隣家との「越境」がある実家でも売れる?古い空き家を売却する前に確認したい7つのこと
相続した実家を売却しようとしたところ、
「家の前の道路が私道でした」
「私道の持分を持っていないと言われた」
「道路は使っているのに、土地の名義が他人になっている」
ということがあります。
特に昔からある住宅地や、細い道路の奥に建っている古い実家では、普段道路として使っていても、その土地が市道や県道ではなく、個人や複数の住民が所有する私道というケースがあります。
さらに調査すると、
「実家の土地には私道持分がない」
ことが判明する場合もあります。
すると、
「私道持分がないと売却できないのか」
「住宅ローンが使えないのではないか」
「道路所有者から持分を買わなければならないのか」
と不安になる方も少なくありません。
結論から言えば、
前面道路が私道、あるいは私道持分がないからといって、直ちに売却できないと決まるわけではありません。
ただし、
・その道を通行できる根拠
・建て替えができる道路なのか
・水道や下水道工事ができるのか
・買主が住宅ローンを利用できるのか
などを確認する必要があります。
今回は、相続した実家の前面道路が私道だった場合に確認したい7つのポイントを整理します。
1.「私道」と「建築基準法上の道路」は別に確認する
まず最初に整理したいのが、
「私道だから建て替えできない」
とは限らないということです。
道路には、
・国道
・県道
・市道
などの公道だけでなく、個人や法人が所有する私道があります。
一方、建物を建築できるかどうかを判断するときには、その道が建築基準法上どのように扱われているのかを確認します。
つまり、
「誰が所有している道路か」
と、
「建築基準法上の道路として認められているか」
は別の問題です。
私道であっても建築基準法上の道路として扱われている場合があります。
反対に、見た目は道路であり、長年車や人が通っていても、建築基準法上の道路として扱われていないこともあります。
そのため査定時には、
「私道ですか?」
だけではなく、
「建築基準法上はどの種類の道路ですか?」
まで確認することが重要です。
2.私道の「所有者」と「持分」を確認する
次に確認するのが、私道部分を誰が所有しているのかです。
例えば、住宅地内の私道を、
Aさん 4分の1
Bさん 4分の1
Cさん 4分の1
Dさん 4分の1
という形で共有しているケースがあります。
このような道路に面した実家を相続した場合、実家の土地と一緒に私道持分も相続している可能性があります。
一方で、
実家の土地は親名義
私道部分は近隣住民だけの共有
となっており、実家所有者には持分がない場合もあります。
確認するときは、
・実家の土地の登記事項証明書
・道路部分の登記事項証明書
・公図
・売買契約書
・重要事項説明書
などを確認します。
昔の売買契約書に、
「私道持分○分の○を含む」
と記載されていることもあります。
親世代が購入した当時の書類が残っている場合は、古いからと処分せず確認してみましょう。
3.私道持分がなくても、長年通行しているケースがある
私道持分がない実家でも、何十年にもわたりその道路を使って生活している場合があります。
例えば、
道路
↓
私道
↓
実家
という配置で、実家へ行くためには必ずその私道を通らなければならないケースです。
この場合、
「持分がないから明日から道路を一切使えない」
と単純に判断できるものではありません。
道路ができた経緯、土地の分譲時の契約、通行に関する合意、登記、これまでの使用状況などによって確認すべき内容が変わります。
重要なのは、
「昔から普通に使っているから大丈夫」だけで売却を進めないことです。
現在の所有者同士では問題になっていなくても、所有者が変われば買主や金融機関から、
「将来も通行できる根拠は何ですか?」
と確認される可能性があります。
査定時には、
・私道持分があるか
・通行について書面があるか
・過去の契約書に記載があるか
・近隣と何か取り決めがあるか
を確認します。
4.「通行」だけでなく水道・下水道工事も確認する
私道問題で見落としやすいのが、
「通れるかどうか」
だけを確認してしまうことです。
住宅では、将来的に、
・水道管の交換
・下水管の工事
・ガス管の工事
・電気設備の工事
などが必要になる可能性があります。
その際、私道部分を掘削しなければならないことがあります。
現在問題なく生活できていても、
「道路を通ること」
と、
「道路を掘って工事をすること」
は同じではありません。
買主が中古住宅を購入した後に、
「給水管を交換したいが、私道の工事について確認が必要だった」
となれば、購入判断に影響することがあります。
そのため私道に面した空き家では、
・上下水道管がどこを通っているか
・私道部分を通っているのか
・過去に工事承諾書などがあるか
・今後工事する場合に何を確認する必要があるか
まで整理しておくとよいでしょう。
5.私道持分がないと住宅ローンに影響することがある
空き家を仲介で売却する場合、買主が住宅ローンを利用することがあります。
金融機関は、
・土地
・建物
・接道
・権利関係
などを確認したうえで融資判断を行います。
私道持分がなく、通行や工事について不明確な部分がある場合、金融機関から追加資料や確認を求められることがあります。
その結果、
「物件自体は気に入ったが、住宅ローンが難しかった」
となれば、購入できる人が限定される可能性があります。
ただし、
私道持分がない=住宅ローンが絶対に使えない
と決まっているわけではありません。
道路の状態、通行・掘削に関する権利関係、金融機関の審査基準などによって異なります。
そのため、
「住宅ローンは無理でしょう」
と所有者だけで判断せず、不動産会社を通じて物件条件を整理することが重要です。
6.持分を買う・承諾書を取る前に、売却への影響を確認する
私道持分がないことが分かると、
「道路所有者から持分を買った方がよいのでは?」
と考えることがあります。
また、
「通行・掘削承諾書を取ってから売却しよう」
という話になる場合もあります。
それによって売却しやすくなるケースはあります。
しかし、最初から自分で近隣へ交渉するのは慎重にした方がよいでしょう。
例えば、
「家を売りたいので、道路を使わせてください」
と突然話を持ちかけたことで、これまで問題のなかった近隣関係が複雑になる可能性もあります。
また、私道持分を取得する場合も、
・所有者が売却してくれるか
・いくらで購入するのか
・測量が必要か
・登記費用はいくらか
・取得することで売却価格がどの程度変わるか
を確認する必要があります。
例えば、
現状の売却見込み 700万円
私道問題整理後 850万円
だったとしても、
持分取得・測量・登記など 100万円
が必要であれば、実際の手取りの差は50万円程度になります。
重要なのは、
「問題は全部解消してから売る」
ことではなく、
「費用をかけて解消する価値がある問題なのか」
を先に確認することです。
7.一般の買主だけでなく買取も比較する
私道持分や道路関係に問題がある物件では、通常の住宅売却より買主が限定される場合があります。
その場合は、
一般の購入希望者を探す仲介
だけではなく、
不動産会社などによる買取
も比較します。
買取事業者であれば、
・私道
・接道
・境界
・未登記
・古い建物
などの問題を把握したうえで、購入条件を提示できる場合があります。
もちろん、その分リスクや対応費用を見込むため、買取価格は仲介による成約価格より低くなることがあります。
例えば、
仲介想定 1,000万円
買取 750万円
であれば、250万円の差があります。
しかし仲介するために、
・私道問題の整理
・測量
・登記
・家財処分
・長期間の管理
などが必要であれば、最終的な差は小さくなることがあります。
ここでも、
販売価格ではなく最終的な手取りと時間
で比較することが重要です。
「私道だから価値が低い」とは限らない
前面道路が私道だと聞くと、
「普通の土地より価値が低いのでは?」
と思うかもしれません。
しかし、住宅地では私道に面した土地自体は珍しいものではありません。
重要なのは、
・道路として問題なく利用できるか
・建て替えに問題がないか
・持分はあるか
・通行や掘削に問題がないか
・住宅ローン利用に影響があるか
です。
私道というだけで、
「売れない土地」
と判断する必要はありません。
反対に、きれいな舗装道路に見えても、権利関係を調べると問題が見つかることがあります。
見た目ではなく、資料と行政調査をもとに判断します。
私道の維持管理費も確認する
私道を複数の所有者で共有している場合、
・舗装補修
・側溝清掃
・除雪
・道路設備の補修
などを住民で負担していることがあります。
親が長年住んでいた実家の場合、
「近所で集めていた道路修繕費」
について、相続した子どもが知らないこともあります。
売却する前に、
・管理組合や自治会があるか
・道路維持費を負担しているか
・過去に修繕したことがあるか
・特別な取り決めがあるか
も確認しておきます。
小さな金額であっても、買主にとっては住宅購入後の継続的な負担になります。
実家の前の道路について確認したい資料
私道の可能性がある場合は、次の資料を探してみましょう。
・土地の登記事項証明書
・私道部分の登記事項証明書
・公図
・地積測量図
・購入時の売買契約書
・重要事項説明書
・私道に関する覚書
・通行承諾書
・掘削承諾書
・上下水道の配管図
・昔の分譲図
すべて揃っていなくても構いません。
まずは、
「何があり、何がないのか」
を整理します。
査定時に聞きたい10の質問
前面道路が私道の実家を売却するときは、不動産会社へ次の質問をしてみてください。
1.前面道路は公道ですか、私道ですか
2.建築基準法上はどのような道路ですか
3.私道部分の所有者は誰ですか
4.実家には私道持分がありますか
5.持分がない場合、通行する根拠は確認できますか
6.上下水道管はどこを通っていますか
7.将来工事するとき、私道所有者への確認が必要ですか
8.住宅ローンを利用する買主への影響はありますか
9.現状のまま売却する場合の想定価格はいくらですか
10.問題を整理した場合と買取の場合で、条件はどう変わりますか
こんな状態でも、まず相談できます
例えば、
・家の前が私道らしい
・誰が道路を所有しているのか分からない
・私道持分があるか分からない
・親から「昔から普通に通っている」としか聞いていない
・通行承諾書などが見つからない
・私道問題を直してから売るべきか分からない
という段階でも、最初から所有者自身ですべて調査する必要はありません。
まず、
土地の登記
道路の登記
公図
行政上の道路情報
過去の契約書
などを確認し、
「売却するうえで、本当に何が問題なのか」
を整理します。
問題があることと、
費用をかけて売主側で解決しなければならないこと
は同じではありません。
現状のまま売る方がよい場合もあれば、一定の問題を整理することで売却条件が大きく改善する場合もあります。
まとめ
相続した実家の前面道路が私道だったり、私道持分がなかったりしても、直ちに売却できないとは限りません。
まず確認したいのは次の7点です。
1.私道と建築基準法上の道路を分けて確認する
2.私道の所有者と持分を調べる
3.持分がない場合は通行の根拠を確認する
4.通行だけでなく上下水道などの工事も確認する
5.住宅ローンへの影響を確認する
6.持分購入や承諾書取得に先に費用をかけない
7.仲介と買取の両方を比較する
私道問題で大切なのは、
「持分がないから売れない」
と所有者だけで判断しないことです。
実際には、
道路の種類
所有関係
これまでの経緯
通行・掘削条件
想定する買主
などを確認して初めて、売却への影響が分かります。
また、問題をすべて解消してから査定を受ける必要もありません。
まず現在の状態で、
「このままならいくらで売れそうか」
「何を整理すれば条件が改善するか」
「そのためにいくら必要なのか」
を比較してみましょう。
私道・接道の状況が分からない段階でもご相談いただけます
「家の前が私道らしい」
「持分があるか分からない」
「道路の書類が何も残っていない」
という段階でも構いません。
先に持分を購入したり、近隣へ承諾を求めたりする前に、まず売却上どの部分を確認する必要があるのかを整理します。
株式会社Blue Keyでは、宮城県内の空き家・相続不動産について、売却・賃貸・管理・解体・活用を比較しながら、今後の方針を整理しています。
売却を決めていない段階でもご相談いただけます。
空き家相談専用ページはこちら
https://www.bluekey-sendai.com/akiya/
※本コラムは、私道・私道持分・接道・空き家売却について一般的な情報をまとめたものです。通行や掘削に関する権利関係、建築基準法上の道路判定、建て替えの可否、住宅ローンの審査などは物件ごとに異なります。具体的な不動産取引については不動産会社、道路・建築については行政機関や建築士、登記・境界については土地家屋調査士・司法書士、法的な権利関係については弁護士などへご確認ください。


