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加藤俊光プロは朝日新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

『まだ早い!?』 遺言書は何歳になったら書けばいいのでしょうか?

加藤俊光

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テーマ:円満解決の極意【相続相談の現場から】

 先日、ある男性が私どもの事務所にご相談においでになりました。その方のご相談は、『自分が亡くなった後は、自分が所有する土地・建物と預金を全て妻に相続させたいがどうしたらよいか』という内容のものでした。

 お話を伺った限りでは、男性の推定相続人は妻と娘さんがおひとりの合わせて2名であり、相続財産の内容からしてもまず相続税は課税されないであろうと判断しました。

 そこで私は、①遺言がなければ法定相続が原則となること、②娘さんには遺言によっても奪うことができない遺留分というものがあることを説明したうえで、娘さんの遺留分に配慮した内容の遺言を作成するとともに、遺言の中で遺言執行者を指定して相続開始まで遺言書の正本を確実に専門家に預託することをご提案しました。

 すると、相談者の男性は『遺言を書くなんてまだ早いな!』とおっしゃいました。正直なところ私は言葉に詰まってしまいました・・・・。なぜなら、相談者の男性の年齢は81歳なのです。

 確かに、弊事務所まで市内から自転車でおいでになったことや、お話をしているときのやり取り等もはっきりとしており、とても81歳には見えないお元気な方だったのは事実です。しかし、失礼を承知で申し上げれば、一般的に高齢者と言われる75歳以上の方はいくらお元気そうに見える場合でも想定外の急変という事態も考えられ、いつ何が起きても不思議ではありません。

 思うに、遺言はがん保険などと同じように、起こるかどうか不確実なリスクに備えるという側面を持っています。あまり早い時期に遺言を書いてももったいないから、亡くなる間際に書きたいというお気持ちも決して理解できなくはないのですが、そもそも人間がいつ亡くなるかは誰にもわかりません。また、病院に入院してから書くといってもかなり困難なことが多いですし、ましてや認知症になってしまってからでは書くことはできないのです。

 私は、遺言書は起こるかどうか分からないリスクに備えるためにも、なるべく早めに書くことをお勧めしています。もちろん個々の事情によりますから一概に何歳になったらと言い切ることはできませんが、例えば①不動産を所有したら、②還暦を迎えたら、③定年を迎えたら、④お子さんが全員独立されたら、遺言を書こうか検討してみてはいかがでしょうか。そして、遺言書を書いた後も、その後の事情が大きく変わった時はもちろん、そうでなくても5年ないし10年程度経過した際には、ご自身の環境を見つめなおして遺言書の内容も見直していく必要があると思っています。

 何度も遺言書を書き直すなんてもったいないと考えることも理解できなくはありませんが、無用な相続トラブルを防止するためにしっかりとした遺言書を書くという道を選ぶか、それとも相続人の皆さんから『遺言書を書いておいてくれたらなあ』と思われるような不毛な争いをもたらす恐れのある道を選ぶかは、最終的にはご本人がお決めになることです。

 私はできることなら日本全国から、そうでなくともせめて私の周囲から、相続のリスクを知らなかったために『争続』となってしまう事態を撲滅していきたいと考えています。相続というものに対して正しい知識を身に付けて、起こりうるリスクに対して適切な措置を講じていただきたいのです。

 そのためにも、私はこれからもひとりでも多くの方に『争わないための遺言書』をご提案し続けていきます。

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加藤俊光
専門家

加藤俊光(行政書士)

相続まちなかステーション/加藤法務行政書士事務所

単身者・子どものいない夫婦世帯が人生の最終章で直面する介護や医療、金銭管理、死後の事務手続、お墓、ペットなどの切実な問題に寄り添い解決。地元の在宅医療・介護の専門職と密接な連携が取れる体制にも自信あり

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