防犯カメラの設置がプライバシーを侵害すると判断された例
質問
私は庭園が好きで、よくあちこちの寺院へカメラを持って出かけます。先日訪れた寺院の庭園は、著名な作庭家の手によるもので、とても気に入りました。何枚か写真を撮ってきましたので、これを自分のブログに載せたいのですが、問題はないでしょうか。
回答
撮影した庭園の写真をブログに掲載することが著作権の侵害にならないかを考えてみます。
庭園について、それが作庭家の思想・感情が表現されたものと言える場合は、著作物にあたると考えられます。ご質問の場合、具体的には分かりませんが、著名な作庭家の手によるもので、庭園愛好家も気に入ったということですから、およそ著作物にあたるということになろうかと思います(大阪地決平25・9・6等)。
著作権の存続期間は著作者の死後50年とされています(法51条2項)。この時期がまだ来ていなければ、著作権の侵害を検討する必要があります。
撮影した写真はご質問者の著作物ですが、著作物である庭園を撮影した物であれば、その二次著作物ということになります(法27条)。そして庭園の著作者は、その写真を利用するにあたって、ご質問者と同じ権利を持っていることになります(法28条)。
ただ、建築の著作物については、写真撮影をしてブログに掲載する方法であれば、自由に利用することができます(法46条)。それでは庭園は建物の著作物にあたるのでしょうか。
一般的に、建築物は、実用的な用途のために建築されるものであり、美的外観よりも実用が優先され、実用面の要請から改変されることもあり得る物です。しかし、そのような建築物と不可分の一体となっているような場合でない限り(東京地決平15・6・11)、通常、庭園は実用的な用途が美観よりも重視されることはありません。したがって、建築物と一体化しているわけではない通常の庭園は、建築の著作物ではなく、美術の著作物にあたると言えるのではないでしょうか。
しかし美術の著作物でも、一般公衆に開放されている屋外の場所に恒常的に設置されている場合には、建築の著作物と同様に、写真撮影をしてブログに掲載することは自由にできます(法46条)。この点、庭園の具体的な態様は分かりませんが、寺院の庭園ということですので、通常は塀で囲まれ、入口で拝観料などを徴収していると考えられます。そうであれば、一般公衆に開放されている屋外の場所に設置されていると言えず、自由な利用は認められません。
以上からすると、撮影した庭園の写真を無断でブログに掲載することは、庭園の著作権を侵害する可能性があることに留意すべきということになります。
また、上記のほかに、当該寺院が写真撮影を禁止していたような場合は、施設管理権を侵害する不法行為を自認する証拠となることにも注意が必要です。