緊張を大きくする三大要因【プレゼンに笑いをプラスするコツ6】
「プレゼンに笑いをプラスするコツ」の第7回です。前回のコラムでは、準備不足が緊張の大きな原因であることを紹介しました。プレゼンや講座の講師を務める本番の前日に少しでも練習をしておくことで、気持ちに少しゆとりができてきます。かと言って、他の業務も抱えている中で、何度も何度も入念にリハーサルしている時間はなかなか取れないのが実情かと思います。私の経験をもとに、練習の際に最低限意識しておきたいポイントを紹介します。
一度でいいので通しでしゃべってみる
私から皆さんにぜひおすすめしたいのは、実際に人前でお話をする前の日に、一度でいいので頭からお尻までお話をしてみることです。たった一度だけでも実践してみると、様々なことがシミュレーションできて、本番への対策が一気に進みますので、ぜひやってみてください。その際に、意識してほしいチェックポイントがあります。
・時間を測っておく
・失敗したところや心配なことを確認しておく
準備に十分な時間が取れない時には、この2つだけでも確認すれば十分だと思います。ストップウォッチで時間を計測するのは特に重要で、一番大事なことを話す前に時間オーバーになってしまったという失敗は、尺の配分を事前に確認しておけば防げます。そしてもう1つ大事なのが、失敗したところや心配なところがなかったかチェックしておくことです。
練習は本番のように、本番は練習のように
大道芸の世界では、以下のような格言があります。
「練習は本番のように、本番は練習のように」
練習の時に漫然と練習するのではなく、本番を意識しなさいと言うことだと私は解釈していますが、もう1つ重要なポイントがあります。それは
・本番を想定して練習すると、失敗しそうなところがわかる
ということです。一度通しで練習しておくと、上手く言葉が出てこなかった、大事なところが思ったよりわかりにくかった、パワーポイントのスライドを出すタイミングを失敗しそう、など失敗や不安なところが出てくると思います。そこの部分だけ、事前に対策を打っておくことが非常に重要です。対策を打っておけば、いざ本番では練習した時のようにやればよいのです。
対策と言っても、難解な専門用語を噛まずにいえるまで何度も発声練習するとか、話の流れを完璧に暗記するといったことは必要ありません。例えば、カンニングペーパーを用意しておいて、言葉が出てこなかったところだけ予め文章として書いておく、スライドの出す補助の人に、わかりやすく指示するように気をつける、と言った簡単な対策で十分です。(ただ、カンニングペーパーにセリフを全部書いておいて本番で棒読みするのはおすすめしませんが…)
慣れてくれば、すべてのパートに対策をしなくても、普段と違う話をするところだけ練習すると言った形で準備の時間を短縮できます。私は普段は高齢者を対象に「笑いと健康」をテーマで講演を行っていますが、時々「認知症のお話を入れてほしい」、「誰かを介護している家族が安心できるお話をしてほしい」といったイレギュラーなテーマのご依頼をいただくことがあります。その際は、普段お話ししている内容とご依頼をいただいた内容を混ぜてお話ししますが、普段話さないテーマの部分だけ練習して尺を測っておいて、他の部分の尺を調整するようにしています。このようにすることで、普段と違うテーマでも持ち時間きっちりに収めることができています。
大道芸人は失敗の達人!?
(※見出しには多少偏見が混じっています)
観光地で大道芸人を見たときに、大道芸人が失敗を笑いに変えているところを目撃したことはありませんか?お手玉しているこん棒を地面に落とした時に
「落としたのではありません。実はわざと置いたのです。この技を見てほしかったからです」
とか言いながら、足でひょいと蹴り上げてお手玉に戻って、拍手喝采といったシーンを覚えている方も多いと思います。
あまり同業者の手の内を明かすと怒られそうですが、実はそのようなシーンはほとんどの場合、完全なアドリブではありません。ジャグリングの専門用語で「ドロップライン」という言葉があります。ドロップは道具を落とすことです。道具を落としてしまった時に、失敗と気づかれないように演技に戻る方法のことをドロップラインと言います。一見アドリブが上手そうな大道芸人は、ドロップラインをたくさん用意しています。こういう失敗をしたらこうしよう、というネタのストックがたくさんあります。まさに失敗しそうな所を想定しておいて、本番に臨んでいるわけですね。
とは言っても大道芸でも20回も30回も失敗していたらさすがにお客さんもしらけてしまいます。プレゼンでも同じで、失敗を想定するのは大事だが、何度も失敗ばかりにならないような対策は重要です。
さて、プレゼンで失敗しそうで不安なことで、一番よくあるのは「本番で言葉が出てこなかったらどうしよう」、「参加者からきついこと言われたら嫌だなあ」という不安ではないでしょうか?次回以降でそれぞれの不安について、対策を考えてみたいと思います。
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