スイスの偽「弁護士」に要注意
今回は遺言書制度の比較について扱います。日本で認められている遺言の形式は、自筆証書遺言(民法968条)、公正証書遺言(969条)、秘密証書遺言(970条)及び特別の方式による4種類の遺言(967条以下)となります。
スイスでもほぼ同様の形式が遺言書に存在していますが、公式遺言(スイス民法499条から504条)、自筆証書遺言(505条)、口頭による遺言(506条から508条)という順序でスイス民法に規定されており、日本の法とは並びが異なっています。
また、日本でいう公正証書遺言に相当する公式遺言には6つの条文が用意されていることもあって、こちらが原則という印象を受けます。
日本で公正証書遺言というと必ず公証人が関与する形式の遺言ですが、スイスでは、公式遺言という名称のとおり、公証人はもちろん含むとしても、必ずしも公証人には限られずより広く、州法の定めにより遺言を受理する権限が与えられた公務員等の機関が関与する形式の遺言となっています。
また、同様の形式と書きましたが、スイス法においては、日本法が定める秘密証書遺言の形式は存在していませんし、厳密な意味で日本法の定めるような特別の方式による4種類の遺言形式は定められていません。
ただ、スイス法には上で記したとおり、「口頭による遺言(フランス語で「Forme orale」)」という遺言の形式があり、これが後者即ち日本法でいう特別の方式による遺言に相当するものといえます。
このスイス法の「口頭による遺言」では、死亡の危急の場合、交通通信途絶の場合、伝染病隔離の場合、戦争の場合等の特別な事情(上記4つの場合はスイス民法506条1項に例示)にあり、口頭以外の方式による遺言が不可能な者については、遺言者の口頭による最終意思を証人2名に対して口頭で伝授し、証人の1人が遺言者の最終意思、日付(場所及び年月日)を書面に記載してもう1人の証人に署名させ、その証人2名が、当該書面を即時に司法機関に提出して、遺言能力があると思われる遺言者が特別な状況下で証人らに対してその最終意思を伝授した旨言明すること条件として遺言の成立を認める制度です。
日本法では、こうした特別な状況における遺言として4種類が規定されていて、それぞれに微妙に要件が異なっていて、そのあたりに日本法とスイス法の違いがあります。
スイス法では、緊急時において口頭で行う最終意思の伝達を書面にすることで遺言とする形式のみが認められている訳ですが、日本の場合は、そのような形(死亡の危急に迫った者の遺言(民法976条)、船舶遭難者の遺言(979条))の他、緊急事態に際して特別な条件で自ら遺言書を作成する場合(伝染病隔離者の遺言(977条)、在船者の遺言(978条))も認められていて、この点も違っています。
こうした特別な形式の遺言については、日本法では、普通の方式によって遺言ができるようになった時から6か月生存するときはその効力が生じないとされている一方で(983条)、スイス法では、口頭での遺言をした者が、後日その他の方式で遺言できるようになって14日間が経過した場合には当初の口頭による遺言の効力はなくなるとされていて(スイス民法508条)、この期間の長さに大きな違いがあると言えるでしょう。
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