スイスのお話⑶(イニシアチブからの憲法改正国民投票)
私が法律を学び、司法修習を経験したのはスイス連邦フランス語圏の中では最大の都市と言って良いジュネーブだった。ちなみに、イラスト右上のエンブレムはジュネーブ州の公式の旗であり、ジュネーブを散策していると街角のそこかしこで見かけることがあるはずです。
法律事務所は、フランスでは一般的には「cabinet(キャビネ)」というが、ジュネーブでは同じフランス語と言っても言葉遣いにフランスとは微妙な違いがあるようで、ジュネーブでは皆法律事務所のことを「Etude(エチュード)」と呼んでいます。
こうした違いは辞書を見たり、ましてやAIに尋ねたところで出てくる訳もない細かなニュアンスの違いで、こうした事例は他の分野でもいくらでもあるでしょうが、面白いところです。
そのジュネーブの法律事務所は主にどんな場所にあるのか御存知でしょうか。ジュネーブも中心部の旧市街から広い範囲にかけて古い建物がきれいに保存されいて、そうした建物は簡単に壊されることはなく、現代においてもフル活用されて、法律事務所がそういう建物に入っていることも多いのです。
新しいビルに入る法律事務所が皆無とは言いませんが、多くの事務所は古い建物の一角に事務所を構えていて、やはり裁判所がある旧市街中心部を周辺に多くの事務所が集まっている印象です。
裁判所自体が旧市街中心部の中世の建物に間借りして存在していて、観光でそこを訪れた人は、知らないとそこに裁判所があるとはまず気付くことはできないと思われます。
私の修習先も2階建てくらいの瀟洒な古い洋館に事務所がありましたし、司法修習開始前夏期インターンを約1か月ほど経験した全く別の法律事務所なども、外からはそこに法律事務所など入っているとは思えない古い重厚な建物に所在していたのです。
そして事務所にもよるでしょうが、多くの場合、修習生などを除いては弁護士には基本的に個室が与えられて、各自マイペースに仕事に打ち込める環境のようでした。
事務所内の序列で面白いのは、日本はおそらくアメリカなどにならって、経営参画する弁護士をパートナー、通常の勤務弁護士をアソシエートと呼んでいますが、ジュネーブにおける公用語であるフランス語ではそれが逆になるということである。
つまり、ジュネーブの法律事務所では、経営参画する弁護士が英語で言えばアソシエートに当たる「associé(アソシエ)」であり、勤務弁護士が英語ではパートナーに当たる「partenaire(パルトネール)」となります。
そのような訳で、ジュネーブでは代表弁護士と、その他の経営参画弁護士を法律事務所名に入れる時は、「○○&パートナーズ」ではなく、「○○&アソシエ」となります。実際、こうした形式の事務所名を持つ法律事務所が複数存在しています。
また、ここでは深掘りはしませんが、日本では着手金、報酬金方式の報酬体系がまだ主流だと思うのですが、スイスではタイムチャージ制が基本です。友人の弁護士の報酬体系を例として挙げると、最初に1万スイスフランの支払が求められ、これで当初22時間の執務が約束されるということです。着手金とタイムチャージ制の料金が併存する趣旨の予納金といったところでしょうか。
ほんのささいなこととは言え、スイスでの勉強や修習で、こうした日本や他の国の法曹文化との様々な違いを発見することはとても興味深く、楽しい日々でした。
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