会話のキャッチボールを意識する【プレゼンに笑いをプラスするコツ25】
「プレゼンに笑いをプラスするコツ」シリーズの第20回です。第19回では、お話を魅力的にするために、AIDA(アイーダ)の法則を意識するとよいことを記載しました。今回は、その法則に従って、まず参加者の皆さんに自分に注目してもらうための手堅い方法を紹介します。
自己紹介は最高のツカミにもなる
お話しする際には、最初に全員の注目を自分に集めたいとほとんどの人が思うに違いありません。お笑いの世界では出だしのお話のことを「ツカミ」と呼びます。最近では日常語として定着しました。エンターテインメントの舞台や、世界的企業の役員クラスのプレゼンでは音楽や照明、映像を使って派手な演出でスタートすることもありますが、私たちのようなごく一般の市民がプレゼンや講座となるとそのようなことはできません。しかし、お話をする際には、ほとんどの人が自己紹介からスタートすると思います。自己紹介は、やり方次第でツカミとして十分な役割を果たします。
相手との接点、相手への共感を示す
自己紹介をする際には、自分の氏名や所属、資格などの肩書だけでなく、ぜひ2つのことを入れてみてほしいと思います。
・参加する人と自分に共通する接点
・参加する人や土地への共感
初対面の人同士が会話する時に、最初はぎこちなかったのが、同じ学校出身であったり、共通の趣味が見つかったことをきっかけにして急に和んで会話が弾んだ経験を誰もがお持ちだと思います。自分との共通の接点を見つけると、その人に対して親近感を持ちます。ですので、参加する人との接点を意識して自己紹介を行うことを意識してみてください。そして、相手や会場のある土地に対して自分が共感を持っていることを最初に出すことによって、お話を聞いているも共感を示しやすくなります。
土地の思い出はベタだけど確実
とは言え、共通の接点が簡単には見つからないことも多いと思います。非常にベタですが、手堅い方法は、会場の土地の思い出をお話しすることです。かつて自分が暮らしていたり、職場や学校があった場所ならば、具体的な地名やお店を上げて思い出をお話しすれば、聞いている人も親しみやすくなります。
私は大道芸や講演で全国様々な場所を訪問します。以前群馬県を訪問した時には、このような自己紹介をしました。
「母方の祖父母の家が新潟県にあり、毎年夏休みに上越新幹線で新潟に行く際に群馬県も通りました。新幹線で「だるま弁当」(※群馬県高崎市名物の駅弁です)を買って食べるのが毎回楽しみで、群馬県に来ることができてその頃を思い出してうれしくなりました。帰りに久しぶりにだるま弁当を買おうと思っています」
また、行楽シーズンに舞鶴もしくは敦賀から北海道へ向かうフェリーの中で大道芸をするのが恒例になっています。フェリーは一度乗ったらしばらく降りず、4日間~1週間程度同じ船で往復しながら大道芸をするのが通常です。舞鶴や敦賀の周辺で講演会を行う際には
「舞鶴(敦賀)はご縁があって自分も良く訪問しています。港から北海道に行くフェリーがありますよね。夏休みにはそのフェリーの中で大道芸をしたこともあります。今日は港ではなく街の雰囲気を感じ、皆さんと直接お話しできてうれしく思っています。ちなみにフェリーに乗って北海道に行きますが、同じ船でそのまま帰ってきます」
と、ちょっとしたオチをつけてお話しするようにしています。具体的な名産や名前が出るだけで、会場に笑いが起こります。
(※フェリーの方は、北海道についたら出発するまで港に上陸してもよいと言ってくださっていますが、船内が予想以上に快適なため、そのまま乗船していることが大半です)
相手とかけ離れているときにこそ接点が大事
プレゼンや講座の目的がはっきりしていて、目的から見て理に適った資格などを有している人がお話をする場合には、参加者もその人がお話しする理由がすぐに納得できますが、そうではない場合もあります。そのようなときにこそ、自分と参加者の接点を見つけ、納得してもらうための自己紹介が大事になります。
以前、ある県の警察本部で研修をしたことがありました。交通安全教室を行っている市民ボランティアを対象に、講座やプレゼンを楽しく魅力的なものにする方法についての研修でしたが、おそらく参加してくださった多くの方は、なぜ大道芸人の話を聞かなければならないのか不思議に思っていたに違いありません。私が講師として選定されたのは、ボランティアの皆さんが普段行っている教室の客層とほぼ同じ客層を対象に楽しく講演を行っていることが一番の理由です。ですので、まずそのことを皆さんにお伝えしました。
「今日は暑い中たくさんの方にお越しいただきありがとうございます。まず、警察の研修でなぜ大道芸人のお話を聞くのか疑問に思った方もいるかもしれません。実は私は地域の中高年を対象に笑いと健康の講演会を行っています。皆さんが行っている交通安全教室の対象者と同じような方々を対象にお話しするのを仕事にしていますので、まじめな内容を楽しくお話しするヒントをぜひ一緒に共有したいということで、講師に選んでいただきました。皆さんも最初大道芸人と聞いて驚いたと思いますが、私も最初にお話をいただいた時に驚きました。警察からいきなり電話がかかってきて何か悪いことしたかドキッとしました」
最後に軽いオチをつけることで、場が一気に和やかになります。
自己紹介の際に気をつけたいこと
このように、参加する人との接点についてお話ししたうえで、最後に軽いオチをつけることで、場が和む効果があります。ただし、笑いを取ろうと思って、会場の土地をバカにしたりすることは避けた方が良いでしょう。愛着のある場所、物を否定されてよい気分になる人はいません。また、何かを持ち上げたのはよいが、持ち上げたのがライバル企業の製品だったといったこともできれば避けたいものです。大人の事情を考慮して、節度さえわきまえていれば、心配ないと思います。
次回からは、自己紹介以外にも最初に場を和ませる手法である「アイスブレーク」という手法について触れたいと思います。
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