築50年の実家はいくらで売れる?「建物価値ゼロ」と言われても諦める前に確認したい7つのこと
お盆の帰省中に親や兄弟と実家の将来について話していると、次のような疑問が出ることがあります。
「まだ親が住んでいるのに、査定を受けるのは失礼ではないか」
「査定を頼んだら、そのまま売らなければならないのか」
「親に内緒で、子どもだけが価格を確認してもよいのか」
「査定額を知ると、親が家を追い出されるように感じないか」
実家の査定を受けることは、直ちに売却を決めることではありません。現在の価値や、売却・賃貸・管理・解体・活用の可能性を比べるための情報収集です。
一方で、実家が親名義である以上、家族だからという理由だけで子どもが売却を決めたり、契約を進めたりすることはできません。親の意思を尊重し、査定の目的と利用範囲を家族で共有する必要があります。
国土交通省も、放置空き家の発生を防ぐため、所有者が元気なうちから住まいの情報や将来の希望を家族で共有することを勧めています。
今回は、親が元気なうちに実家の査定を受ける意味と、依頼前に確認したい7つのポイントを解説します。
結論|査定は「売る決断」ではなく「選択肢を比較する材料」
実家の査定を受けても、必ず売却しなければならないわけではありません。査定書を受け取っただけで、媒介契約や売買契約が成立することもありません。
査定によって把握できるのは、主に次のような情報です。
・現状のまま売却する場合の価格の目安
・建物を残した場合と土地として売る場合の考え方
・周辺でどのような不動産が取引されているか
・売却しやすい点と、売却の障害になりそうな点
・家財、修繕、測量、解体などに費用がかかる可能性
・賃貸や事業利用を検討できる立地か
・保有を続けた場合の管理負担と比較すべき事項
価格が分からないまま家族で話していると、「高く売れるはず」「古いから価値はない」といった感覚的な意見がぶつかりやすくなります。
査定は、その議論を具体的な数字と物件条件に置き換えるための材料です。
ただし、査定額は将来の成約価格を保証する数字ではありません。
査定の目的は、高い数字を一つ得ることではなく、家族が実家の今後を考えるために必要な情報を集めることです。
1.親に「売却の話ではなく、現状を知るため」と伝える
親へ査定の話を切り出す際、最初から「売ったらいくらになるか調べたい」と伝えると、家を手放すことを迫られているように感じる場合があります。
まずは、査定を受ける目的を明確に伝えます。
例えば、次のような言い方です。
・すぐに売る話ではなく、将来の選択肢を知っておきたい
・この家を残す場合、どの程度の管理や修繕が必要か考えたい
・売却、賃貸、活用のどれが現実的か比べたい
・親の希望を実現するために、現在の状態を把握しておきたい
・兄弟が思い込みだけで判断しないよう、客観的な資料を用意したい
親にとって重要なのは、査定後に自分の意思を無視して売却が進むことがないと分かることです。
「査定を受けても売らない選択ができる」
「最終的な方針は親の希望を聞いてから決める」
と伝えたうえで、同意を得て進める方が、その後の家族会議も円滑になります。
2.実家の所有者と意思決定をする人を確認する
実家に親が住んでいても、土地と建物が親一人の名義とは限りません。
土地は父親、建物は母親、土地の一部は祖父名義という場合もあります。
査定前に、少なくとも次の点を確認します。
・土地と建物の名義人
・共有名義になっている場合の共有者と持分
・亡くなった祖父母などの名義が残っていないか
・住宅ローンや抵当権が残っていないか
・親が将来の売却や活用について、どのような希望を持っているか
子どもというだけで、親名義の不動産を売却できるわけではありません。
所有者本人が契約するか、本人から適切な代理権を与えられた人が手続きを行う必要があります。
査定の段階でも、所有者に無断で室内へ立ち入らせたり、写真や個人情報を不動産会社へ渡したりすることは避けるべきです。
まずは親へ目的を説明し、どこまで調べることに同意しているのかを確認しましょう。
3.子どもだけで相談できる範囲を理解する
親がまだ査定に抵抗を感じている場合でも、子どもが不動産会社へ一般的な相談をすることはできます。
例えば、次のような相談です。
・地域の不動産相場や取引傾向を聞く
・空き家になった場合の管理方法を聞く
・売却、賃貸、解体に必要な一般的な流れを確認する
・査定に必要な資料や確認事項を聞く
・親へどのように説明すればよいか整理する
一方、個別物件について精度の高い査定を行うには、所在地、土地面積、建物面積、築年数、接道状況、室内外の状態などの情報が必要です。
訪問査定では敷地や建物内の確認も行うため、所有者の了承を得ることが基本です。
最初は「この地域の実家について、将来の選択肢を知りたい」という一般相談から始め、親の同意が得られた段階で具体的な査定へ進む方法もあります。
4.机上査定と訪問査定を使い分ける
不動産会社による一般的な売却査定には、机上査定と訪問査定があります。
机上査定
所在地、面積、築年数、周辺の成約事例、公示地価などの資料をもとに、現地を詳しく確認せず価格の目安を出す方法です。
まだ親の意向が固まっていない、売却するか分からない、まず大まかな価格帯だけ知りたいという段階に向いています。
ただし、建物の劣化、庭や擁壁、越境、接道、室内の状態などを反映しきれないため、実際の売却条件と差が出る可能性があります。
訪問査定
不動産会社が現地を訪れ、土地の形状、道路、境界、周辺環境、建物の維持状態、設備、間取りなどを確認して査定する方法です。
売却や賃貸を具体的に検討する段階では、訪問査定の方が現実的な価格や課題を把握しやすくなります。
お盆の帰省中に親の同意が得られた場合でも、急いで当日に不動産会社を呼ぶ必要はありません。
まず家族で建物の状況や希望を共有し、後日、親または家族が立ち会える日を設定してもよいでしょう。
5.査定前に準備したい資料と情報
書類がすべて揃っていなくても、査定を相談できる場合はあります。
ただし、資料が多いほど、権利関係や建物の状況を確認しやすくなります。
可能であれば、次のものを準備します。
・固定資産税の納税通知書・課税明細書
・登記済権利証・登記識別情報通知
・土地・建物の登記事項証明書
・購入時の売買契約書・重要事項説明書
・建築確認済証・検査済証・建物図面
・測量図・境界確認書
・修繕・リフォームの記録
・住宅ローンや抵当権に関する資料
・雨漏り、シロアリ、設備故障など把握している不具合
・土地や建物を貸している場合の契約書
家財が残っていても、査定前にすべて片付ける必要はありません。
まずは貴重品、重要書類、家族が残したい物を取り出し、現状を見てもらってから片付けの範囲を判断する方が、不要な費用を避けやすくなります。
建物の修繕履歴や不具合については、良い情報だけでなく、分かっている問題も正確に伝えます。
査定額を高くするために不具合を隠すと、後の売却時にトラブルにつながる可能性があります。
6.査定額の高さではなく、根拠を確認する
複数の不動産会社へ査定を依頼すると、提示される金額に差が出ることがあります。
このとき、最も高い査定額を出した会社が、必ず最も高く売ってくれるとは限りません。
査定額は、不動産会社が市場動向や物件条件をもとに示す価格の意見であり、買主がその金額で購入することを保証するものではないためです。
宅地建物取引業者が、媒介契約の場面で売買すべき価額について意見を述べるときは、その根拠を明らかにすることが求められています。
査定を受けた際は、数字だけでなく、次の説明を確認します。
・どの成約事例を参考にしたか
・売出中の物件ではなく、実際の成約価格をどう見ているか
・土地と建物をどのように評価したか
・接道、地形、駐車場、境界などをどう反映したか
・建物の修繕や維持状態をどう評価したか
・売出価格と成約見込み価格を分けているか
・売却までの想定期間はどの程度か
・値下げが必要になる場合の考え方
国土交通省の不動産情報ライブラリでは、不動産の取引価格、地価公示、都市計画、防災、周辺施設などの情報を確認できます。
所有者自身が周辺情報を確認し、不動産会社の説明と大きなずれがないかを見ることもできます。
なお、宅地建物取引業者による売却査定は、不動産鑑定士が作成する不動産鑑定評価書とは別のものです。
査定書の用途や必要な精度によって、どの専門家へ依頼するかを判断する必要があります。
7.査定後は売却以外の方法も同じ条件で比較する
査定額が分かったからといって、すぐに売却する必要はありません。
むしろ、査定結果を使って次の選択肢を比べることが大切です。
売却する場合
・想定売却価格と手取り額
・家財処分、測量、修繕、解体などの費用
・売却までの期間
・税務上の確認事項
賃貸する場合
・想定賃料
・入居前の修繕費
・空室、設備故障、管理委託の負担
・改修費を回収するまでの期間
保有・管理する場合
・固定資産税、保険料、光熱費
・草刈り、巡回、修繕の費用
・誰が管理するか
・いつまで保有するか
解体する場合
・解体費と家財処分費
・更地にした後の売却・利用方法
・固定資産税への影響
・補助制度の対象になるか
活用する場合
・住宅、店舗、事務所、福祉、宿泊などの需要
・建築・消防・許認可上の条件
・改修費と運営費
・誰が事業を担うか
売却査定は、これらを比較するための基準の一つです。
例えば、今売った場合の手取り額と、今後5年間保有した場合の管理費を比べることで、家族の判断は具体的になります。
Blue Keyでは、売却価格だけを示して終わるのではなく、物件の状態や家族の意向を確認し、賃貸・管理・解体・活用も含めて整理することを重視しています。
査定を依頼する会社へ確認したい質問
査定を受ける際は、次の質問をしてみましょう。
・この査定額の根拠となった成約事例は何ですか
・建物を残して売る場合と、更地にする場合でどう変わりますか
・家財を残したまま売却できる可能性はありますか
・修繕やリフォームを先に行う必要がありますか
・仲介と買取では、価格と期間がどう違いますか
・売れなかった場合、どの時点で価格を見直しますか
・賃貸や事業利用の需要はありますか
・査定後に売却しない場合、何か費用や義務はありますか
査定額だけを伝え、根拠や物件の課題を十分に説明しない会社よりも、売却しない可能性も含めて選択肢を説明する会社の方が、実家じまいの初期相談には適しています。
親の判断能力が低下している場合は、勝手に進めない
親が認知症などにより、売却の内容や結果を十分に理解して判断することが難しい場合、子どもが代わりに署名すればよいわけではありません。
判断能力が不十分な人の財産管理や契約を支援する制度として、成年後見制度があります。
また、本人が十分な判断能力を有するうちに、将来の代理人と委任する事務を公正証書で定める任意後見制度もあります。
成年後見人等が本人の居住用不動産を売却する場合には、家庭裁判所の許可が必要です。
現在は施設へ入所していて住んでいなくても、将来戻る可能性がある住宅が居住用不動産に含まれる場合があります。
親の判断能力に不安がある場合は、不動産会社だけで進めず、司法書士、弁護士、地域包括支援センターなどへ早めに相談してください。
査定だけを先に取得する場合も、何のために必要なのか、誰が本人の意向を確認するのかを整理することが重要です。
お盆の帰省中にできる現実的な進め方
お盆の数日間ですべてを決める必要はありません。
次の順番で進めると、親の負担を抑えながら情報を整理できます。
1.親に、実家を将来どうしてほしいか聞く
2.土地・建物の名義と固定資産税の資料を確認する
3.建物の外観、室内、庭、道路を写真に残す
4.雨漏りや設備故障など、分かっている問題を記録する
5.家族で査定を受ける目的を決める
6.まずは机上査定または一般相談を依頼する
7.必要であれば親の同意を得て訪問査定を受ける
8.査定結果を売却・賃貸・管理・解体・活用の比較に使う
9.次に話し合う日と、資料を集める担当者を決める
この日のゴールは、売却を決めることではありません。
「誰が、いつまでに、何を確認するか」を一つ決められれば、実家じまいは前へ進みます。
まとめ
親が元気なうちに実家の査定を受けることは、家を手放す決定ではありません。
実家の現在地を把握し、親の希望を実現できる方法を家族で考えるための情報収集です。
査定前には、次の7点を確認しましょう。
1.査定は売却の決定ではないと親へ説明する
2.土地・建物の所有者と親の意思を確認する
3.子どもだけで相談できる範囲を理解する
4.机上査定と訪問査定を使い分ける
5.権利関係、建物、修繕に関する資料を準備する
6.査定額の高さではなく、根拠と売却見込みを確認する
7.売却だけでなく、賃貸・管理・解体・活用も比較する
親に内緒で売却の準備を進めるのではなく、「この家を将来どうしてほしいか」を聞き、その希望を数字と選択肢に置き換えるために査定を利用することが大切です。
お盆の帰省をきっかけに、まずは「すぐに売るわけではないけれど、今の価値と選択肢だけ一緒に確認してみない?」と話してみてはいかがでしょうか。
株式会社Blue Keyでは、宮城県内の空き家・相続不動産について、売却・賃貸・管理・解体・活用を比較しながら、今後の方針を整理しています。
売却を決めていない段階でもご相談いただけます。
空き家相談専用ページはこちら
https://www.bluekey-sendai.com/akiya/
※本コラムは、実家の査定、売却、代理、成年後見などに関する一般的な情報をまとめたものです。所有関係、本人の意思能力、代理権、必要な許可、税務上の取扱いなどは個別の状況によって異なります。具体的な契約や手続きについては、不動産会社、司法書士、弁護士、税理士、家庭裁判所などへご確認ください。
参考情報
国土交通省「住まいのエンディングノートについて」
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_fr3_000054.html
国土交通省「価格査定マニュアルについて」
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001883957.pdf
国土交通省「不動産情報ライブラリ」
https://www.reinfolib.mlit.go.jp/
法務省「成年後見制度・成年後見登記制度」
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji95.html
裁判所「成年被後見人等の居住用不動産の処分についての許可」
https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_25_04/index.html


