【宗教法人の管理・運営(6)】 -被包括関係-
第1章 総則
(名称)
第1条 この寺院は、宗教法人法による宗教法人であって、「○○寺」と称する。
《宗教法人の名称》
当然であるが、基本的に他の法人・団体等と識別できるような名称を使用する。
《Q&A》
質問
包括宗教団体「○○宗」から離脱した後も「○○宗○○寺」を名乗ってよいか。
回答
「違法な冒用行為」にあたるかどうか。
違法な冒用行為であるかどうかは、名称の類似性、周知性、使用に至った経緯や使用態様など諸事情を総合考慮して判断される。
宗教法人の宗教活動に不正競争防止法の適用はないが、人格的利益に基づき、名称の違法な冒用行為を差し止めることが可能。
その名称を使わないと宗教活動に支障があることが明らかと言えないのであれば、やめた方が無難。
〔判例〕最判平18年1月20日
天理教が、天理教との被包括関係を解消した天理教豊文教会に対して、『「天理教豊文教会」その他「天理教」を含む名称を使用してはならない』との判決を求めた。
一審東京地裁は、不正競争防止法に基づいて天理教の請求を認めた。
天理教豊文教会が控訴。宗教法人の宗教活動は不正競争防止法にいう「事業」又は「営業」に該当しないとして、一審の判断を覆した。
天理教が上告。上告棄却。
①不正競争防止法の「営業」は,宗教法人の本来的な宗教活動及びこれと密接不可分の関係にある事業を含まない。
②宗教法人は、その名称を他の宗教法人等に冒用されない権利を有し、これを違法に侵害されたときは、加害者に対し侵害行為の差止めを求めることができる、
③違法に侵害するものであるか否かは、
ア)両者の名称の同一性又は類似性だけでなく、
イ)冒用された宗教法人の名称の周知性の有無,程度、双方の名称の識別可能性、
ウ)冒用した宗教法人において当該名称を使用するに至った経緯、その使用態様等の諸事情、を総合考慮して判断されなければならないとした上、
ア)イ)について、「天理教」は周知名称であり、「天理教豊文教会」が類似性を有して「天理教」とまぎらわしいことは明らか、
ウ) について、宗教法人となってから約50年にわたり「天理教豊文分教会」の名称で宗教活動を行ってきた、「天理教豊文宣教所」等の従前の名称と連続性を有 し,かつ,その教義も明らかにする名称を選定しようとすれば,現在の名称と大同小異のものとならざるを得ない、中山みきを教祖と仰ぎ、その教えを記した教典に基づいて宗教活動を行う宗教団体であり、その信奉する教義は,社会一般の認識においては、「天理教」にほかならないと解される、被上告人において、 上告人の名称の周知性を殊更に利用しようとするような不正な目的をうかがわせる事情もない、被上告人がその名称にその教義を示す「天理教」の語を冠したこ とには相当性があり、また、そのような名称の使用ができなくなった場合、被上告人の宗教活動に支障が生ずることは明らかであり、その不利益は重大、「天理教」の語が教義を示すものである以上、教義の普及と拡散に伴い、上告人において「天理教」の語を含む名称を独占することができなくなったとしても、宗教法人の性格上やむを得ない面がある、として上告棄却。