自分たちで解決できないのなら、もはや公平な第三者に委ねるしかないのではありませんか?
ご縁があって、先週の金曜日に神奈川は『茅ヶ崎の高齢社会をよくする一万人委員会』の定例学習会に参加させていただきました。こちらの団体は、13年ほど前に地域の福祉活動を行っている方々が中心になって立ち上げられ、これまで福祉に関する講演会・シンポジウム・介護保険制度の勉強会・施設見学会など様々な活動を積極的に続けておられるそうです。
今回は、『リバースモーゲージ』がテーマでした。はじめに、実際に利用されているこちらの会員の方が、リバースモーゲージを利用しようと考えた動機や実際に使ってみての使い勝手や正直な感想をお話ししてくださいました。そのあとで、東京スター銀行のご担当者お二人がいらっしゃって概要説明や質疑応答も行われました。こちらの団体は、身近な問題に対して高い意識をお持ちの方が多く、質疑応答でも活発に良い質問をされている方が大勢いました。実は、私はこちらの団体の11月の定例学習会で相続・遺言をテーマに講師を務めさせていただくことになっているのですが、会員の皆様の意識の高さを目の当たりにして、身が引き締まると同時になお一層勉強していかなければならないと思い知らされた次第です。
そんなリバースモーゲージですが、ひとことで言ってしまえば『住宅担保型老後資金ローン』と訳されています。長寿社会の中で、家はあるが生活費が不足するという方は今後ますます増えることでしょう。『生活費や家の修理をするお金はほしいが今のこの家は手放したくない』と考えたときに導き出された答えが『自分の家を担保にして生活に必要なお金を借り、自分が亡くなった時には借入金を家で精算する』という制度だったのです。
確かに、今後増え続けるであろう単身世帯の方や、お子さんがいらっしゃる方でもそれぞれのお子さんが別のところに不動産を手に入れており親が亡くなった後にお子さんが帰ってくる予定のない『いわゆる跡継ぎのいらっしゃらないご夫婦』なども検討してみる余地があると捉えています。
最近では、生命保険でさえも遺族に死亡保険金を残すためのものという従来の考え方から、被保険者の治療や入院など積極的に生きるために使うものという考え方に変化してきています。同じように、自らの不動産も、自らが亡くなった後に相続人に残すものという考え方から、自分自身が充実した人生を送るために積極的に使っていくものと考える人がいることも理解できますし、万人に勧められるかどうかは別としても『充実人生』のためのひとつの選択肢としてはとても有効なものだと理解しました。
もっとも、このリバースモーゲージもローンであることは違いないわけですから、ご自身が亡くなった後は借入金を精算する必要が出てきます。担保不動産で代物弁済するか、あるいは相続人が現金で弁済して不動産を取り戻すのか、選択を迫られる場面が出てきます。しかも、その選択は原則として被相続人が亡くなった時から6か月以内に意思決定をしなければならないそうです。私の経験では、相続人による遺産分割協議は年々長期化する一方であり、被相続人が亡くなってから1年以上かかる事例も決して珍しくありません。相続人に予想外の混乱や不毛な紛争を招かないためにも、リバースモーゲージを利用される方は、きちんとした遺言を残すことも考えていただきたいと強く感じました。
これからも、ひとりでも多くの方に『争わないための遺言書』をご提案し続けていきます。