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コラム
東電OL殺人事件
2011年7月22日
弁護士の田沢です。
この事件は,私が横浜の裁判所に勤務していた時に第1審判決及びその控訴審判決が下された記憶です。刑事事件は,犯人であることが確実であるとの心証を得られなければ,犯罪の立証ができていないということで無罪の判決を下すことが鉄則です。「疑わしきは被告人の利益に」という言葉で表わされるのですが,当時,いずれの判決も読んだ私は,第1審判決が刑事裁判の鉄則をきちんと踏んでいた,刑事裁判らしい,ベテランの刑事裁判官による判断らしい判決だと納得したのですが,それに比べて控訴審判決は,刑事裁判の判決としてはお粗末過ぎる理由で有罪の結論を出していて恐ろしいと感じました。例えば,被告人の供述調書には嘘が多く,信用できないと判断した場合,その供述を証拠として使えないということに過ぎず,その供述内容とは異なる内容の事実を積極的に認定してはならないのです。異なる内容の事実を認定するにもそれを裏付ける証拠が別に存在しなければならないからです。これが証拠裁判主義です。一審判決は,被告人が犯人であることを積極的に認定できるだけの証拠はないと言ったのに対し,控訴審判決は,被告人が犯人であることと矛盾しないなどと,極めて消極的な認定なのです。こんなレベルで有罪のしかも無期懲役の判断を下すなんて,ちょっとあり得ないんですよね。
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