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墓地管理の難しさとその対策

拾井央雄

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テーマ:寺院の管理・運営

宗教法人

墓地に関する法律

墓地の使用に関して適用が考えれる法律としては、民法があげられます。
しかし、民法には、墓地そのものに関する条文はありません。
所有権や賃貸借などの規定を、墓地の場合にあてはめて考えていくしかありません。
墓埋法(墓地、埋葬等に関する法律)という法律がありますが、これは、埋葬の方法だとか、墓地や火葬場の設置だとかの行政手続きや罰則を定めた法律です。
墓地管理者と墓地使用者との間の権利や義務を、直接に定めた法律はほぼ見当たりません。

墓地使用権の性質

寺院墓地については、土地所有者である宗教法人が、墓地の使用希望者に、対価の支払いと引き換えに、墓地の使用権を設定する方法が一般的です。
これを「永代使用権」と呼んだりしますが、そういう法律用語が存在するわけではありません。
一度墓を建立すると、人間の住む家のように、気分で簡単に引っ越しをするというわけにはいきません。
もちろんできないことはありませんが、墓地自体が許可を得て設置しなければなりませんし、改葬にはそれなりの手順を踏む必要があります。
そもそも、引っ越しを予定しつつ墓を建立する人はきわめてまれでしょう。
また、墓を建立する場合は、子どもや孫たちが引き継いで守っていってくれると考えるのが通常です。
したがって、墓地使用権は、その性質として、固定性、永久性という点が重要となり、これを前提に法律関係が解釈されることになります。
このことを、「墓地使用権とは、墳墓の所有者がその所有目的を達するために他人の土地を固定的、永久的かつ支配的に使用する物権的性質をそなえる権利であると観念される」と表現した裁判例があります。
墓地使用権は、このように強固な権利と解釈されています。

墓地使用権の承継

被相続人の財産は、その死亡により相続人に相続されます。
誰がどのように相続するかは、民法に定められています。
しかし、墓地使用権については、経済的な権利・財産とは切り離され、相続人ではなく祭祀承継者が承継するということになっています。
そして誰が祭祀承継者となるかについては、民法により、被相続人の指定、慣習、家庭裁判所の審判によって定めるとされています。
遺産はきっちり分割しても、墓を誰が引き継ぐかまできちんと合意して書面化することは少なく、なんとなく長男や次男が承継している場合がほとんどでしょう。
墓地管理者にはだれが承継したのか明らかでなく、トラブルに巻き込まれる恐れがあります。

墓地管理の難しさ

墓地使用権が固定性、永久性を持つ強固な権利とされていることから、たとえば管理料の支払いが滞ったからとか、宗旨が変わったからといって、簡単に明渡しが認められるわけではないということになります。
また、誰が墓地使用権を承継したのか分からず、親族間の争いに巻き込まれてしまうこともあります。

その対策

墓地管理の難しさは、法律が明確な定めを置いていないことによる曖昧さから生じているといえます。
したがって、墓地使用規則を制定し、これを遵守することを前提に使用権を設定しているということが、たいへん重要となってきます。
裁判例においても、墓地使用規則がどのような定めを置いているのか、あるいは置いていないのかを重視して結論を導いていることがうかがわれます。
墓地規則があるか、どのように定めているか、墓地規則に従うとの誓約書面があるかなど、確認しておく必要があるでしょう。

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拾井央雄
専門家

拾井央雄(弁護士)

京都北山特許法律事務所

エンジニア15年〜弁理士5年と弁護士としては異例の経歴を持ち、技術系分野に精通。知的財産や技術系法務のエキスパートとして数多くの事業者を支援。また自身が住職である立場から宗教法人のサポートも手掛ける。

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