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鴇田誠治

遺言書作成と相続手続きのプロ

鴇田誠治(ときたせいじ) / 行政書士

社会保険労務士・行政書士 ときた事務所

コラム

債務の相続と遺産分割

2019年2月23日 公開 / 2020年6月30日更新

テーマ:相続のこと

コラムカテゴリ:法律関連

コラムキーワード: 相続 手続き


ある人が亡くなって相続をするときに、相続人はプラスの財産(権利)ばかりでなく、借金などのマイナスの財産(義務)も相続します。

借金を相続した場合は、相続人はその借金を被相続人に代わって返済していかなければならなくなるということです。

それでは「誰が相続して返済していくのか」といったことを具体的にはどのように決めるのでしょうか。

金銭債務は法定相続分で分割される

相続人が複数いる場合には、相続人はその相続分に応じて故人の権利義務を承継することとなります(民法899条)が、
金銭債務のような可分債務も、法定相続分に従って当然に相続(承継)されます。(大判昭和5年12月4日)

例えば、それぞれ3分の1ずつの法定相続分を持つ相続人が3人いる場合に、被相続人に900万円の借金が残っていたとき、各相続人はそれぞれ300万円ずつ借金を負担する義務を負うことになります。

つまり、相続人がいくら話し合って決めたとしても、債権者から相続分に応じて債務を負担するように求められれば拒否できないということです。

相続人のうちの一人がプラスの財産を全部を相続するかわりに、債務も全部支払うという内容の遺産分割協議をしても、
被相続人の債務は遺産分割協議とは無関係に法定相続分で各相続人が相続することになります。

なぜ相続人が自由に決められないのか

プラスの財産と同様に、債務についても誰が相続するか相続人が自由に決めていいような気がします。

ところが、債権者からすると「誰が債務者になってもらっても構わない」とはならないのです。

債権者にとっては、借金を確実に返済してくれる人が相続してもらえればいいですが、相続人間の話し合いで、返済できる資力の無い人にあえて債務を相続させるなど、債権者にとって不利な取り決めをされることも考えられます。

このような取り決めをされてしまうと、債権回収の見込みが立たなくなってしまいます。

つまり、債権者からすると、債務者側が勝手に債権債務の関係を調整できる状態になってしまうといえます。

このようなことから、債務を誰が負担するかについては、債権者の同意なしには自由決められないのが財産法上の原則です。

遺産分割協議で「誰を債務者にするのか」を決めたとしても、債務を引き継ぐ手続き上は、あらためて銀行などの債権者との話し合いをして同意を得ることが必要になります。

相続人間の内部的な取り決めとしては有効

遺産分割協議で、誰が債務を負担するのかについて決めても、債権者の同意がなければ意味がありません。

ところが、相続人間で遺産分割協議を行うとき、一般的には、プラスの財産を誰が相続するか決めるほかに、マイナスの財産を誰が相続するのかを決めています。

相続人間の話し合いで「誰が債務を引継ぐのか」についてハッキリさせておきたいというのは相続人の素直な感情だと思います。

遺産分割協議で誰が債務を相続するかを決めたとしても、そのことを債権者に主張することはできませんが、この決定は、相続人の間では有効です。

「この借金は相続人Aが払うと皆で決めたので、Aに請求してください!」と債権者に主張することはできません。

ただし、債権者から借金返済の通知があったときに、とりあえず相続人A・B・Cがその借金を皆で支払い、B・Cが支払った(立て替え払いした)分を本来遺産分割協議で決定したAに対して請求する、ということは可能です。

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