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優しい遺言書のつくり方① ~過去の遺言書がある場合、相続財産の具体的記載について~

三上隆

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テーマ:遺言書

 皆様、こんにちは。
 『相続まちの相談室』の行政書士・三上隆です。

 今回は、遺言書のつくり方をテーマとさせていただいております。
 まずは、遺言書の種類につきまして、簡単に触れておきます。

 よく用いられる遺言書は、下記のどちらかです。
 ⇒「自筆証書遺言」 遺言者さまが自ら書かれるもの
 ⇒「公正証書遺言」 遺言内容を決め、遺言自体は公証役場で作成してもらうもの
 (他はあまり用いられておりませんので、割愛させていただきます)
 
 今回は、「自筆証書遺言」(以下、遺言書とします)についてお伝え致します。
 皆様よりお伺いする、遺言書についてのご質問は、
 ・どのように書いたらいいの?(書式がわからない)
 ・何に書いてもいいの?(どこかで用紙が買える?)
 ・自筆証書遺言でも、その有効性は大丈夫なの? 
  などという、お声です。
 
 現在では、「エンディングノート」など、遺言書に関する書籍もたくさん出版されておりますが、たくさんありすぎてどうもわからない、ということもあるのかもしれません。
 また、遺言書を書いたり、見たりする機会が多い方はあまりおられないでしょうし、きっちりとした契約書のような厳密な書式でないといけない、と思っておられる方も多いと思われます。
 
 遺言書の書き方に関して、法律の規定では下記の4つがあります。
 ①すべて自筆(印字は不可)であること
 ②署名・押印があること
 ③日付があること
 ④遺言者は15歳以上で、遺言能力があること

 ②の押印は、印鑑の種類に規定はありませんが、100円ショップの認印やシャチハタでは、後から本当に本人が書いたものか、本人性を否定される原因にもなりますので、実印かそれに近い印鑑を用いる方が無難です。
 ④の遺言能力とは、「本人が遺言書の内容を理解して書いたかどうか」ということですので、認知症になっておられた方の場合、たとえその当時はごく初期であっても、遺言書が否定される場合があります。

 ①~④以外は特に規定がありませんので、用紙も書き方も自由です。
 その為、「だから余計にわからない」ということかもしれませんので、もう少し具体的な項目を考えてみましょう。

遺言書に記載した方がよい項目とは

①過去の遺言書の有無について 
 以前に遺言書を書いたことがある方の場合、時間の経過と共に、遺言書の内容と現在の状況に違いが出てきますと、もう一度書かれる(加筆や修正も含めて)ことがあると思います。
 ご自身が亡くなられてから、内容の異なる新旧の遺言書が出てきた場合、遺されたご家族は、本当の遺言内容が何なのか、よくわからない場合があります。
 それを避けるために、旧の遺言書は確実に破棄し、新しい遺言書にもその旨を記載した方がよいと思われます。

※具体的には、「遺言者はこれまでの遺言をすべて撤回し、改めて以下の通り遺言する」などです。

②ご自身の財産の具体的内容と、誰に遺そうと考えているのか
 一般的には、預貯金や現金、ご自宅などの不動産を誰にどのように引き継いでもらうか、記載をする訳ですが、預貯金や現金以外の財産については、その評価(お金に換算した額)が異なるのが普通です。
 
 例えば、2棟の不動産を子供2人にそれぞれ1棟ずつ遺される、という場合でも、その不動産の評価や条件に違いがある場合や、評価が低くても「不動産よりも預貯金の方がいい」と思われた場合、それだけで不公平感を感じられることがあるかもしれません。
 
 また、不動産はご自宅のみという場合、ご自宅以外に財産が他にもあれば、そちらを遺すこともできますが、そうではない場合は、「誰にどのように引き継いでもらうのか」ということを、検討をする必要があると思われます。
 
 仮に遺言書が無い場合、相続人さま同士で不動産の引き継ぎ方を話し合う場合、下記の4つから選択することになります。
 ア、現物分割 実際に分筆をして、分けるやり方です。
 イ、代償分割 代表の方が相続され、その方から他の方へ金銭を支払い、相続した金銭価値を等しくするやり方です。
 ウ、換価分割 売却をして、その代金を分けるやり方です。
 エ、共有分割 複数の方で共有名義にするやり方です。

 相続人さまが複数の場合、「ア、現物分割」、「ウ、換価分割」となりますと、まだ誰かが実際にお住まいの場合や、費用・時間がかかる、ということを考えると、現実的ではない場合が多いと思われます。
 また、「エ、共有分割」で均等に共有ということもできますが、そうなると全員が合意をしないと、その不動産の売却などが出来なくなりますので、その後の相続人さま同士の関係に変化が生じた場合、揉め事の原因となることがあります。
 
 上記のような理由から、「イ、代償分割」という分け方が一番不公平感も少なく、問題が起きにくいと思われますが、代償に用いる金銭(代償金と言われます)を、相続された方が用意する必要がありますので、それが難しい場合はこちらは選択できないことになります。

 このように、相続人さま同士でその分割方法を考えた場合、あらかじめ準備が必要な場合もありますので、ご自身の亡くなられた後で、相続人さま同士が揉めてしまう原因とならないよう、ご家族の関係やこれまでの状況などを考えられて、現実的・物理的に分けられない財産は出来るだけ共有を避け、「誰に遺すのか」、「なぜそのようにしたのか」、という”ご自身の想い”を、明確に記載した内容で検討されることをお勧め致します。 
 
※不動産は配偶者、預貯金が長男とした場合の一例です。
 「妻〇〇には、下記の不動産を相続させる」として、不動産の詳細を登記簿謄本の通りに記載します。
 「長男〇〇には、下記の財産より、債務・費用を支出または控除した後、その残余財産を相続させる」として、預貯金の詳細と、債務・費用の詳細を記載します。
 この際、金融機関名・支店名・口座番号のみを記載し、残高の記載までは不要です。 
 

 次回は、「優しい遺言書のつくり方 ~金銭や不動産以外のもの、予備的遺言について~」をお伝え致します。
 よろしくお願い致します。

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三上隆
専門家

三上隆(行政書士)

相続まちの相談室/行政書士 三上隆事務所

「人との関わり」や「お話を伺うこと」を大切にしておりますので、終活のお悩みや身寄りのない方の今後のご不安、相続の話し合いの部分に至るまで、‟人”と関わる部分を最後までお手伝い致します。 

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