遺留分ぐらいはもらわないと?! 残念ですがそれは遺留分の問題ではありませんよ!
今月も、11月23日(日)に無事に無料相談会を開催いたしました。11月とは思えないような少し汗ばむくらいの日差しを感じた祝日にもかかわらず、ご予約いただいた皆様においでいただいたことにお礼申し上げます。
50代後半の男性が奥様とともにご相談においでになりました。相談室に入られると何からお話をしていいか分からずに途方に暮れている様子が見てとれました。
そこで、まずは気がかりなことをひとつずつゆっくりとお話しいただけるような雰囲気作りから始めることにしたところ、だんだんと重い口を開き始めたのでした。詳しくお話を伺うと、今年の8月にお母様が亡くなり、49日も済んでようやく心の落ち着きを取り戻した矢先の先月のある日のこと、お姉さまが突然相談者の自宅を訪ねてこられたそうです。いくつかの書類を弟である相談者に見せると、『相続手続はすべて姉である私がやるから任せろ。だから、これらの書類にハンコを押してすぐに印鑑証明書を送るように』と迫られたそうです。小さいころからしっかり者の姉には頭が上がらなかったらしく、60歳も間近だというのに姉に言われるままに姉が持参してきた書類に実印を押印してしまったそうです。しかも、数日前には姉の言うとおりに印鑑証明書まで送ってあげたとのことでした。しかし、このまま姉の言うとおりにしていいものかと不安になったらしく、たまたま弊事務所で発行しているニュースレター『まちなか通信』をご覧になってご相談においでになったとのことでした。
そこで、まず私は『どんな書類に印鑑を押印したのですか』と尋ねてみました。すると、ご本人からは『よくわからない』とのお返事が返ってきました。では、『お姉さんが持ってこられた書類は、何通でしたか』とお聞きしても『3~4通、いやもう少しあったかもしれない』と何とも心もとない回答しか返ってきません。しかも、もっと悪いことにこの方は極めて危機的な状況であるにもかかわらず、根っからののんびりした性格なのか、『とりあえず姉には手続を止めておいてくれと言ってあります』と答えるお人好しぶりで、いまだにあちこちの無料相談を渡り歩いていることが会話の中から読み取れる有様でした。
ここまで聞いて、私は一方でずいぶん身勝手な方もいれば、また他方ではずいぶんとのんびりと物事を構える方もいるものだ、これがきょうだいとは皮肉なものだと感じずにはいられませんでした。
なぜなら、一般的に言って相続手続に必要な書類に相続人からの署名・押印があれば、相続人のひとりが相続手続をどんどん進めてしまうことも可能となってしまいます。 金融機関や法務局なども適法な書類等が揃っていれば、いちいち各相続人に意思の確認を求めたりしません。当然ですが、そのまま手続に応じてしまうのが普通です。
だからこそ、実印の押印には細心の注意を払わなければならないのです。よく、『保証人にはなるな』といわれますが、あれは要するに連帯保証人として実印を押すときには、自分がすべてその債務を支払う覚悟を持てという意味に使われていると思いますが、実は遺産分割協議の場面でも全く同じことが言えるのです。遺産分割協議書に実印を押印した以上は、書類に書かれていることにすべて同意したものとして扱われます。あとで、『そんなことだとは知らなかった』、あるいは『そういう意味だとは思わなかった』などと言ってもまず通らないと思ったほうがいいでしょう。だからこそ、遺産分割協議書に署名・押印する際には特別の注意が必要なのです。
遺産分割協議書に押印を迫られたら?!すぐにハンコを押さずに まちなかステーションに相談する
そこで、私は『まず、今回の相続をあなたがどのように捉えるかをしっかりと考えてみてください。その上で、別に遺産などいらないから姉がほしいのであれば好きなようにすればよいというのであればこのままにしておいてもいいのかもしれません。しかし、自分にもそれなりに権利はあるはずだ。きちんと話し合いをしたうえで遺産分けをしたいというのであれば、直ちにお姉さんに遺産分割協議を申し入れたほうがいいでしょう。すでに、相続関係書類に署名・押印をしていることからごきょうだいで冷静に話し合いをするのはかなり困難なことだと思います。私どもであれば、公平・客観的な立場からお姉さんに話し合いの場を作るように申し入れをすることができます』とお答えして面談を終了しました。
相続まちなかステーションを開設して5年目に入りましたが、最近は本当に自分本位な考え方をしてしまう相続人が増えたと感じております。そして、なかにはこのような自分本位な考え方の言いなりになってしまう困った専門家も見かけることがあります。相続問題を当事者の話し合いで速やかに円満に解決するためには、すべての相続人に対してどのような相続財産がどれくらいあるのかを包み隠さずすべて明らかにし、かつ全員が少しずつ不満を引き受けあうという姿勢が必要です。そのためには、相続人の間に入る専門家が誰かひとりの味方になってしまうのではなく、相続人全員に対して等間隔で公平に接しなければなりません。だからこそ、相続まちなかステーションの加藤俊光は、他の行政書士や税理士のように様々な業務を一切受任せず、相続業務だけに取り組んでおります。相続相談は相談先を間違えると、解決は遠のき人間関係は決定的に壊れてしまいます。くれぐれも相談先を間違えることのないようにしていただきたいと感じました。
これからも私は、神奈川・平塚地区唯一の相続・遺言・高齢者支援だけに特化した本当の専門家として、ひとりでも多くの方に相続を争続にさせないための『当事者の話し合いで速やかに円満に解決できる遺産分割協議書』のご提案をし続けていきます。