高い壁を乗り越えるために

太田英樹

太田英樹

テーマ:組織改革

「高ければ高い壁のほうが、登ったとき気持ちいいもんな」

私も大好きなミスチルの曲「終わりなき旅」の一節です。

私はよく、研修では「ハードル」という言葉を使います。

まぁ、壁でもハードルでも、山でも、目標でもイイんですが。

人によっては、ミスチルの歌詞の通りという人もいるでしょうし、
高い壁を目の前にして、滅入ってしまう人もいます。

総じて、仕事ができる人、能力の高い人ほど高い目標設定をするのは当然と考える傾向にありますが、
もちろん、それはそれで素敵なことですし、その達成感のために仕事をしているという人もいるでしょう。

大昔、大学時代に中学生向けの塾講師のアルバイトをしていたことがあります。

まだ登壇して間もない頃、先輩講師のサポートに入ったときの出来事です。

その先輩は有名国立大学の卒業生で、社員としてその塾の講師をされていました。

もちろんめちゃくちゃ頭のいい人で、成績トップの中学生のクラスを担当されていたんですが、
ある日、体験授業ということで、平時のクラス分けに関係なくその先生の講義を受けられるという企画があり、そのサポートをしました。

その先生は、難しい問題の解き方を解説していくんですが、学生たちの反応が微妙。

もともと興味本位で参加している学生が多いので、有名高校を目指しているわけでもなく、学力もそんなに高いわけでもない。

なので、その先生の解説が理解できない。

明らかにそんな反応でした。

先輩先生も当然その空気感に気がつき、途中で解説をやめ、お説教タイムが始まりました。

「この程度の問題がわからない自分のレベルを知りなさい」

「そもそも意識が低い。◯◯高校以下の高校は行く価値もない」

と、断罪っぷりが凄かった。

その言葉に奮起することを期待しての発言なんでしょうけど、
中には「どうせ俺なんて価値ないよ」という気持ちになった学生もいたことでしょう。

講義終了後に、少しだけその先生と話したんですが、
先輩先生にとっては、「なぜトップを目指さないのか理解できない」ということでした。

当時はなんとなくその話を聞いていましたが、
その先輩は、おそらく必死で努力したんだと思います。

どんな目標・目的があったかはわかりませんが、そこに向かって毎日何時間も勉強した結果、高い壁を越えた経験があるんでしょう。

だから、みんなもできるよ、ということが言いたかったんだと思います。

なのに、高い目標設定もせず、努力しようとしない学生たちに、歯がゆい思いをもっていたんでしょう。

その一方で、高い壁に立ち向かえない学生たちを理解しようともされていましたが、ご自身にその経験がないので、理解できない。

なので、ご自身では言葉を選んでいるつもりなんですが、その言葉さえ、学生たちには受け入れ難いものになる。

人間は、どこまでいっても「経験に基づく思い込み」の生き物です。

頭でどれだけ理解したつもりになっても、相手の気持ちを丸々理解することなんてできません。

じゃあ、どうする?

だからこそ、徹底的に寄り添うんです。

ただひたすら寄り添うことで、「どうせ俺なんて」の底に行き着きます。

そこまで行けば、あとは上がるしかない。

そこで、その人に合った高さの「ハードル」「壁」「目標」を決めれば、それを越えるための第一歩を踏み出せるようになります。

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太田英樹
専門家

太田英樹(コーチングコミュニケーション講師)

株式会社インサイトハウス

介護・福祉業界を中心に人材育成と事業支援で多くの実績あり。アドラー心理学ベースのコーチング研修により、社内コミュニケーションを円滑化のみならず、人材定着率や利用者満足度を高め、事業の成長につなげます。

太田英樹プロは京都新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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