【事業者】設計図と著作権侵害
約款
これまでも、銀行取引や保険契約、携帯電話の契約やアプリケーションの利用規約など、大勢の人を相手に画一的な契約をする場合に約款が用いられ、約款に書かれた条項が契約の内容となっていました。
一般的にこのような約款は小さな文字で、ぎっしり書かれています。
これを最初から最後まで読んだ上で携帯電話の契約をする人は、ほぼいないでしょう。
鉄道の運送約款などは、そのようなものがあることすら知らないで切符を買って電車に乗るのが通常です。
他方、約款を利用することによって大量の契約が画一的に処理でき、携帯電話会社や保険会社がコストを削減して商品やサービスを低価格で提供できるというメリットがあります。
運送約款のすべてに目を通して納得してから切符を買っていたら遅刻しますし駅は大混雑です。
約款を用いて契約することが、現代ではもはや必要不可欠な状況です。
そのため、いちいち細かな内容を認識していなくても、約款が契約の内容になるとして取り扱われてきました。
しかし、そもそもそのように扱われる「約款」とはどんなものを指すのか、どんな内容であれば契約の内容になるとしてよいのか、変更の必要が生じたときどんな変更であれば可能なのか、必ずしも明確ではありませんでした。
そこで2020年4月1日施行の民法改正により、「定型約款」の規定が設けられました。
定型約款
改正民法では、法律が適用される約款を「定型約款」と呼び、定型約款が適用される取引に「定型取引」という名称をつけて、それぞれ定義づけがされました。
「定型約款」にあたるのであれば、改正民法にしたがった取り扱いが可能です。
ですから、取引に使用している書面が「定型約款」にあたるのかどうか、確認する必要があります。
約款が取引の内容とみなされる場合
改正民法では、「定型取引」の合意をしたとき、どのような場合に「定型約款」の個別の条項についても合意したとみなされるのか、規定を設けています。
約款を作っておけば、どんな条項であっても合意したとみなされるわけではありません。
合意しなかったとみなされる条項がどのようなものであるかも定められています。
これらの規定にしたがって、利用規約の適用に同意を得たり、契約画面に表示をすることになります。
約款の内容が相手方の利益を一方的に害するような不当なものでないか、事業者間の取引でも適用がありますので注意しましょう。
約款の開示
約款を準備した者が、その内容を相手方に示さなければならない場合を定め、それを拒んだ場合の効果についても規定されています(第548条の3)。
取引前に約款の開示を不当に拒むと、取引にあたって約款の効力を否定されることになりますので、注意しましょう。
約款の変更
約款を変更した場合について、どのような変更であれば変更後の内容で合意があったとみなされるのか、変更後の約款が効力を生じるための要件についても規定されました(第548条の4)。
従来から「この約款は変更することがあります」と書かれている約款がありますが、それだけでどんな変更でも変更が可能になるわけではありません。
どのような場合に変更が可能となるのかにも注意が必要です。
経過措置
改正前(2020年3月31日以前)にされた契約についても、この改正民法の定型約款の規定が原則的に適用されます。
この点には注意が必要です(附則第33条第1項)。
おわりに
定型約款に関する改正民法の条文がどのように解釈運用されるか、今後の実務・裁判例の集積に注目する必要があるでしょう。