味覚・嗅覚障害の後遺症

田沢剛

田沢剛

弁護士の田沢です。
交通事故等で味覚や嗅覚が失われるような後遺障害を負った場合,将来の逸失利益について,議論があります。ある裁判官の解説によると,被害者が調理師又は主婦であり,味覚・嗅覚の喪失によって労働能力の一部を喪失したと評価できるときには,当該後遺障害による逸失利益を認めることができるなどとされています。調理師又は主婦でない場合には,なかなか認めることは困難であるという趣旨にも読めます。この見解では,あくまでも交通事故に遭った当時の職業との関連性を重視するようですが,将来の職業選択の幅を狭めるという視点については,捨象してしまっているように思われます。将来の逸失利益の算定は,あくまでも将来予測であって,厳密な立証自体が困難であるため,仮に,事故当時は調理師ないし主婦でない場合でも,将来において,「味覚・嗅覚」が重要となる職業に就く可能性が皆無ではなかった場合には,やはり将来の職業選択の幅が狭められたという意味で,逸失利益の損害があったものと扱うべきだと考えます。かつて,男性の脚の脛部分に大きな手術痕が残ってしまい,これを後遺障害として将来の逸失利益の損害賠償を請求した経験がありましたが,加害者側からは,基本的にズボンで隠れている部分であるため,将来の収入に影響することはないと反論をされていましたが,裁判所は,「将来の就労に全く影響しないとは言い切れない。」などとして,逸失利益の損害を認めてくれました。

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田沢剛(弁護士)

新横浜アーバン・クリエイト法律事務所

裁判官時代に民事,刑事を含めて様々な事件を担当しました。紛争処理にあたり,裁判所がどのような点を問題にしているのか,どの部分の証拠が足りないのかなど,事件の見通しを踏まえたアドバイスを心掛けています。

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