オチのある話をしたいなら、オチを先に考える!【プレゼンに笑いをプラスするコツ+α】
「プレゼンに笑いをプラスするコツ」シリーズの第42回です。今回はプレゼン、もしくはスピーチの中に有名人の名言やユーモアを交えてより印象深いものにする方法を取り上げてみたいと思います。
名言やユーモアはよいアクセント
プレゼン・スピーチで理路整然とお話をできるのはそれだけで貴重な能力ですが、理路整然とお話しするだけだと今一つ強い印象が残らないかもしれません。そのような時に有名人の言葉やユーモアを入れることで、より印象深いお話に変えることができます。
私が笑いと健康のお話をする際に、自然な笑いを増やす方法の一つとして気の合う友達と趣味ややってみたいことをする時間を作ることをオススメしています。その根拠となる統計データのグラフをお見せするのも説得力を上げる一つの方法です。ですが、私は、精神科医で作家の斎藤茂太さん(もたさんという通称の方が有名かもしれません)の
「できること」が増えるよりも、「楽しめること」が増える人生が良い人生
という一説を一緒に紹介することにしています。お話を聞いてくれる人にとってなじみのある有名人の言葉を引用することで、理屈を詳しく説明するよりもかえって説得力が上がります。話の趣旨に合った名言やユーモアを散りばめることによって、全体の印象が良くなる可能性が高まります。
※参考文献
斎藤茂太(2005)『いい言葉は、いい人生をつくる』成美堂出版
ユーモアをオチのある小噺に変える方法
先ほどの斎藤茂太さんの言葉は非常にまじめな名言ですが、ユーモアを散りばめても話の印象は上がります。元々がユーモアですから、タイミングと言い方さえ間違えなければ、会場に笑いが起きるはずです。
そのタイミング、言い方にはちょっとしたコツがあります。
ご長寿の双子姉妹として有名なきんさん・ぎんさんのユーモアの実例を上げてみたいと思います。
テレビのアナウンサーがきんさん・ぎんさんに「出演料は何に使うのか?」と尋ねたら、きんさん・ぎんさんは「老後の貯金です」と答えたというエピソードはかなり有名です。実にユーモアあふれる素晴らしい回答ですよね。
この話を雑談としてさらっとお話ししても十分笑いになりますが、その日のテーマと関連づけ、話す順番を工夫して、最後にユーモアのある回答を持ってくることで、オチのある小噺のようなテイストに変えることができます。
私の場合は、
1.きんさん・ぎんさんの紹介をする。
2.きんさん・ぎんさんがテレビに出演したことをきっかけにむしろ元気になったことを紹介し、
そこからご長寿の秘訣を3つお話し、笑いを増やすこととも関係があることを紹介する。
2.「ちなみに、こんなエピソードもあったそうです」と切り出す。
3.「ある日テレビのアナウンサーがこう尋ねたそうです。『きんさん・ぎんさん、今日はテレビに出たら出演料をもらいますよね。その出演料は一体何に使うのですか』と」と話す。
4.「100歳のきんさん・ぎんさんは何と言ったかご存知ですか?』と会場に尋ね、少し考えてもらう。
5.頃合いを見て「こう答えたそうです。『今日の出演料は、老後の貯金です』」とオチを言う。
このユーモアは、すでにご長寿の方が老後の心配をするという所が笑いの最大のポイントですので、4.で会場に尋ねる際には、「100歳の」という言葉をさりげなく入れておくことは大事なポイントです。また、このエピソードは非常に有名ですので、会場の中には答えを知っている人もいます。オチに行く前に十分な間を取ることは、オチを聞いてもらう体制を作るために大事ですが、すでに頷いている人や答えを言う人がいた場合は、それ以上間を取らずにすぐにオチを言うようにして、間を調整しています。文章ではなかなか説明しづらいですが、読者の皆さんも何度か実践していればすぐに間の取り方は覚えられると思います。
また、パワーポイントが使えるときにはオチのフレーズを一緒に表示しています。(パワーポイントを使って笑いを起こす方法は、第37回をご参照ください)
※今回紹介したエピソードは、下記の書籍をベースに作成したものです。
伊藤一輔(2009)『よく笑う人はなぜ健康なのか』日本経済新聞出版社
テーマや客層に合ったフレーズを
名言やユーモアは上手く取り入れると話し全体の印象をぐっとよくしてくれますが、使い方がイマイチだと話し全体の印象もぼやけてしまうかもしれません。名言やユーモアを入れる際には、
・テーマに合ったフレーズを入れる
・話を聞いてくれる参加者が知っている人物の言葉を使う
・自分の視点と名言・ユーモアを融合する
ことが大事なのではないかと私は考えます。話のテーマと関係ないフレーズだと説得力が上がりません。テーマに沿ったフレーズを的確にチョイスするためには、日ごろからそのテーマに関する書籍や情報番組などに触れて、フレーズを頭の中にストックしておくことが一番だと思います。
また、話を聞いてくれる参加者がよく知らない人のフレーズを用いても、いまいちピンと来ないまま終わってしまうかもしれません。私も一度失敗しています。中学生に、勉強や部活に意味を見出せなくても、少し頑張っていると将来役に立つ日があるかもしれないというメッセージを伝えるつもりで、スティーブ・ジョブズの
「将来をあらかじめ見据えて、点と点をつなぎあわせることなどできません。できるのは、後からつなぎ合わせることだけです。だから、我々はいまやっていることがいずれ人生のどこかでつながって実を結ぶだろうと信じるしかない」
という言葉を紹介したのですが、正直あまり心に響いている様子はありませんでした。IPhoneやITunesを作った人だとは知っていても、ジョブズが様々な挫折を乗り越えて数々の革新的な発明をした人だということはあまり知らない人が多かったようです。まさに革新的な製品が生まれる同じ時代に生きた私たちとは感覚が違うのは当然で、自分の言葉のチョイスが悪かったなと反省しております。
さらに、他の人のフレーズの引用ばかりだと自分の意見がなくなってしまいます。それだと別にその人がプレゼンする必要もなくなってしまいますので、自分の視点・意見の中に上手に名言やユーモアでアクセントを加えるという心づもりでいるとよいと思います。
「プレゼンに笑いをプラスするコツ」シリーズは、番外編を2つお届けして、いったん完結しようと思います。全く新しいシリーズに移行する前に、今回のコラムで掲載したような、ちょっとしたユーモアのあるエピソードを紹介するミニコラムシリーズを掲載する予定です。
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