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調停や訴訟をしても円満解決はできないものですよ! 話し合いで解決してみませんか?

加藤俊光

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テーマ:円満解決の極意【相続相談の現場から】

 新年度がスタートして2週間が過ぎ、桜の花もそろそろ見納めとなった先日に、かなり深刻な状況の60代の男性が弊事務所にご相談においでになりました。

 その方は、何と開口一番いきなり『先生は遺産分割協議に勝てますか』とおっしゃるではありませんか。

 詳しくお話を伺うと、今から10年ほど前にお父様が亡くなられてお母様と5人の兄弟姉妹が相続人となったらしいのですが、長男さんと三男であるご相談者が遺産分割協議をめぐって激しく対立してしまったそうです。時間を経るごとに対立はどんどん深まり、お母様を含めた6人の相続人はいわゆる長男グループと三男グループに二分してしまい、結局当事者の話し合いによる解決を諦めて裁判所による調停・訴訟による解決の道をとられたそうです。そして、今年の初めに今度はお母様が亡くなられたそうで、相談者の男性は『親父の相続のときは兄貴にしてやられたが、今回こそは負けるわけにはいかない』ということで、私のところに相談においでになったようでした。

 相続相談業務に長く携わっていると、このような気の毒な事例に遭遇することが度々あるのが事実です。

 私は、裁判所による調停・訴訟という手段では、相続問題を心の底から円満に解決することは絶対にできないと思っています。

 なぜならば、裁判所に判断を委ねたとしてもおそらく自分の言い分や考えがすべて認められるのは極めて稀であり、たいていは訴えた側も訴えられた側もどちらにもそれなりに不満が残る結果になるに決まっているからです。

 しかも、訴訟による解決という道を選んで、その内容が確定してしまった以上は、当事者は納得出来ようが出来まいが裁判所の判断に絶対に従わなくてはならないのです。裁判所に判断を求めたために、時間的にも金銭的にも精神的にも多大な負担を強いられて、結果的には思ったほど自分の主張が認められるわけではない、実は裁判はそのようにして終わるケースが大半なのです。これでは、当事者にとってみれば円満解決を心から実感できるはずなどありません。むしろ、当事者の心に残るのはわだかまりや憎しみの連鎖ではないでしょうか。

 だからこそ、私は誰が何を相続するかの話し合い、いわゆる遺産分割協議においては『相続人全員が少しずつ不満を引き受ける場と考えてはいかがでしょうか』とお話ししています。相続人同士が冷静になって負担と不満を分かち合うことができれば、人間関係を壊すことなく速やかに円満に解決することができるはずなのです。遺産分割協議は決して勝つか負けるかの戦いなどではない、そんな考え方を持ち込んだところで誰も幸せになるわけではない、むしろ永遠に憎しみが続く不幸な結果になると私は確信しています。

 そこで、私は以上のような自分自身の考え方をお話しして、『私の方針に同意していただけるのであればお引き受けいたします。少し時間をおきますから、お帰りになって冷静に考えてみてはどうですか』とお伝えして面談を終了させていただきました。

 もしも、10年前にお父様が亡くなられたときに、私にご相談していただければきっと円満に解決できただろうに、と考えるととても気の毒でなりませんでした。

 だからこそ、私はこれからも『遺産分割協議は相続人全員が少しずつ不満を引き受ける場としなければならない』という方針を決して見失うことなく、相続人全員に理解と譲歩を求め続けていくつもりです。

 ひとりでも多くの方に、相続人同士がいがみ合ったあげく憎しみと絶縁状態しか残らない裁判所による解決ではなく、『多少不満は残るけれどもあの人の助言なら受け入れるとするか』と思ってもらえて、当事者の話し合いによる円満な解決をご提案し続けていきます。
 

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加藤俊光
専門家

加藤俊光(行政書士)

相続まちなかステーション/加藤法務行政書士事務所

単身者・子どものいない夫婦世帯が人生の最終章で直面する介護や医療、金銭管理、死後の事務手続、お墓、ペットなどの切実な問題に寄り添い解決。地元の在宅医療・介護の専門職と密接な連携が取れる体制にも自信あり

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