自己破産の弁護士費用について

田沢剛

田沢剛

弁護士の田沢です。
法人の場合は,破産しても免責という概念がなく,法人格が清算結了により消滅することになるのですが,自然人の場合は,債務からの解放(免責)を目指すことになりますので,破産手続が始まっただけでは債務からの解放とはならず,破産手続が終わった後に,別途,免責許可決定というものを得なければなりません。
弁護士に申立てを依頼すると,一般的には,申立てのための着手金というものと,免責許可決定が得られた場合の報酬金というのを支払うことになります。
ところが,この免責許可決定が得られた場合の免責報酬金というものを,着手金とともに事前に支払わせようとする弁護士が多いように感じます。
破産管財人は,債権者の共同担保となるべき破産者の財産が,不当にも減少していた場合には,これを回復させる権限を持っています。破産状態であるにもかかわらず,手持ちの財産で特定の債権者にだけ先に返済をしてしまったような場合です。破産管財人は,この弁済行為を否認し,不当利得として取り戻し,総債権者の配当原資にします。
先ほどの免責報酬金は,本来であれば,免責許可決定が得られた場合に支払うことが予定されているものであるにもかかわらず,弁護士がこれを先取りしてしまうということになりますと,不当に財産が減少してしまうことになるのです。破産者としては,破産手続が終わってから支払う必要はないし,弁護士としても,先にもらってしまえば取りっぱぐれることがないから,両者の利害が一致します。しかしながら,債権者の共同担保となるべき財産を不当にも減少させてしまっていることは明らかといえます。
財産を不当に減少させる行為は,後に破産管財人から取り戻される可能性があるだけでなく,免責不許可,あるいは詐欺破産罪という犯罪行為にもなりかねません。
弁護士に破産手続を依頼される個人の方は,弁護士費用がどうなっているのかをよく確認し,免責報酬金の先払いを求められたら,是非とも断って欲しいものです。

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田沢剛
専門家

田沢剛(弁護士)

新横浜アーバン・クリエイト法律事務所

裁判官時代に民事,刑事を含めて様々な事件を担当しました。紛争処理にあたり,裁判所がどのような点を問題にしているのか,どの部分の証拠が足りないのかなど,事件の見通しを踏まえたアドバイスを心掛けています。

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