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解雇するまで何をどうすればよいか

拾井央雄

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テーマ:中小企業の攻め方・守り方


解雇のハードルについて、そしてなるべく合意による退職が望ましいことについて、前回説明いたしました。
それでもやはり解雇に至る場合はあります。

従業員を解雇しようとする場合にどのような手続きを踏めばよいのか、あらかじめ確認しておきましょう。

解雇の有効性を根拠づける資料を確保する

解雇には、「客観的に合理的な理由」と「社会通念上相当」性が必要であることは別のコラムで説明しました。
解雇を争われる場合には、通常、この2つが争点になりますので、事業者側の主張を根拠づける証拠が必要になります。

従業員が能力不足というのであれば、そのことを客観的な資料によって他人に説明できなければなりません。
また、解雇するということは、指導しても改善が見込めない、他の職場に変えることでも対応できないということですので、そのことも説明できなければなりません。
ですから、能力不足であれば、何度か改善指導を行い、それでも改善されなかった、という記録をふだんから残しておくことが必要です。

就業規則に根拠があるか

懲戒処分によって解雇する場合は、就業規則に懲戒解雇の規定が必要です。
これがなければ、そもそも懲戒処分ができません。
懲戒でない通常の解雇をする場合でも、就業規則の解雇規定に該当すれば、そのことを客観的に合理的な理由として主張できます。
就業規則のどの条項による解雇であると言えるか、確認しましょう。

なお、労働組合に加入したとか、労基署に申告したとか、産休や育休を取ったとか、そういう理由で解雇することはできません。

社会通念上相当か

従業員に能力不足があっても、解雇するには相応の程度に至るものでなければなりません。
そして、それが証拠によって立証できる必要があります。
十分な証拠が確保できているか確認が必要です。

解雇禁止の場合にあたらないか

業務上災害による療養のための休業期間中とその後の30日間、産前産後の休業期間とその後の30日は、法律で解雇が禁止されています。
これにあたらないかは一応確認が必要です。

自主的な退職に向けて条件提示する

以上の検討を行って、解雇を争われても大丈夫と判断しても、いきなり解雇に踏み切るのではなく、一度は条件を提示して自主的な退職を促すのが一般的な対応です。
解雇を争われたときのリスクを考えると、ある程度の金銭を提供しても、解雇を避けることのメリットは大きいです。

もちろん、条件を飲んで退職するかどうかは従業員の判断です。
従業員が条件を上げてきても、あせって無理強いすることがあってはなりません。
そのことが不法行為となって損害賠償を求められることにもなりかねません。

解雇予告を行う

従業員が条件に納得せず自主的な退職が望めない場合は、解雇日の30日前までに、解雇予告しなければなりません。
解雇予告をしたことを立証できる必要がありますので、必ず解雇予告通知書を作成して書面で行います。
手渡しの場合は、コピーに受領印をもらって、確かに渡したという証拠にしてください。
郵送の場合は、内容証明郵便を利用するのがよいでしょう。
解雇予告通知書に記載した解雇理由が、後の訴訟で主張する解雇理由と異なっていたりすると不利になることが考えられますので、慎重に記載しましょう。
対面して手渡す場合、基本的に発言内容は録音されていると考えて、ていねいな発言を心がけてください。

退職手続き

解雇予告通知書に記載をした解雇日に、従業員は退職となります。
退職証明書や解雇理由証明書を従業員から求められた場合は、遅滞なく交付しなければなりません。
それ以外にも、通常の退職の場合と同様に、離職票や源泉徴収票の交付、社会保険の脱退手続きなどが必要です。
貸与品などがあれば、受け取ってください。

さいごに

解雇は従業員の生活に大きな影響を与えるため、争われるリスクが高いと言えます。
争われて事業者側が敗訴するようなことになると、かなりの痛手となりかねません。
慎重にも慎重を重ね、たとえ訴訟で争っても負けることはないと言えるだけの準備をした上で、できるだけ合意による退職を目指すのが得策です。

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拾井央雄
専門家

拾井央雄(弁護士)

京都北山特許法律事務所

エンジニア15年〜弁理士5年と弁護士としては異例の経歴を持ち、技術系分野に精通。知的財産や技術系法務のエキスパートとして数多くの事業者を支援。また自身が住職である立場から宗教法人のサポートも手掛ける。

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