相続法改正で争続は予防・解消できるか?! (2) 葬儀費用の「仮払い制度」こそ新たな相続トラブルの原因に⁈
およそ40年ぶりに、民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律(以下、改正相続法という)が成立しました。今回の法改正の目的は、社会の高齢化の進展に伴う相続開始時における高齢化した配偶者の生活の保護を図るとともに、遺言の利用を広く促進することで近年急増している相続をめぐる紛争を防止することにあると言えるでしょう。そこで、8年前に開業して以来、神奈川・平塚を拠点に相続手続実務に取り組んできた法律専門職の立場から、改正相続法は私たちの暮らしにどのような影響を及ぼすのか、さらには本当に相続トラブルを未然に防止することができるのかについて、6回シリーズで徹底分析していきたいと思います。
まず、相続法改正の一番の目玉ともいえる「自筆証書遺言の方式の緩和と保険制度の新設」について取り上げてみます。これまでは、(1)自筆証書遺言を作成するにあたっては、日付および署名全文を自書し、押印をしなければ無効と扱われてきましたが、その財産目録の部分に関しては自書を必要としない、つまりパソコン等でも作成が可能となるため高齢者でも遺言がしやすくなったこと、(2)自筆証書遺言を作成してもこれを保管する公的な機関がなく、遺言者の自宅等で保管がなされてきましたが、遺言者の保管申請に応じて公的機関である法務局での遺言書を保管する制度を新設することとなり、紛失や相続人による遺言書の隠匿や破棄、改ざんを防止するとともに、遺言者の死後に相続人が遺言書の存在を把握しやすくなることが期待されたようです。
しかしながら、日々一般市民の相続手続きに関与している法律専門職の目には、今回の相続法改正、特に遺言書の保管制度の新設では、近ごろ急増している相続トラブルを未然に防ぐ効果はほとんどないのではないかと感じます。なぜならば、(1)そもそも自筆証書遺言で複雑な遺言書を作成したとしても、相続手続きを速やかに円満に行う効果はほとんどないため、全文自書の要件を緩和しても高齢者が遺言をしやすくなると感じることはなく、これをもって遺言作成の促進を図ることもほとんど期待できないこと、(2)実は、相続手続きを迅速に行うには有効か無効かではなくその内容面が大切になってくるにもかかわらず、仮に法務局が有効・無効をチェックした後に自筆証書遺言を預かるとしても、内容面での指導・助言もない形式的審査しか経ていない遺言書では相続手続きの現場ではほとんど役に立つとは思えず、近年急増している相続トラブルを未然に防ぐことは到底できないと考えるからです。やはり、法制審議会のお偉い先生方には市井の人々がどのような相続トラブルでこまっているかを想像することはできず、単なる机上の空論でしかないことを痛感させられました。
とはいっても、悲観ばかりはしていられません。私たちは今回の法改正をどう捉えたらいいのでしょうか。それは、この法改正に過度に期待することなく、ご自分の事情やご家庭の経緯をもう一度しっかりと振り返ってみることから始めてください。公正証書で遺言を作成すると、あなたの想いを伝える付言(ふげん)を設けることができます。相続手続きを速やかに円満に行うためにも、すべての相続人に配慮を見せる内容とした遺言書を公正証書で作成し、その遺言書をあなたの想いを忠実に実現できる良心的な代理人(遺言執行者)に預けることを強くお勧めします。弊事務所にお越しいただいた方には、私自身が42歳の時に書いた遺言書を必ずお見せしながら、どうすればあなたの想いや配慮が込められた遺言書ができるかを一緒に考えていくことを実践しています。
代表 加藤俊光が42歳の時に書いた想いを伝える遺言書を見てみたい! いますぐ まちなかステーションに相談する
だからこそ、これからも私は、遺言者の想いと家族の願いが理解できる法律専門職として、ひとりでも多くの方に『法改正に頼るのではない、自分の想いを伝える遺言書』のご提案をし続けていきます。