床はなぜあんなに冷たいのか?
非常にとっつきにくい言葉です、「断熱改修」と「耐震改修」。
より体感的に理解していただくために、なにかいい言葉がないものかと、ずっと以前から考えていました。
しかし、なかなかいい言葉が今のところ見つかっていません・・・。
「断熱改修」は、”冬の室内を、今よりずっと快適に生活するための方法、暖房費を抑える”
「耐震改修」は、”大地震が来た時、自宅が壊れにくくしておき、家族の命を守り生活がそこで続けられるための方法”
そんなことではないかと思います。
よくお客様から「そんなことができるなんて信じられない!」、「すごく高いんでしょ?」、「建て替えちゃったほうがよかった、なんてことにならないの?」というような声を聞きます。
確かに今お住まいの家を建て替えることができればそれに越したことはありません。それに見合うだけのお金と、仮住まいでの生活を半年程過ごす環境さえ整えばそうしたいのはやまやまです。
建築業者側にしてもその方が予算がきちんと読めますし、当然利益もあがるでしょう。建築主に対しても余計な気を遣わなくても済みますし、工程的にも精神的にも楽です。
しかし、そんなことができるのはごく限られた人しかいないことも私は理解しています。これまでそうした限られた方々のために、木造住宅の新築を200軒ほど担当させていただきました。本物の素材や高断熱の技術を駆使して、それなりにご評価いただいてきていると自負してます。そしてそんな技術を応用して、既存住宅も甦らせることはできないだろうか、そんなことを考えていました。
そんな私に、断熱・耐震改修の機会がふと訪れました。今からもう10年近く前のことです。
それは、松本市にある私の実家のリフォーム工事でした。築30年の2階建の木造住宅。ちょうど私が生まれる直前に地元の大工さんによって建てられたものでした。
そのころ私にも娘が生まれ、お盆や年末年始には、兄家族とともにそこで一家が集まっていました。お盆はなんとかなるにしても、年末年始の実家での生活は、とても寒い。これでは幼児も風邪をひいてしまう。帰省したのもつかの間、早々にまた自宅に戻る、ということに。
「おじいちゃんの家は寒くてヤダー」、「お風呂はいりたくない~」、「窓がべちゃべちゃだよ。おばあちゃ~ん」と甥っ子からたびたび耳にしていましたし、自分でもなんとかできないだろうか?と考えていたところでした。
その翌年に、自身初の断熱・耐震同時改修を父親の退職金を使って実施したのですが、
・室内環境が飛躍的に良くなった(室内どこでも20℃前後に)→長生きしてくれそう!?
・以来、年末年始に家族が集合する際は、ほとんど自宅で過ごす。「あのときやっちゃって正解だったね」と毎年褒められる(笑)孫の口からも先の苦言は消えた。
・2011年6月に松本市を襲った震度5強の地震にも無損傷。(花瓶が1本倒れた)
・同規模の住宅を建て替えるだけの予想工事費の約半分で済んだ。
いいことばかりでした。
しかしこの断熱改修工事や耐震改修工事は、やっぱり大変でした。予測しなかったお風呂廻りの白あり被害あり、住みながら改修だったので、生活ゾーンを移動してもらいながらの工程管理など、早急で正確な段取りが当たり前のようにできなくてはなりません。臨機応変に動いてくれる大工さんをはじめ、気心が知れた職人チーム体制も不可欠です。
築30年以上前の住宅は当然ながら気密性・断熱性に劣り、私の暖房エネルギー消費量計算によると、現代の次世代省エネ基準をクリアしたいわゆる高断熱住宅と呼ばれる家の約5倍程度エネルギーを垂れ流しています。言い換えると、「一軒の断熱改修工事をすることは、断熱性能が良い新築住宅を5軒をつくることに匹敵するほど、エネルギーの減少につながる」ということ。
断熱改修をするのであれば当然、外壁や床、窓にも手が加わります。耐震性を高める絶好の機会です。もちろん予算の都合もあると思いますので、100%現行の耐震基準に耐震性能を高めることは無理があるでしょう。まずは毎年訪れる冬の生活が楽になり、灯油や電気・ガスの消費量が減ること。プラス耐震性を高めるためのいろいろな方法を、予算にあわせて複合して工事すること、そんな提案ができればと考えています。
先ずは念入りな調査をしましょう。構造的な欠陥の把握、具体的な断熱改修の進め方、優先順位を持ちながらの予算組みがその最初のステップになります。(しおはら住宅デザイン設計では無料で調査、報告書作成、工事費概算見積を行います)