寺院運営の難しさ ~宗教法人と宗教団体の二面性~
(財産の処分等)
第29条 次に掲げる行為をしようとするときは、責任役員会の議決を経て、その行為の少なくとも1月前に、檀徒その他の利害関係人に対し、その行為の要旨を示してその旨を公告しなければならない。ただし、第三号から第五号までに掲げる行為が、緊急の必要に基づくものであり、又は軽微のものである場合及び第五号に掲げる行為が一時の期間に係るものである場合は、この限りでない。
一 不動産又は財産目録に掲げる宝物を処分し、又は担保に供すること。
二 借入(当該会計年度内の収入で償還する一時の借入を除く。)又は保証をすること。
三 主要な境内建物の新築、改築、増築、移築、除却又は著しい模様替をすること。
四 境内地の著しい模様替をすること。
五 主要な境内建物の用途若しくは境内地の用途を変更し、又はこれらを第3条に規定する目的以外の目的のために供すること。
2 前項各号に掲げる行為をしようとするときは、あらかじめ、竹輪宗の代表役員の承認を受けなければならない。ただし、同項ただし書に該当する場合は、この限りでない。
(経費の支弁)
第30条 この法人の経費は、普通財産をもって支弁する。
(予算の編成)
第31条 予算は、毎会計年度開始一月前までに編成し、総代会及び責任役員会の議決を経なければならない。これを変更しようとするときも同様とする。
(予算の区分)
第32条 予算は、経常収支及び臨時収支の二部に区分し、各々これらを科目に区分して、歳入の性質及び歳出の目的を明示しなければならない・
(特別会計の設定)
第33条 特別の必要があるときは、総代会の意見を聞いた上、責任役員会の議決を経て、特別会計を設けることができる。
(決算)
第34条 決算に当っては、財産目録、貸借対照表及び収支計算書を毎会計年度終了後三月以内に作成し、総代会の意見を聞いた上、責任役員会の承認を受けなければならない。
(歳計剰余金の処置)
第35条 歳計に剰余を生じたときは、これを翌年度の歳入に繰り入れるものとする。ただし、総代会の意見を聞いた上、責任役員会の議決を経て、その一部又は全部を基本財産に編入することができる。
(会計年度)
第36条 この法人の会計年度は、毎年4月1日に始まり、翌年の3月31日に終わるものとする。
宗教法人の財産処分の制限
宗教法人の存続は、財産の適正な維持運用が前提となっています。
そのため法律は、財産の処分に関して、規則に記載しなければならないこととしています(法12条1項8号)。
そこで、規則の29条1項が、法律に対応した規定になっています。
さらに、多くの宗教法人と同じように、包括宗教法人の承認が必要という規定を加えています。
規則に反する処分の効果
公告しないでした処分
もし、規則を守らないで財産を売ったりしたらどうなるのでしょうか。
公告をしないまま、境内地、境内建物、宝物を処分した場合、売買などの処分行為は無効となります(法24条)。
しかし、公告したかどうか、買主ははっきり分からないこともあります。
ですから、公告していないことを知らなかった買主や転売先に対して、宗教法人は無効を主張することができません(法24条但書)。
しかし、よく調べないで買った方が安心だということではありません。
それでは怠け者の方が得をしてしまいます。
ちょっと注意すれば分かることなのにそんな注意すらしない(重過失)で知らなかったような場合は、無効主張が認められるという判例があります。
最高裁は、境内地などは宗教法人の基礎であり、信者などたくさんの関係者がいるから、と言っています。
包括宗教法人の承認を得ていない処分
公告はしたけど包括宗教法人の承認を得ていなかった場合はどうなるのでしょうか。
この場合は法24条の範囲外ですから、包括宗教法人の承認を得ずにした処分が無効になることはありません。
したがって境内地などを取り戻すことはできず、代表役員などの責任を追及するしかありません。
公告の方法
公告の方法については、地方自治体のウェブサイトなどで書式を捜すと参考になるかもしれません。
予算、決算、会計
予算を、経常収支と臨時収支に分けて作るようにしているのは、臨時支出を別にしたほうが一般的な経費の変動が分かりやすいからです。
財産目録に、貸借対照表に、収支計算書と、なかなかたいへんです。
これらは事務所への備付け書類となっていて(法25条2項3号)、所轄庁への提出書類にもなっています(同)。
ただし、貸借対照表については、「作っていれば提出しなさい」ということになっています。
ですから、手が回らないのであれば作らないという選択もあります。
また収支計算書については、①収益事業を行っていない、かつ②年収が8千万円を超えない場合は、作成しないことも可能です。