古い空き家は解体した方がよい?建物を残す場合と更地にする場合の比較
店舗物件を募集しているものの、何か月経っても問い合わせが入らない場合、
「家賃が高いのではないか」
「もっと賃料を下げなければ決まらない」
「この地域には出店需要がない」
と考えることがあります。
確かに、募集賃料が周辺相場や物件の条件に合っていなければ、賃料の見直しは必要です。
しかし、空き店舗に借り手が見つからない原因は、家賃だけとは限りません。
建物の状態、設備、駐車場、契約条件、募集方法、想定する業種などに問題がある場合、賃料を下げても問い合わせが増えないことがあります。
今回は、空き店舗の家賃を下げる前に、所有者が確認したい7つのポイントを解説します。
1.誰に借りてほしい物件なのかが明確になっているか
空き店舗を募集する際、
「飲食店でも物販でも事務所でも、借りてくれるなら何でもよい」
と考える所有者は少なくありません。
しかし、幅広い業種を対象にしたつもりでも、募集情報が曖昧になり、どの事業者にも選ばれにくくなることがあります。
例えば、飲食店を誘致する場合は、次の条件が重要です。
* 給排水設備
* ガス容量
* 電気容量
* 排気設備やダクト
* グリストラップ
* 厨房設備
* 臭気や騒音への対応
* ごみ置場
* 駐車場
* 営業時間の制限
一方、事務所、物販店、美容室、福祉施設、学習塾などでは、必要な設備や立地条件が異なります。
そのため、まずは物件の特徴を整理し、
「飲食店に向いている」
「予約制の美容・サービス店舗に向いている」
「事務所やスクールとして使いやすい」
「郊外型の物販店に向いている」
といった想定業種を明確にする必要があります。
すべての業種に向けて募集するよりも、物件と相性のよい事業者へ情報を届ける方が、成約につながりやすくなります。
2.賃料以外の初期費用が重くなっていないか
出店者が負担する費用は、毎月の家賃だけではありません。
一般的には、次のような初期費用が発生します。
* 保証金や敷金
* 礼金
* 前家賃
* 仲介手数料
* 保証会社の費用
* 火災保険料
* 内装工事費
* 設備工事費
* 看板工事費
* 許認可の申請費用
* 開業までの人件費や広告費
例えば、家賃が周辺相場の範囲内であっても、保証金が高額で、設備もほとんど残っていなければ、出店者の初期負担は大きくなります。
反対に、賃料が多少高くても、厨房、空調、トイレ、照明などを再利用できれば、初期投資を抑えられる場合があります。
所有者側は家賃だけを見がちですが、出店者は、
「営業を開始するまでに総額でいくら必要か」
を見ています。
問い合わせが少ない場合は、賃料だけでなく、保証金、礼金、工事費、設備費を含めた初期費用全体を確認する必要があります。
3.スケルトンと居抜きのどちらが適しているか
空き店舗の引き渡し状態には、大きく分けてスケルトンと居抜きがあります。
スケルトン
内装や設備を撤去し、建物の構造体に近い状態で引き渡す方法です。
出店者が自由に設計しやすい一方、内装、電気、給排水、空調などの工事費が高額になる可能性があります。
居抜き
前の店舗が使用していた内装、厨房、空調、什器などを残した状態で引き渡す方法です。
同業種の出店者であれば初期費用を抑えられますが、設備の所有権、故障、撤去、原状回復などの条件を整理する必要があります。
古い設備が多く残っているだけの状態は、必ずしも居抜きのメリットにはなりません。
使用できない厨房機器、故障した空調、汚れた内装などが残っていると、出店者にとっては撤去費用が増えるだけです。
募集前に、
* 再利用できる設備
* 修理が必要な設備
* 撤去した方がよい設備
* 所有権が不明確な設備
を整理することが重要です。
「設備付き」と記載する場合も、設備の年式、状態、故障時の修理負担を明確にしておく必要があります。
4.物件の状態が出店後の姿を想像しにくくしていないか
店舗物件は、住宅以上に第一印象が重要です。
次のような状態では、内覧前に候補から外される可能性があります。
* 店内に不用品や残置物が多い
* 照明が点かず、室内が暗い
* 窓や入口が汚れている
* 雑草やごみが放置されている
* 看板や前店舗の表示が残っている
* トイレや水回りの状態が分からない
* 図面や設備情報が掲載されていない
* 写真が少ない、または古い
* 駐車場の位置や台数が分からない
大規模なリフォームをしてから募集する必要はありません。
しかし、清掃、照明の点灯、不用品の撤去、草刈り、設備の確認など、物件を正しく評価してもらうための準備は必要です。
空き店舗の写真を掲載する場合は、店内だけでなく、次の情報も見せると利用方法を想像しやすくなります。
* 建物の外観
* 店舗の入口
* 前面道路
* 駐車場
* 店内全体
* 厨房や給排水設備
* トイレ
* バックヤード
* 看板を設置できる場所
* 周辺施設
写真だけでは伝わりにくい場合は、店内を歩いて撮影した短い動画や、平面図を用意する方法もあります。
5.契約条件が事業者の出店計画と合っているか
店舗の契約では、賃料以外にも確認される条件があります。
* 契約期間
* 普通建物賃貸借か定期建物賃貸借か
* 中途解約の可否
* 解約予告期間
* 原状回復の範囲
* 看板設置の可否
* 営業時間
* 業種制限
* 改装工事の承認条件
* 修繕費の負担
* 駐車場の使用条件
* 転貸や事業譲渡の可否
例えば、出店者が多額の内装工事費を負担するにもかかわらず、契約期間が短く、中途解約の条件も不明確であれば、投資を回収できるか判断できません。
定期建物賃貸借は、契約で定めた期間の満了によって、更新されることなく契約が終了する制度です。契約終了時期を明確にできる一方、借主側は契約期間内に投資を回収できるかを慎重に判断します。貸主と借主が合意すれば、期間満了後に再契約することは可能です。
所有者にとって有利な条件だけを設定すると、出店者にとって事業リスクが高くなり、候補から外される可能性があります。
契約条件は、所有者の資産管理と出店者の事業継続の双方を考えて設計する必要があります。
6.用途変更や許認可の問題を確認しているか
借り手が希望する業種によっては、建築、消防、保健所などへの確認が必要です。
例えば、住宅や事務所として使用されていた建物を、飲食店、福祉施設、宿泊施設などへ変更する場合、用途変更や消防設備の追加が必要になる可能性があります。
既存建築物の活用については、建物の安全性を確保しながら、用途変更や増改築に関する建築基準法上の確認が必要です。国土交通省も、既存建築物を別用途へ活用する際の制度や現況調査の考え方を案内しています。
また、飲食店、美容所、福祉施設、宿泊施設などは、それぞれ別の許認可や設備基準があります。
募集段階ですべての業種の許可を保証することはできません。
しかし、少なくとも、
* 建物の現在の用途
* 用途地域
* 建築確認や検査済証の有無
* 消防設備
* 給排水設備
* 電気やガスの容量
* 過去の使用業種
を整理しておけば、出店希望者が事業計画を検討しやすくなります。
業種によって必要な工事費が大きく変わるため、物件を紹介する不動産会社も、単に面積と賃料だけではなく、出店可能性を具体的に確認する必要があります。
7.募集を出して待つだけになっていないか
空き店舗の募集では、不動産ポータルサイトへ掲載し、問い合わせを待つだけになっているケースがあります。
しかし、店舗物件は、住宅のように広い層が同じ条件で探すものではありません。
出店者の業種、商圏、売上計画、必要面積、駐車場、競合店などによって、候補物件は大きく異なります。
そのため、次のような能動的な募集も必要です。
* 出店を検討している事業者へ直接紹介する
* 店舗開発担当者へ物件情報を送る
* 地域の商工団体や商店街と連携する
* 起業予定者や既存店の移転需要を探す
* SNSや自社サイトで物件の特徴を発信する
* 建物の活用案を添えて提案する
* 近隣店舗や事業者へ情報提供する
中小企業庁は、全国の商店街における空き店舗対策、出店支援、リノベーション、テナント誘致などの事例を公開しています。単に空き区画を埋めるだけでなく、地域の需要や不足する業種を考えた店舗誘致が行われています。
仙台市にも、商店街等が空き店舗を活用してコミュニティ施設や店舗を設置する場合の支援制度があります。対象者や要件があるため、個別物件が利用できるとは限りませんが、商店街内の物件では地域団体との連携も選択肢になります。
家賃を下げる前に確認する順番
空き店舗に借り手が見つからない場合は、次の順番で確認します。
1. 問い合わせ件数と内覧後の反応を確認する
2. 周辺の募集賃料と成約事例を調べる
3. 想定する業種を決める
4. 設備と建物の状態を整理する
5. 保証金や工事費を含む初期費用を確認する
6. 契約期間や原状回復条件を見直す
7. 写真、図面、募集文章を改善する
8. 出店候補者へ直接提案する
9. それでも反応がなければ賃料を見直す
家賃を下げることが必要な場合でも、何が原因で、どの程度下げれば出店者の事業が成立するのかを確認したうえで判断するべきです。
家賃の見直しが有効なケース
次のような場合は、募集賃料を見直す必要があります。
* 周辺の同等物件より明らかに高い
* 築年数や設備状態が賃料に反映されていない
* 駐車場や視認性などの条件が競合物件より弱い
* 出店者が大規模な工事費を負担する
* 長期間募集しても問い合わせがほとんどない
* 想定される売上に対して賃料負担が大きい
ただし、恒久的な賃料値下げ以外にも、次の方法があります。
* 一定期間の賃料を免除する
* 開業当初だけ段階的に賃料を設定する
* 改修費の一部を貸主が負担する
* 保証金や礼金を見直す
* 契約期間を長くして投資回収期間を確保する
* 設備や看板工事の条件を緩和する
毎月の賃料を下げるよりも、出店時の初期負担を軽減した方が効果的なケースもあります。
貸主側で改修する場合の注意点
借り手を見つけるために、所有者側で内装や設備を整えようとする場合があります。
最低限の修繕や清掃は有効ですが、特定の業種を想定した高額な改修は慎重に判断する必要があります。
例えば、飲食店用の厨房を整備しても、借り手が美容室や物販店であれば利用できません。
改修する場合は、業種を限定しすぎない範囲で、
* 雨漏りや漏水の修繕
* 電気や給排水の安全確認
* トイレの改善
* 照明の確保
* 不要設備や残置物の撤去
* 外観や入口の清掃
* 駐車場や敷地の整備
など、物件の基本性能を改善する方が現実的です。
借り手が決まってから、出店者の計画に合わせて工事区分と費用負担を協議する方法もあります。
空き店舗は物件単体ではなく事業性で評価する
店舗物件の借り手は、その場所で事業を継続できるかを見ています。
そのため、所有者側も、
「この物件の家賃はいくらか」
だけではなく、
「この場所でどのような事業なら成立するか」
という視点を持つ必要があります。
例えば、通行量が少ない物件でも、予約制店舗、事務所、福祉施設、倉庫、スクールなどであれば、必ずしも高い視認性を必要としません。
反対に、人通りが多くても、駐車場がない、賃料が高い、排気設備を設置できないといった理由で、飲食店には適さないことがあります。
物件の弱点を隠すのではなく、適している業種と適していない業種を整理した方が、出店後のミスマッチも防ぎやすくなります。
まとめ
借り手が見つからない空き店舗では、家賃を下げる前に、物件全体の募集条件を確認する必要があります。
特に見直したいのは次の7点です。
1. 想定する業種が明確になっているか
2. 保証金や工事費を含む初期費用が高すぎないか
3. スケルトンと居抜きの状態が適切か
4. 写真や建物の状態が分かりやすいか
5. 契約条件が出店者の事業計画に合っているか
6. 用途変更や許認可上の問題がないか
7. 募集を出して待つだけになっていないか
店舗物件は、賃料だけで決まるものではありません。
出店者が事業を始めるまでの費用、契約期間、設備、工事、許認可、周辺需要を含めて判断されます。
安易に家賃を下げる前に、物件に合う業種を整理し、募集方法と契約条件を見直すことが重要です。
株式会社Blue Keyでは、宮城県内の空き家・相続不動産について、売却・賃貸・管理・解体・活用を比較しながら、今後の方針を整理しています。
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https://www.bluekey-sendai.com/akiya/
※本コラムは、空き店舗の募集や活用に関する一般的な情報をまとめたものです。建築、消防、用途変更、営業許可、賃貸借契約などの条件は、物件や業種によって異なります。具体的な募集や契約については、不動産会社、建築士、行政機関、弁護士などへご確認ください。


