隣家との「越境」がある実家でも売れる?古い空き家を売却する前に確認したい7つのこと
相続した実家を査定してもらったとき、
「この擁壁はかなり古いですね」
「擁壁の安全性を確認した方がよいかもしれません」
「買主が住宅ローンを利用するときに問題になる可能性があります」
と言われることがあります。
擁壁とは、高低差のある土地で土が崩れることを防ぐために設けられたコンクリートや石積みなどの構造物です。
仙台市内でも、坂のある住宅地や造成された団地では、道路や隣地との間に擁壁がある住宅は珍しくありません。
問題になるのは、その擁壁が、
いつ造られたのか分からない
図面が残っていない
ひび割れている
少し傾いている
石積みになっている
上にブロックが継ぎ足されている
といった状態の場合です。
国土交通省も、老朽化などによって機能が低下した宅地擁壁は、地震時などに倒壊し、宅地や建物だけでなく隣地へ影響を与える可能性があるとして、健全度を確認するためのマニュアルを公開しています。
では、古い擁壁がある実家は売却できないのでしょうか。
結論から言えば、
擁壁があるという理由だけで売却できないわけではありません。
重要なのは、
「擁壁があるか」
ではなく、
「どのような擁壁があり、現在どのような状態で、それが売却にどの程度影響するのか」
を確認することです。
まず「擁壁がある=問題物件」ではない
住宅地では、高低差を処理するために適切な擁壁が設置されている土地は多くあります。
そのため、
「擁壁があるから価値が低い」
と一律に考える必要はありません。
例えば、
道路より敷地が2メートル高い
↓
その高低差を適切な擁壁で支えている
という住宅もあります。
買主が気にするのは、
擁壁そのものの存在よりも、
・安全性に問題がないか
・将来大規模な補修が必要にならないか
・建て替え時にそのまま利用できるのか
・工事する場合にどの程度費用がかかるのか
といった部分です。
築50年の家でも、建物を修繕しながら利用できる場合があるのと同様に、擁壁も「古い」という理由だけで直ちに使用できないと判断するものではありません。
まず現状を確認します。
こんな擁壁は一度確認したい
実家を見たとき、次のような状態があれば写真に残しておくとよいでしょう。
大きなひび割れがある
細かな表面のひびだけでなく、大きく割れていたり、複数箇所に目立つひびがあったりする場合です。
擁壁が膨らんでいるように見える
まっすぐだった壁面が外側へ押し出されているように見える場合があります。
擁壁が傾いている
道路側や隣地側へ傾いているように見える場合です。
水抜き穴から正常に排水されていない
擁壁には、背面にたまった水を排出するための水抜き穴が設けられているものがあります。
土や植物などで詰まっている場合や、大雨後に大量の水が滞留しているような場合は確認が必要です。
石を積んだだけのような擁壁
古い住宅地には石積みの擁壁もあります。
国土交通省は、特に空石積み擁壁や既存擁壁の上へブロックなどを追加した「増し積み擁壁」について、地震時などに被害が確認されている擁壁の例として注意を促しています。
擁壁の上にさらにブロック塀がある
昔の擁壁の上へ後からブロックを積み、高さを増しているケースがあります。
見た目だけで安全性を判断することはできないため、気になる場合は専門家へ確認します。
自分で安全・危険を判断しない
ここで重要なのは、
「ひびがあるから危険」
「50年間倒れていないから安全」
のどちらも、所有者だけで断定しないことです。
擁壁は、
・構造
・高さ
・築造時期
・地盤
・排水
・背面の土
・建物との位置関係
などを含めて評価します。
国土交通省も、一般の住宅所有者が概略的な状態を確認するための「我が家の擁壁チェックシート」を公開していますが、これは専門的な安全性を保証するものではなく、あくまで異常に気付くための目安です。
売却時に問題になりそうな場合は、建築士、擁壁・地盤を扱う専門家、行政などへの確認を検討します。
売却時には何を調べる?
古い擁壁がある実家の場合、最初から大規模な構造調査をする必要があるとは限りません。
まず、手元に資料がないか確認します。
例えば、
・建築確認関係書類
・造成時の図面
・宅地造成に関する許可書類
・擁壁の設計図
・検査に関する資料
・土地購入時の重要事項説明書
・過去の測量図
・擁壁を補修したときの工事資料
などです。
実家を購入した当時の書類一式の中に入っていることもあります。
資料が見つからなければ、
「資料がないから売れない」
ということではありません。
まず不動産会社へ、
「この擁壁について売却前に何を確認する必要がありますか」
と相談します。
そこで必要性が高いと判断された場合に、次の調査へ進みます。
査定前に擁壁を造り直す必要はない
ここは非常に重要です。
古い擁壁を見ると、
「どうせ売るなら先に直した方がいいのでは」
と思うかもしれません。
しかし、擁壁工事は住宅の壁紙を張り替えるような工事とは違います。
高さや長さ、敷地条件、重機が入れるかなどによっては、かなり大きな費用になることがあります。
例えば仮に、
現状の査定価格 1,200万円
擁壁を改修した場合の想定価格 1,500万円
だったとしても、
擁壁工事費 400万円
なら、
売却価格は300万円上がっても、売主の手取りは100万円減る計算になります。
さらに工事期間や設計費なども考える必要があります。
一方、
現状では700万円程度
擁壁問題を整理すれば1,500万円程度
という物件なら、費用をかける意味が出てくる可能性があります。
つまり、
「悪いところを直してから売る」のではなく、「直したら売却条件がどのくらい変わるのか」を先に確認する
ことが重要です。
「現状のまま売る」という選択肢もある
擁壁に不安がある物件でも、その状況を買主へ説明したうえで、現在の状態を前提として売却を検討できる場合があります。
例えば、
土地価格 1,500万円
擁壁改修に相当の費用が見込まれる
↓
そのリスクを価格へ反映して1,100万円で売却
という考え方です。
売主が費用と時間をかけて擁壁を造り直す代わりに、
「購入後の対応は買主側で検討する」
という条件で取引する方法です。
もちろん、どのような擁壁でもこの方法が使えるという意味ではありません。
安全上の問題が大きい場合や、買主が住宅ローンを利用する場合などには、追加の確認や対応を求められることがあります。
重要なのは、
現状売却
調査して売却
補修して売却
買取
を比較することです。
買取業者なら擁壁があっても買ってくれる?
不動産会社などによる買取も選択肢になります。
例えば、
・擁壁が古い
・建物も築50年以上
・家財が大量にある
・境界も不明確
・遠方なので長期間管理できない
という場合です。
一般の住宅購入者に販売すると、擁壁の調査や融資条件などで時間がかかることがあります。
一方、買取事業者であれば、
擁壁
建物
境界
解体
などのリスクを含めて価格を提示できることがあります。
ただし、事業者側が将来必要になる工事費やリスクを見込むため、一般の仲介による売却より価格が下がる可能性があります。
そのため、
「擁壁があるから買取しかない」
ではなく、
仲介ならいくらか
買取ならいくらか
問題を整理した場合はいくらか
を比較します。
誰の擁壁なのかも重要
見落としやすいのが、
その擁壁を誰が所有しているのか
という問題です。
例えば、
自分の土地が高い
↓
自分の土地を支える擁壁
であれば、自分側の構造物と考えられるケースがあります。
一方、
隣地が高く、その土地を支える擁壁が実家との境にある
場合は事情が異なります。
また、擁壁が境界線上にあり、
「どちらが造ったものか分からない」
ということもあります。
この場合は、
・測量図
・境界確認書
・造成時の資料
・土地購入時の契約書
・隣地との覚書
などを確認します。
以前のコラムで取り上げた「境界」や「越境」の問題と一緒に整理する必要があるケースもあります。
擁壁がある土地で建て替えできる?
買主が気にするポイントの一つです。
例えば、購入者が、
「古い実家を解体して、新しい家を建てたい」
と考えている場合です。
現在建物があるからといって、
「同じ条件で必ず新築できる」
とは限りません。
擁壁の安全性や現在の法令、道路・敷地条件などによっては、
擁壁を造り直す
補強する
建物の配置を変える
などの検討が必要になることがあります。
そのため古い実家の査定では、
「中古住宅として使えるか」
だけではなく、
「土地として購入する人が、将来どのように利用できるか」
も価格に影響します。
「擁壁を直すのに数百万円かかる」と言われたら
一社から、
「この擁壁は直さないと売れません」
と言われたとしても、すぐ工事を契約する必要はありません。
まず確認したいのは、
なぜ直す必要があるのか
です。
例えば、
安全上すぐに対応が必要
なのか、
買主が住宅ローンを利用するため
なのか、
更地として高く販売するため
なのかでは、意味が違います。
そして、
現状のまま売るといくらか
調査だけ行うとどうなるか
補修するといくらで売れそうか
造り直した場合の工事費はいくらか
買取ならいくらか
を比較します。
工事費500万円をかけて売却価格が200万円しか上がらないなら、売却だけを目的に工事をする合理性は低くなります。
こんな状態でも、まず相談できます
例えば、
「実家の前に古い石垣のようなものがある」
「擁壁にひびがある」
「親がいつ造ったのか分からない」
「図面が一切残っていない」
「擁壁を直してから売るよう言われた」
「修繕費が高そうなので売却を諦めようか迷っている」
という段階でも構いません。
まず確認したいのは、
擁壁工事をする方法ではなく、その擁壁が実家の売却にどの程度影響しているのか
です。
現状でも購入者を探せるのか。
価格を調整すれば売れるのか。
調査だけすればよいのか。
補修することで大きく価値が上がるのか。
買取の方が手取りと手間の面で有利なのか。
これらを比較してから、費用をかけるか判断します。
まとめ|古い擁壁は「直すかどうか」より先に「売却への影響」を
擁壁がある古い実家を相続したからといって、
「売れない土地だ」
と考える必要はありません。
一方で、
「50年以上何も起きていないから大丈夫」
とも言い切れません。
まず、
擁壁の状態
過去の資料
境界との位置関係
建物との関係
買主がどのように土地を利用するか
を確認します。
そのうえで、
現状のまま売る
専門家に確認してから売る
必要な範囲だけ補修する
擁壁を造り直す
買取を利用する
という選択肢を比較します。
特に避けたいのは、
「売却するなら全部きれいにしておかなければ」と、査定前に高額な工事をしてしまうことです。
空き家売却では、最も高い価格で売ることと、最も多くお金が残ることは同じではありません。
古い擁壁がある実家でも、まず現在の状態のまま、
「この状態なら、どのような売却方法がありますか?」
と確認するところから始めてみてください。
古い擁壁があり、何から確認すればよいか分からない段階でもご相
擁壁の図面がない、築造時期が分からない、ひび割れが気になるなど、所有者自身で判断できない状態でも構いません。
先に工事を依頼するのではなく、まず売却・保有・解体・活用のどの方向を考えるのか、そのためにどこまで調査や対応が必要なのかを整理します。
株式会社Blue Keyでは、宮城県内の空き家・相続不動産について、売却・賃貸・管理・解体・活用を比較しながら、今後の方針を整理しています。
売却を決めていない段階でもご相談いただけます。
空き家相談専用ページはこちら
https://www.bluekey-sendai.com/akiya/
※本コラムは、宅地擁壁と空き家・相続不動産の売却について一般的な情報をまとめたものです。擁壁の安全性、法令への適合性、補修・再築造の必要性、建て替えの可否などは、擁壁の構造、敷地、地盤、所在地、建築計画などによって異なります。具体的な判断については、行政機関、建築士、地盤・擁壁の専門家、不動産会社などへご確認ください。


