できます。
省エネ意識の高まり、省エネ家電の普及も進んではいるはずですが、親との同居をしない、単身赴任や家族バラバラで暮らすことが多くなりつつありますので、一つ屋根の下、1つの家で2世帯が暮らすことはエネルギー消費の観点からも有利であるはずです。
ここ10年間でさまざまなことが変わりました。そして今後も激動することでしょう。
地球温暖化、東北地方の大震災、原子力発電に頼らない社会の構築、TPP参加による輸出入の変化、スマートフォンの普及、自衛隊の動き方、世界的な経済閉塞感、雇用問題、社会福祉・医療費の不足・・・。
そんなさまざまな問題や課題が、家族のありかた、家そのもののあり方をも変えつつあるのだと感じています。
2世帯(3世代)同居型の暮らし方は、未来からの提言でもあるように思えます。
家族みんなが集まる年末年始。
それぞれが1年を振り返り、苦労ばなしやうれしかったことを話し、時には武勇伝を口伝し、叱り、励まし、応援する。
一つのテーブルを囲い、いっしょに酒を飲み顔を見て食事を共にする。
それこそが人生における最も尊いことだと思う団塊ジュニアの私です。
2015年、ありがとうございました。2016年も一生懸命勉強します。
2015.12.30 年の瀬に
断熱職人 塩原 真貴