流暢に話せなくてもプレゼンはできます【プレゼンに笑いをプラスするコツ27】

田久朋寛

田久朋寛

テーマ:プレゼンに笑いをプラスするコツ



1週間ぶりの更新になります。この1週間で淡路島や岐阜県での講演があり、多くの方に笑いと健康に関するお話を聞いていただき、非常にありがたく思っております。

今回は「プレゼンに笑いをプラスするコツ」シリーズの第27回です。お話に関心を持ってもらうための話術について、少し触れてみたいと思います。

流暢に話せなくても全く問題ありません


今回のテーマと思いっきり反対の話をして恐縮ですが、私は話すことを職業とするアナウンサーやタレント、芸人以外の職業の方がプレゼンや講座を行う場合、必ずしも流暢な話術は必要ないと思っています。流暢にお話しするよりも大事なことは

・一番大事なことを参加者にしっかり伝え、共感を得る

ことであることは、このシリーズで何回もお伝えしてきました(例えば第2回をご参照ください)。この目的さえ達成できていれば、流暢に話せなくて、たまに言葉に詰まったり、言い間違えたりしたとしても全く問題ないと私は思います。弁舌がさわやかで一見もっともらしいことを言っているが気持ちのこもっていない人のお話と、見るからに緊張しているが自分の言葉で一生懸命何かを伝えようとしている人を比べて、どちらに共感する人が多いか、答えは明らかだと思います。ですから、多くの人の前で話すことに慣れていない方でも、話しが下手くそだからと心配することなく、自分ができる範囲で内容をしっかり伝えることに最初は集中すれば十分です。私も講演会で言い間違いは1回や2回はありますが、言い間違いが原因で傷口を広げるということはありませんので、ぜひ読者の皆さんも安心していただければと思います。

もちろん、流暢な話術があった方が、説得力が高まる可能性が上がります。500人を対象とした講演会、億単位の金銭が動くような大事なプレゼンでは、準備不足でグダグダということは許されない場面もあります。しかし、ほとんどの方はいきなりそのような大舞台に立たされることはないはずです。最初は話下手でも、経験を積みながらしっかり振り返りを通じて改善個所を見つけ、少しずつ流暢に話せるように自信をつけていけばよいと思います。

押してもだめならひいてみな


しかしながら話術に全く触れないわけにはいきませんので、ひとつだけお話に興味を持ってもらうコツをお話しします。

十分な声量でスラスラとお話しできているはずなのに、参加者の反応がどうも悪く眠そうな人が増えてきたので、ますます熱を入れてピッチを上げてお話ししているのに、状況が一向に改善せず悪循環に陥りがっかりしたという経験のある方もいるかもしれません。そのような場面に遭遇した時に、この言葉を思い出していただければと思います。

「押してもだめならひいてみな」

この言葉は、ドラえもんがのび太くんに向かって言ったセリフです。いきなりこの言葉を言われても何のことか意味がわからないかもしれません。プレゼンの文脈で言いかえると

「こちらがグイグイ話しても聞いてくれないなら、あえて一瞬引いて静かな「間」を作ってみよう」

ということです。

お話で人を惹きつけるためには緩急・メリハリが必要です。同じトーンでお話を続けていると、どうしても単調に聞こえてしまいがちで、それが眠気の原因になったりします。そういうときには、話の内容が切り替わるタイミングで頑張って話し続けるのをあえていったん止めてみて、ちょっと長めの間を取ってみてください。不思議なもので、十分過ぎる間があると、何かあったのだろうかと思って、注意が散漫になっていた参加者の皆さんが再び注目してくれます。目をつぶって聞いていた人も目を開けてくれることが多いです。

このような技術は、自分も効果を実感しています。ある日乾燥していて喉が疲れてきたので、声ががらがらにならないようにちょっと間をおいて水を飲んだことがありました。すると、ちょうどいい「間」になったのか、その後のお話への参加度が変わりました。単なる怪我の功名ですが、あえて間を作るのは大事なのだと改めて実感し、次の回から間を入れてみることも意識するようにしています。

小学校の教室の記憶を思い出してみてください。授業中に子どもが騒がしくしている時に、先生が話をやめて表情を変えずに1~2分静かにしていたら、叱られると思って子どももおしゃべりをやめることがあります。先生方は子どもを直接叱らずに自分たちの行いが悪かったことを悟らせるテクニックとしてあえてこのようなやり方をすることがあるのです。もちろん読者の皆さんが行う普段のプレゼンや講座は恐怖心をベースに人に無理やり話を聞かせるような必要は全くありませんが、あえて間を取ってみるというやり方は、テクニックとして確立した方法であることを知っていて損はないです。

「言葉に詰まる」も絶対悪ではない


さて、以上の2つの大きなテーマのお話を踏まえて、「言葉に詰まる」ことについても考えてみます。以前のコラムで本番で言葉に詰まらないように、事前に一度口に出して行ってみることが有効だとお伝えしました(詳しくは第8回をご参照ください)。いくら事前に練習しても、緊張したら言葉に詰まることもあると思います。しかし、言葉に詰まったことによって、かえって良い「間」が生まれることもあります。意図せずにできた「間」によって、参加者の皆さんの注意を喚起する可能性もあるのです。このことを知っているだけで、慌てることが減ると思います。言葉に詰まっても、一呼吸して言葉が出てくるのを待ってください。

言葉に詰まる自分はカッコ悪い、ふがいない自分を見せるのは恥ずかしいと思うと緊張が悪化し、しどろもどろになってしまいます。流暢に話せなくても、ときどき言葉に詰まって間ができても、悪い結果になるわけではないということは、ぜひ本番前に思い出してください。単なる準備不足による失敗は避けた方がよいので、事前に口に出す練習を行ったうえで、本番では言葉に詰まっても慌てない、この2つを意識すると、風格が出てきますよ。

※ステージの写真は、こちらの著作権フリーサイトのものを使用しています。
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田久朋寛
専門家

田久朋寛(セミナー講師)

大道芸人たっきゅうさん

大道芸人として13年のキャリアを持つ。老人介護施設や高齢者大学等で、大道芸とレクチャーとヨガをミックスした健康講演会「ユーモアセラピー」を開講。笑いの効果を生かし高齢者の心身の健康をサポートしている。

田久朋寛プロは京都新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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