一般企業による介護事業参入

太田英樹

太田英樹

テーマ:企業支援

今年6月、関西電力が介護事業からの撤退、警備会社ALSOKへの株式譲渡を発表しました。

2000年の介護保険制度開始以来、多くの企業が参入しては撤退する、というのを見てきたんですが、
「関電もか・・・」という感想です。

大手一般企業の介護業界参入で、うまくいったケースはありません。

厳密に言うと、あるんですが、今日はその違いの説明はしません。

これまでも、大手外食チェーンなどのいろんな有名企業が参入しては撤退していきました。

私自身も、2006年から約5年間オリックスの介護事業立ち上げ期に関わっていますし、
いくつかの一般企業さんや大手企業さんの業界参入に外部から関わらせていただきました。

今も、大小さまざまな企業からの「介護業界参入」に関する相談は多いですし、
最近はそれに加えて、障害福祉への参入相談も増えています。

もともと、介護保険制度開始の趣旨の一つに、「一般企業の参入促進」がありましたから、
その思惑通りと言えばそうなんですが、

この意図は、
それまで行政、社会福祉法人と医療機関しか介護事業をすることができなかったのが、
一般企業に門戸開放されることで、市場原理を働かせ、サービスの質が上がることを期待したものです。

ところが、
企業側からすれば、「ビジネスチャンス」という捉え方になり、誤解や勘違いに繋がるケースも少なくありません。

今でも印象に残っているのが、あるベンチャーの社長さんとの打合せの際の、その社長さんの一言。

「国は、企業を儲けさせるために、介護事業の門戸開放をしたんだ。儲からない事業を国が勧めるわけがない」
と。

結局その社長さんとは話が噛み合わずに別れました。

これは極端な例としても、参入・撤退という経営判断は、一般ビジネスでは普通のことであっても、医療福祉では事情が異なります。

少なからず、高齢者やそのご家族に不安、ストレス、その他身体的経済的負担が発生します。

私たち現役世代と違って、要介護高齢者はご自身でストレス回避ができなくなっています。

最悪の場合、そのストレスから寝たきりや死に至ることだってあります。

日ごろ、「ロマンとソロバンを両手に握る」が大事だと伝えていますが、それ以前の問題として、
要援助者の生命と暮らしは絶対に脅かしてはならない、が福祉に関わる者の最低条件です。

長年、新規参入相談はできるだけ断ってきました。

なぜなら、その多くが、

「太田さん、これからは高齢化社会ですから、介護が儲かりますよね?
デイサービス、老人ホーム、ヘルパー、いろいろありますが、どれが一番儲かりますか?」

という類のお話だったから。

そういう相談には、

「介護事業をやらない、という選択肢が一番儲かります」

とお答えしてきました。

でも、ここ数年は、いくつかの新規立ち上げのお手伝いをお受けしています。

介護事業、施設が増えたとはいえ、量も質もバラつきがあるのが現実。

「思い」のある事業をサポートすることが、私の自分軸に沿った仕事だと気づいてからは、
しっかりとお話をうかがい、「この人を応援したい」と思ったらお受けしています。

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太田英樹
専門家

太田英樹(コーチングコミュニケーション講師)

株式会社インサイトハウス

介護・福祉業界を中心に人材育成と事業支援で多くの実績あり。アドラー心理学ベースのコーチング研修により、社内コミュニケーションを円滑化のみならず、人材定着率や利用者満足度を高め、事業の成長につなげます。

太田英樹プロは京都新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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